[KATARIBE 30002] [HA06N] 小説『いつのまにか裏部室』

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Date: Tue, 11 Jul 2006 23:27:33 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30002] [HA06N] 小説『いつのまにか裏部室』
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ふきらです。
裏部室シリーズ。とりあえず、発見の巻。

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小説『いつのまにか裏部室』
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登場人物
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 高瀬夕樹(たかせ・ゆうき):http://kataribe.com/HA/06/C/0581/ 
  高校生で歌よみ。詩歌を読むと、怪異がおこる。

本編
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 いつもよりホームルームが早く終わり、ほとんど誰も歩いていない校舎の廊
下を夕樹は部室へと向かっていた。
 横を過ぎていく教室ではまだ担任の教師が何かしらを話をしている.開いて
いる窓から何人かがこちらを見ているのに気が付いて、彼は少し歩みを早め
た。
 部室には当然まだ誰も来ていなかった。
「さて、と……」
 夕樹は定位置である部室の隅の椅子に腰掛け、鞄から一冊の本を取り出し
た。古本屋で見つけた俳句の解説本。いろいろな人の俳句が載っていてなかな
かおもしろい。
 パラパラと本をめくり、挟んでいた栞を探し出すと、すぐにその本に意識が
吸い込まれていった。
 パラリ、とページをめくる乾いた音がする。
「『咳をしても一人』、か……」
 尾崎放哉の句。知らずのうちに呟き、ため息をつく。何気ない一言のよう
で、どうしようもなく寂しく感じる。
 夕樹は顔を上げて、辺りを見回した。外は結構騒がしくなっているが、この
部室にはまだ誰も来ない。
 何となく息苦しさを感じて、夕樹は立ち上がると窓を開けた。
 風が吹いて、カーテンがふわりと揺れる。
 今日は何かあったっけ? と思ったが、まあいいか、と再び本に目を落とし
た。

 本を読み終え、顔を上げると部屋は少し薄暗くなっていた。もうすぐで下校
の時間。結局今日は誰も来なかったな、と鞄に本をしまい、窓を閉めた。
 入り口に近づき、戸に手をかけようとして違和感を感じ、夕樹は伸ばした腕
を止めた。
 その先にあるのは普通の戸。しかし、指を引っかける部分がそこにはなかっ
た。
 彼は首をかしげ、一歩下がり、入り口を見た。
「逆……?」
 戸がどちらに開くかなんて気にしたこともないが、無意識にやろうとした動
作では戸が開かないことは明らかだった。
 とりあえず、夕樹は戸に手をかけ、奇妙な感覚を覚えながらも戸を開いた。
 廊下はいつもと同じ感じで、特に変わった様子はない。彼はもう一度首をか
しげながら、とを閉めようと振り返った。
「……あれ?」
 開けっ放しにしていたはずの戸がいつの間にか閉まっている。おかしいな、
と思いつつ再び戸に手をかけ、そこでまた動きを止めた。
 今度はいつもと同じ動作で戸を開けようとしていた。それはさっき戸を開け
る時に引いた方向とは逆の方向。確かにそのまま戸を開けることができる。
 ドアの前で眉をひそめていると、部室の電気がついていることに気が付い
た。中からは話し声が聞こえる。
「あれ?」
 同じ言葉を呟いた。何がなんだかさっぱり分からない。
「確かさっきは逆の方向に明けようとしたんだよね……」
 そう言いながら、戸に手をかけ、いつもとは逆の方向にゆっくりと力を入れ
る。
 戸は存在しないはずのレールの上をゆっくりと滑っていき、入り口を開け
た。
「えーっと……」
 入り口の向こうには確かに先ほど夕樹がいた部屋が広がっている。しかし、
電気はついておらず、誰もいない。
 部屋の中をのぞき込み、辺りを見回してみるがやはり誰かいた気配はない。
「……どういうこと?」
 首をかしげたまま再び戸を閉める。カタン、と音がして戸が完全に閉まると
再びとの向こうからは話し声が聞こえてきた。
「よく分からないけど……ま、いいか」
 一応、中に入ろうかと思ったがどうせもう帰る時間だし、と思い夕樹はその
まま部室を後にした。

時系列と舞台
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2006年6月頃?

解説
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気が付くと裏部室にいたり。

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