[KATARIBE 30033] [HA06N] 小説 『普通で無い事、その重み』

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Date: Wed, 26 Jul 2006 00:51:01 +0900
From: asakura <guilsn@boat.zero.ad.jp>
Subject: [KATARIBE 30033] [HA06N] 小説 『普通で無い事、その重み』
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小説『普通で無い事、その重み』
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登場人物
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 秋風 秦弥(あきかぜ・しんや):http://kataribe.com/HA/06/C/0496/
   吹利学校高等部普通科3年、SS部初代部長。エアガンが趣味な少年。
 
 中村 蓉子(なかむら・ようこ):http://kataribe.com/HA/06/C/0509/
   吹利学校高等部の普通科2年。秦弥の彼女、微妙なお年頃の女子高生


学校帰り
--------
 
「秦弥さん、どうかしましたか? 」
秦弥はその質問には答えず、質問を返した。
「蓉子、最近幽霊とか妖怪とかなんかそういったものが見えたことはある? 」
「え……幽霊……ですか? 」
*以下見たという想定で
「……はい、何度か見たことはあります」
答える蓉子は少しおびえているように見えた、助けてあげられなかった事を少
し悔やむ。
「そうか……やっぱりか、じゃあやっぱり渡しておいたほうがいいのかな……
」
「え? やっぱりって……」
「たとえば……死にかけると霊感がよくなったりとかするように、そういうも
のに近づくと普通の人でもやっぱりある程度その世界が見えてしまうものなん
だよ。」
「でも、私は死にそうになったりとかしたことはありませんけど」
不思議そうな顔で言う蓉子、まさか僕が原因などとは考えもしないんだろう、
うれしいところではあるが……言わなきゃだめだよな、うん。
「蓉子をこっちの世界引き込んでるのはきっと僕だよ、ほら、これでも一応魔
術師だしね」
そういわれた蓉子は、一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔になった、多分僕が落
ち込んでるの原因に気づいたからだろう。
「秦弥さん……自分を貶めては駄目です」
背伸びをして頭をなでてくれる、うれしいがさすがに学校帰りは恥ずかしい。
「うん、分かってるよ……それで、蓉子……僕と離れる気は無い? 」
受け入れられたら、両方が傷つくかもしれないと知って、あえてこの質問をす
る。
「え……」
「今なら、まだ幽霊を見る程度で済むかもしれない……もしかしたらこれ以上
になる可能性も無きにしも非ずなんだけど、僕と一緒に居たら間違いなくこれ
以上にいろいろなものが見えるようになる」
「嫌ですっ! 」
「……っ!? 」
蓉子にしては珍しい大声に体がこわばる。
大声で動けない秦弥に蓉子が抱きついてきた。
「秦弥さんと離れるなんて嫌です……そんな事を言うなら最初から告白なんて
しないでください……」
「ごめん」
うれしいけれど、やっぱりつらい。自分が居る世界はあんまり良い所ではない
ことは、魔術師を夢見た秦弥にとってよく分かっている事実だ。力を持ってい
ても振るう機会なんて数少ない、しかも命に関わる事だったりすることが多い
。きっと、それが代償なのだろう、秦弥はそう思っている。
「わかった、じゃあこれを渡しておく本当は渡さずにすんだほうがよかったん
だけど、そうも言ってられないし」
そういって、魔導銃を一丁蓉子に渡す。
「これは……銃……ですか? 」
「そう、それもただの銃ではなくて魔導銃。魔力を弾丸として打ち出す幽霊と
か妖怪に向けて使われるもの」
「……っ」
つまり、暗にそういうものを見たら撃てと思っているのかもしれないが、好都
合だ。
「僕も常に蓉子のそばに居るわけじゃなから、何かあったらそれで自分を守っ
て。」
「……絶対に撃たなくちゃ駄目ですか? 」
「僕は、蓉子が霊に騙されて体をのっとられる姿は見たくないよ」
撃たなくていいとは言えない、蓉子はスポーツとしての戦いには慣れているの
かもしれないが、そうでない戦いには慣れているとも思えないから。だから、
嘘をつかずに行動を制限しようとする。
「……わかりました」
そう言って受け取る。多分、僕の言いたい事は伝わっただろう。それでも、き
っといざと言うときにはきちんと対処してしまうんじゃないかな、と思ってし
まうのはちょっと彼女贔屓しすぎているだろうか。
「大丈夫っ僕が一緒に居るときはちゃんと守るから。それで今度の日曜日だけ
れど……」
そう、心配だったら一緒に居ればいいのだ。
一緒に居れば何とかする。不意打ちだろうが、なんだろうが守る。それがこっ
ちの世界に引き込んでしまった責任だ。
だけど、辛い顔をしてはいけない蓉子はよく見ているからすぐにばれてしまう
。
元気を出そう、顔を上げよう、笑顔を見せよう、自分にはもったいないほどの
女の子が彼女になってくれたんだ。
不幸にさせたら殺されるぞ、いろいろなところから。
……ほんとにありそうだ、気をつけよう。



時系列
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2006年7月


解説
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 普通で無い物、それに近づく重みはまるで銃の様。

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