[KATARIBE 30057] [HA06N] 小説『白郎鬼 〜一章』

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Date: Sun, 13 Aug 2006 22:56:50 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30057] [HA06N] 小説『白郎鬼 〜一章』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年08月13日:22時56分50秒
Sub:[HA06N]小説『白郎鬼 〜一章』:
From:久志


 久志です。
自己キャラ固め話続き。

 もしこの話に参加したいなあという人がいたら久志まで。
みこちは借りる予定です、ええ。

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小説『白郎鬼 〜一章』
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登場キャラクター 
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 謎の鬼 :白髪の謎の鬼。

発端
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 生ぬるい風が吹いていた。
 大通りからだいぶ離れた住宅街と繁華街の合間の小道。爽やかさとは縁遠い
湿気をたっぷりと含んだ風が路地を舐めるように吹いて、繁華街の残り香のよ
うな喧騒が遠くに聞こえる。
 風になぶられながら、男は少々おぼつかない足取りで道を歩いていた。
 グレーの少しよれたスーツを着込み、緩んだネクタイをだらしなくたらして、
片手に持った鞄を時折落としそうになりながら、時折アルコールをたっぷり含
んだ息を吐いた。
 男は期日の押し迫った仕事がある身だが、あまりにも厳しいスケジュール続
きではへばってしまうと、息抜きとウサ晴らしと兼ねて同僚たちとしこたま飲
んだ帰り道だった。通りは街灯は並んでいるものの、道は薄暗い。

 男が歩く先、道の中央にふと黒い影がうずくまっていた。丁度男の立つ位置
にある街灯の明かりに隠れてその姿はよく見えない。
「なんだ?」
 近寄って見ると、うずくまる黒い影の正体は、頭から全身をすっぽりと体を
マントのようなもので覆った小柄な人間だった。よく見るとその足元にももう
一つ、路地に寝転がってるように見える人の姿が見える。丁度倒れてる人の側
に小柄な人間がしゃがみこんでいるといった様子だった。
 男は一瞬驚いたが、大方自分と同じく酔っ払って寝転がっているのだろうと
判断し、そのまま近づいていった。

 男が五メートルほど近くに来たとき、しゃがんでいたマント姿の小柄な影が
振り向いた。目深に被ったフードのせいで顔はよく見えないが、雰囲気と体格
からそれが若い女であることはわかった。だが頭を覆った布の端からは不似合
いな絹糸のような白い髪が覗いていた。その顔の下半分は不自然なほどに青白
い肌に唇だけ鮮やかな紅色に染まっていた。
 女は目の前に立つ男を見上げ、口元を吊り上げた。
 紅に染まった口元から一筋、顎を伝って落ちる滴。ピンク色の舌が紅い滴を
絡めとるように動く。
 はっと男が息を飲んだ。
 女の足元に寝ている人影。夜の薄暗がりの中、倒れていたのは紺のスーツを
着たおそらく男だった。いや、正しくは人のようなものだった。口を大きく開
けた顔は見る影もなく目が落ち窪み、骨に皮が張りき、全く人としての原型を
留めていなかった。
 ゆらりと女が立ち上がり、フードを脱いで笑った。
 零れ落ちるように白銀の長い髪が広がり、大理石を削りだしたような無機質
な白い肌が街灯の明かりで淡く光っている。
 その額には真っ直ぐに伸びた象牙色の角が起立し、夜目に光る深紫の瞳が男
を捕らえていた。紅に染まった口元を伝う紅い滴。
「ひっ」
 男の膝が崩れるのと、女が地面を蹴って跳ねるのは同時だった。

 そのまま闇夜に溶けるように、女の姿は消えていた。

時系列 
------ 
 2006年08月らしい
解説 
----
 謎の鬼、吹利にあらわる。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。




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