[KATARIBE 30015] [HA06N] 小説『春日の王子さま』

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Date: Mon, 17 Jul 2006 13:47:20 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30015] [HA06N] 小説『春日の王子さま』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年07月17日:13時47分19秒
Sub:[HA06N]小説『春日の王子さま』:
From:久志


 久志です。
かつきぃのキャラ固めな話をちょっと。王子さまの日常です。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『春日の王子さま』
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登場キャラクター 
---------------- 
 戸萌葛樹(ともえ・かつき)
     :戸萌家長男。名門私立春日高校に通うお坊ちゃま。

稽古中
------

 握りこんだ手から伸びる細い銀の筋。
 力みすぎず、さりとて油断はせず。

 構えた切っ先の向こう、同じく銀色のサーブルを片手に持ち、マスクと
メタルジャケットを着込んだ対戦相手の姿。じりじりと近すぎず離れすぎ
ない位置からお互いの出方を探るように静かに相手の動向を窺っている。
 初夏の蒸し暑い空気が充満する格技棟の中、対峙する二人を取り巻く空
気だけが静かに鋭く尖っている。
 先に動いたのは相手。
 張り詰めた空気を切り裂くようなひゅっと鳴るような音と共に切っ先が
胸の少し下辺りめがけて突き出される。
 しかしそれは受け側の予測の範囲内。手首を軽く掬い上げるように伸び
た切っ先を軽く払い、そのまま吸い込まれるように相手の胸へと吸い込ま
れていく。
 ランプの光が点灯するのと、審判の止めの掛け声が同時に届く。
「きゃー葛樹くーん」
「戸萌せんぱーい!」
 一瞬遅れて、甲高い歓声が格技棟に響いた。

 礼を済ませ、次の練習相手と交代して葛樹は顔を覆ったマスクを脱いで
小さく息をつく。その顔立ちは先ほどでの鋭い剣技からは到底想像もつか
ない程の女の子と見まがうばかりのあどけない顔だった。
「お疲れ、戸萌」
「あ、はい。先輩」
「しかし相変わらずつえぇなあ」
「えと、ありがとうございます」
「凄いよね、頭一つ違う先輩に一歩も揺るがないもん」
「そそそ、見かけ小動物っぽいのに剣構えると途端に変わるよな」
「そんな、小動物って……」
 手にしたスポーツタオルで額の汗をぬぐっていた葛樹は部員達の言葉に
思わず膝が砕けそうになった。
「戸萌、部活終わったらすぐ帰り?」
「え?はい、この後ちょっと習い事が」
「大変だなあ、王子さまも」
「あの先輩、それやめて欲しいんですけど」
「悪い悪い、どっちかというとお姫さまのほうが近いよな」
「先輩……」
「ああ、悪かった悪かった。まあ次のサーブルの試合期待してるからな。
今回は男子の部優勝狙えるぞ?」
「は、はいっ」 


王子様は大変です
----------------

 私立春日高校。
 吹利県でも最古級にあたる高校で、県内でも高い進学率と長い歴史を誇
る私立の名門校である。
 その中で最近学生の話題になっているのが葛樹の所属するフェンシング
部だった。もともと運動部として細々と活動を続けていた弱小の部だった
のだが去年に新入部員の葛樹が入部してからというもの一部の女子広報が
妙なノリのよさを発揮し『王子のたしなみ!フェンシング部』などと一部
女子をターゲットとした宣伝を行い、それが他の生徒達に飛び火して一気
に知名度を上げるきっかけとなったのだった。

「宣伝するのはいいんだけど……」
 おかげで葛樹は学校のそこかしこで王子さま扱いをされ、戸惑うことが
しばしばだった。
「よう、王子今帰り?」
「あ、はい」
 そこで律儀に返事をしちゃうのがまずいのかもしれないなあ、と思いつ
つもなかなか無下にできないところが王子さまたる所以だろうか。
「あ、いけない。時間が」
 腕時計を見てあわてて小走りになる。週に一度のバイオリンの稽古の時
間が少し押してる。
「えっと、では失礼します」
「おう、またな王子さま」
 言葉の端にちょっぴりからかいを含めた言葉に内心苦笑しながら、家へ
と足を進める葛樹だった。


時系列 
------ 
 2006年6月下旬
解説 
----
 葛樹、春日高校で王子さまと呼ばれている様子。
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以上。


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