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Date: Tue, 11 Jul 2006 23:06:52 +0900 (JST)
From: いー・あーる <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29998] [HA06N] 小説『風春祭断片・その八』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200607111406.XAA84792@www.mahoroba.ne.jp>
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2006年07月11日:23時06分52秒
Sub:[HA06N]小説『風春祭断片・その八』:
From:いー・あーる
ども、いー・あーるです。
風春祭、少しですが続けます。
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小説『風春祭断片・その八』
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登場人物
如月尊(きさらぎ・みこと)
:体は女子高生、心は年上お姉さんな人。豆柴君と友人以上恋人未満。
相羽真帆(あいば・まほ)
:自称小市民。多少毒舌。10月に入籍して姓が変わる。基本的に語り手。
軽部片帆(かるべ・かたほ)
:毒舌大学生。真帆の妹。かなりのシスコン。
本文
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たとえばそれは。
鋭く空を切る細い手や、直線的に動く足。
相手の懐に飛び込むような、勢いのある動き。
**
第三試合の前に、妹はちょっとだけ戻ってきた。
「次でしょ」
「うん。でも、次は一般参加の二人の試合なんだって」
「へえ」
というか……尊さん以外にも、そんな命知らずが居たのか。
「じゃ、あたし向こうで見てる」
なんて考えている間に、片帆はたったと人ごみの中に消える。多分リングの
すぐ近くにまで行ったのだろう。
尊さんと片帆は仲がいい。今日も結局、片帆は尊さんの雄姿を見たいっての
が、ここに来た一番の目的らしいし(でも考えてみると、女性の雄姿……なん
か矛盾しているのような)。
妹を見送って、あたしは人ごみから一旦抜けた。ここで片帆に「喉乾いたか
らお茶でも買ってくる」なぞといおうものなら、真剣味が足りない!くらい言
われそうだったので……ちょっとあの子が居る時には、抜けられなかったのだ
けど。
数人並んでいる、自販機でお茶を買って。
また戻ろう、としたとき。
「こっちのジュースがいいの」
どうやらお母さんの問いに答えている、そんな調子の高い声。
「これ?」
「うんっ」
柔らかそうな長い髪、指差しているお嬢ちゃんを見やる、少し疲れたような、
でも優しそうな眼差し。お母さんそっくりのお嬢ちゃんは、白目の部分がほん
のり青味がかっている。その透明なほどに綺麗な目を真っ直ぐに自販機に据え
て。
先刻まで近くに居た、あの親子だ。
紙コップに入ったジュースを、お嬢ちゃんが受け取る。余程喉が渇いていた
のか、喉を鳴らすようにして飲み干して。
「おかーさん、おとーさん、つぎ?」
「次の、次」
ってことは……この人、やっぱりさっきの人の奥さんなんだ。
そして、次の次ってことは。
人ごみの近く、張り出してあった試合の組み合わせ表を思い出す。次が尊さ
んと……確か、忍足、さんという人。そしてその次は。
(本宮さんと……東さんって人)
黙って座っていた……かたくななほどに静かな人。
**
忍足さんという人も、本来なら格闘は不得意ではないのだろうとは思う。た
だ……見ている限り、何となく、性格が格闘に向いていないようには見えた。
たとえば8の力で相手が倒れると判っているのに、10の力で殴る人もいる。
8の力ならそれで済まそう、と、そこで力を控える人もいる。8では叩きのめ
してしまう、7くらいで戦意を喪失させればいい、と、もっと控える人も居る。
忍足さんという人は……少なくともこの試合では、最後の例に一番近い気が
した。動きも技の早さも、決して尊さんに負けているわけじゃないのに。
(何より迫力が違う)
彼女の力は、多少は知っている。なんたって、昨日、手刀で等身大の人形を
叩き割ったのをこの目で見ている。
だけど。
わあっと声があがる。
おお、と、低い感嘆の声があがる。
あの中に……豆柴君もいるのだろうか。
それとも、彼女の戦う様を……見るに忍びないだろうか。
(あらゆる意味において。あらゆる見方からして)
女性だから侮っているというわけでもない。結構的確に、痛そうなところを
攻撃しているようだとも見える。だけど。
たん、と尊さんが大きく踏み込む。否、踏み込むと見せて、一瞬動きを止め
る。忍足さんが一瞬、ペースを狂わせる。
どういう戦い方とか、どちらが巧者、とかは、あたしは知らない。
だけど結局。
「すっごい、あの子!」
おお、と、どよめくような声。見物人の高い歓声。
第三戦。勝者は尊さん。
時系列
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2006年4月23日
解説
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風春祭の風景、真帆の視点から、続き。
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というわけです。
ではでは。
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