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Date: Wed, 9 Aug 2006 00:02:21 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30050] [HA06N] 小説『鼻歌の正体』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <20060809000221.3380ef2b.hukira@blue.ocn.ne.jp>
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Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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ふきらです。
[Role] rg[hukirdead]HA06event: 鼻歌を歌っている宗教関係者が道に迷った
ですわ☆
というお話。
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小説『鼻歌の正体』
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登場人物
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火川猛芳（ひかわ・たけよし）：http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
帆川神社の宮司。
本編
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街路樹から蝉の鳴き声が聞こえていた。日光は痛いほどに眩しい。
さすがにこんなに暑い日中に外を出歩く人などそうそういるわけでもなく、
商店街は閑散としていた。
猛芳はそんな中を歩いていた。
「ふーんーんーん」
時折鼻歌を口ずさんでは、難しい表情を浮かべ、少し首を捻る。
普通、鼻歌というのは機嫌の良いときに出てくるものである。ではなぜ彼は
間違っても機嫌の良いような表情を浮かべていないのか。それは、数分前の出
来事に原因がある。
商店街へと続く細い路地を彼は歩いていた。右側は木の板でできた垣、左側
には白壁が並行して伸びている。垣の向こうは普通の家、白壁の向こうは小さ
な寺がある。
白壁の途中には通用門があり、そこから坊さんが出てきた。袈裟装束ではな
く、作務衣姿で、手拭いで海賊かぶりをしている。
その彼とすれ違う際に、猛芳の耳に聞こえてきたのが先ほどから鼻歌で口ず
さんでいるフレーズであった。
人の鼻歌など特に気にしないものなのだが、その彼が呟いているフレーズは
どこかで聴いたことがあるような節だった。だが、何という歌だったのかはす
ぐに出てこない。
そんなわけで、先ほどからずっと猛芳はそれが何だったのかを思い出そうと
しているのであった。
「ふーんーんーんー」
だが、その次が出てこない。出てきそうで出てこない。非常にもやもやとし
たものを抱え込んだまま、猛芳は歩いていく。
この炎天下の中である。ただでさえ暑さのせいで頭がぼぉとしているのに、
考え事をしているせいで、更に頭がぼんやりとしてくる。
少し俯きがちで、ブツブツ呟きながら歩いている老人。端から見たら、なん
て言われるか分かったものではない。
「あ」
急に足を止め、顔を上げる。頭の中の靄がさぁと消えていくイメージ。
思い出したその歌の名は。
「般若心経かい……」
思い出すまでにかかった時間と、思い出した結果のくだらなさを考えてがっ
くりと肩を落とす。
「というか、般若心経を鼻歌で歌うなよ」
やるせない怒りとともに顔を上げる。
「……おや？」
目の前に広がっている光景は自分の想像とは全くかけ離れたものであった。
そのギャップに戸惑う猛芳。
平たく言えば、
「この年にして迷子、か？」
いやいや落ち着け、と彼は自分に言い聞かせ、周囲を見回す。
電信柱が目に付いた。それには住所が書いてあるはず。猛芳はことさらゆっ
くりと近づき、いかにもさりげないようにと心がけながら電信柱を見上げた。
「何じゃ、そんなに離れておらんではないか」
やれやれ、とばかりに溜め息をついて再び辺りを見回す。あらためて見ると
一度は見たことのあるような気がする景色。
「実にやれやれじゃわい」
汗の浮かんだ鼻の頭を人差し指で掻いて、猛芳はもう一度盛大に溜め息をつ
いた。
時系列と舞台
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2006年８月。路上。
解説
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お爺ちゃーん、しっかりー
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