[KATARIBE 30023] [HA06N] 小説『風春祭のお知らせ』

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Date: Tue, 18 Jul 2006 23:07:30 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30023] [HA06N] 小説『風春祭のお知らせ』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年07月18日:23時07分18秒
Sub:[HA06N]小説『風春祭のお知らせ』:
From:久志


 久志です。
ちまちま風春祭の話も書きたいなあと。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『風春祭のお知らせ』
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登場キャラクター 
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 本宮和久(もとみや・かずひさ)
     :吹利県警生活安全課巡査。生真面目さん。あだ名は豆柴。
 如月尊(きさらぎ・みこと)
     :体は女子高生、心は年上お姉さんな人。
 波佐間光孝(はざま・みつたか)
     :吹利県警生活安全課巡査。和久の相棒。
 奈良井・トレース・知恵(ならい・−・ちえ) 
     :吹利学校高等部二年。FLOWER SHOP Mikoに寄宿中。
 中村蓉子(なかむら・ようこ)
     :知恵のクラスメイトの女の子。父親は県警刑事部マル暴中村。

宣伝です
--------

 三月も終わりが近づいて、めっきり辺りが春めいてきた日のこと。
 お昼も過ぎた時間、FLOWER SHOP Mikoにて。如月尊は店先の掃除を終えて、
ホウキとちりとりを片付けて小さく伸びをした。
「んーいいお天気」
 先週までは時折肌寒さを感じた日も、流石に暖まってきている。
「さって、午後も頑張ろうっと」
 ぱん、と頬を軽く叩いて店内に置かれた花をまとめ始めたとき。

「すいません、尊さん。お邪魔します」
 入り口から少し遠慮がちな聞きなれた声が聞こえる。
 すぐさま顔をあげて跳ね上がるように体を起こしてぱたぱたと駆けていく。
「和久くんっ、いらっしゃいっ」
「こんにちは、すいませんお仕事中に……」
 店の前、勢いよく目前に飛び出してきた尊の姿を見て一瞬焦ったように頬を
赤らめたのは吹利県警生活案全部に勤務する本宮和久だった。仕事の途中なの
か警察官の制服姿のままである。
「あれ、和久くんお仕事中?」
「はい、あの……すみません、もう少し距離を」
「え?」
 こほん、という咳払いに尊が気づいて横を見ると、同じく制服姿の波佐間が
少し困ったように視線を左右にめぐらせている。
「あ、ご、ごめんなさいっ」
 慌てて和久から離れてぴょんと下がると真っ赤になって束ねた髪をいじる。
「あの、何か御用ですか?」
「は、はい、実は……」
 尊に負けず劣らず真っ赤な顔になりながら、手にしたポスターを一枚尊に差
し出した。

「風春祭?」
「はい、県警主催の市民交流イベントなんです」
「わあ、色んな企画があるだね。楽しそう」
「ええ、それで吹利商店街のお店に宣伝のポスターを配ってるんです」
「ありがとう、うちでも貼らせてもらいますね」
「尊さんもよかったら参加してください、有志のバザーもありますから」
「……風春祭、かあ」
「尊さん?」
「ああ、いえ、こっちの話です」
「そう、ですか」
 この時、くすくすといたずらっ子のように笑う尊がポスターの何処を見てい
たか、和久は気づかなかった。

参加しちゃえ
------------

 和久達が帰った後、店の壁にぺたりと風春祭のポスターを貼って楽しげに見
つめる尊。
「うふふふふ」
「お姉ちゃん……どうしたんです?」
 ポスターを見上げながら楽しそうに笑う尊を少し遠巻きにして不審げに見つ
める夾。
「んふふ、内緒」
 見上げたポスターに書かれた文字。

 吹利県警主催、春の市民交流イベント『風春祭』二日目イベント。
 魂鎮めの意味も込めた、奉納武道大会。
 県警有志及び、事前申し込みによる一般参加者による一般参加も随時受付中。

「ふっふっふ、ここは一つ挑戦しちゃおっかな〜」
「……お姉ちゃん、なんだかあやしいです」
 不敵な笑みを浮かべつつ、わきわきと構える尊の姿を見て、不安を隠せない
夾だった。


 一方その頃。
「知恵さん、後でもう一度物理のノート見せて貰ってもいいですか?」
「はい、では一旦お店に寄っていかれますか」
「あ、いいんですか?」
 授業を終えてた蓉子と知恵は連れ立ってFLOWER SHOP Mikoへと向かっていた。


「うふふ、総合格闘技ルールかあ、ちょっとやる気湧いてきたなぁ」
 商品の花を手入れしつつも、時折試合をイメージしながら鋭い抜き手を放っ
たりしている。一歩間違えるとあやしい人である。
「やっぱりお姉ちゃんさっきから変です……」
 罪もない子を怯えさせてはいけません。

「ただいま戻りました」
「あの、尊さんお邪魔します…………って」
 タイミングよく、というかなんというか。丁度抜き手を構えた所にひょっこ
りと顔を出す二人。
「あ」
「どうしました、尊さん?」
「……あの、一体」
「あ、えーっとごめんなさい、ちょっとぼんやりしちゃってて、いらっしゃい
蓉子ちゃん」
 ぱたぱたと手を振りながら必死でごまかす。
「お姉ちゃん、さっきからずっとこうなんです」
「尊さんは何かと戦闘するのですか?」
「あ、えーっと、ポスターを見てたら、つい」
「ポスター、ですか?って、あ」
 振り向いた蓉子が壁に貼られたポスターに目を留めて動きを止めた。
「風春祭、ですか。道理で……」
「蓉子ちゃん詳しいの?って当然か」
 お父さんが県警の人だものね、とは言わないでおいた。
「はい……父も今までの風春祭の奉納武道大会で何度も出場してました」
 遠くを見つめるように昔を思い出している横顔は、高校生の女の子が浮かべ
るには少々切ない雰囲気だった。
「そっか、じゃあ今回も楽しみだね」
「はい、って、今年は剣道じゃないんですね」
「総合格闘技、と記述してありますね。素手による格闘、打撃投げなども可、
試合は3分1ラウンド、とし1試合5ラウンドで行う、とあります」
「……な、なんだか凄い大会になってますね」
「でも、ちょっと興味あるでしょ。希望すれば一般人も参加できるし」
「み、尊さん、まさか……参加するつもりですか?!」
「ふふふ、ちょっと血が騒いでるのよね」
「お姉ちゃん……」
 やる気満々の尊、ポーカーフェイスの知恵、思わず夾と顔を見合わせる蓉子
だった。

時系列
------ 
 2006年3月末
解説 
---- 
 FLOWER SHOP Mikoにて、風春祭のお知らせにワクワクする尊。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。




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