[KATARIBE 29997] [HA06N] 『裏の創作部、文化祭に向けて暗躍す?』

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Date: Tue, 11 Jul 2006 23:05:19 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29997] [HA06N] 『裏の創作部、文化祭に向けて暗躍す?』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200607111405.XAA84667@www.mahoroba.ne.jp>
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
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2006年07月11日:23時05分17秒
Sub:[HA06N]『裏の創作部、文化祭に向けて暗躍す?』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
何となく書きましたので、流します。
まずは、裏の創作部の風景です。
キャラクターお借りしました>ふきらん、ひさしゃん、とよりん

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小説『裏の創作部、文化祭に向けて暗躍す?』
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登場人物
--------
登場人物 
-------- 
 高瀬夕樹(たかせ・ゆうき):http://kataribe.com/HA/06/C/0581/ 
  高校生で歌よみ。詩歌を読むと、怪異がおこる。 

 蒼雅巧(そうが・たくみ):http://kataribe.com/HA/06/C/0529/ 
  霊獣使いの家の一員。非常に真面目。 
 品咲 渚(しなざき・みぎわ):http://kataribe.com/HA/06/C/0636/
   :高校三年生。創作部書記で突っ込み専科の関西人。 
 関口聡(せきぐち・さとし):http://kataribe.com/HA/06/C/0533/ 
  片目は意思と感情を色として見、片耳は異界の音を聞く。 
 ケイト: 
  蒼雅紫が生み出した毛糸のよく分からない生き物。癒し系。 

本文
----

 夏が近づくにつれて、文化部、特に何かを『作成』する部は、色々とその用
意を始める……ことになっている。例えば漫研だと夏休み前に下書きまでは終
わらせようとか、いや最低でもプロットはきちんと立てておくべきだとか、そ
のくらいの話はクラブで出ていたりする。
 ……無論、そのような予定というのはすべからく未定であるものなのだが。

           **

「そういえばさ、文化祭の出品何にするか決まった?」
「え?」

 裏部室、とも裏創作部とも言われる(行き着いた連中が何となく名づけてい
るとも言う)部屋で、唐突な聡の言葉に、夕樹は顔を上げた。

「いや、まだ、具体的には……」
「じゃあ、高瀬君の詩集作ったらどうだろう」

 へ?と声にならないまま目だけを丸くして、夕樹は聡を見る。聡のほうは存
外真剣である。

「それで、製本に凝る」
「……凝るって?」
「ハードカバーにしたり、表紙を布にしたり……」

 ほら、こんな風に、と、聡が図書室から借りてきたらしい本を広げてみせる。
文庫本をハードカバーに作り変える方法、またPCのワープロソフトを使って
打ち出した文章を束ね、本にする方法。

「僕は創作部じゃないけど……そういうのだったら向こうの創作部の作品と並
べて置いても遜色ないんじゃないかなって思ったんだ」 

 現在の表の創作部での主流は、やはり「何か、形のあるもの」を作ることに
ある。無論それが詩であっても話であっても全く問題は無いのだが、一緒に展
示、と考えると難しいのも事実である。

「インパクトで遙かに劣る気がするんだけど……」
「そうでもないよ?」
 何となく困ったような顔の夕樹に、あっさりと聡は言葉を返す。
「こうやって紙でも、何種類も作ると相当綺麗に出来るし、高瀬君のは短歌だ
から、あんまり分厚くなくていいとすれば、こうやって紙を閉じるところに飾
りを入れる方法もあるみたいだし」
「……やり方、知ってるんだ?」
「中学の頃には図書委員してたから、製本は一通り習ったんだよ」

 どちらかというと本の修復が目的だったのだろうが、それにしても一応は紙
を綴じ、ハードカバーの本を作ったことが、聡にはある。

「うん、楽しみだなあ。一度皮の製本とかやってみたかったんだよなー」
「か、かわ?」
「うん、表紙とか……あとは背表紙だけを皮にして、他は布とか紙とかでもい
いよね」 
 あわあわ、と、慌てる夕樹を尻目に、聡は楽しそうに突っ走る。
 それにまた、賛同する先輩がそこに居たりするのである。

「ええ、素材にはあてがありますし」
 表の創作部の一員、蒼雅紫を陰ながら見守る会会長(と、聡が勝手に命名)
の蒼雅巧が、口を挟む。穏やかな……しかし調達ならどんと任せろ、と、太鼓
判を押すくらいの安定感のある言葉である。

「な、なんかえらいことになりそうな予感がする」
 表と同様、裏でも何だか皆に振り回されてる……と、夕樹は冷や汗をかいた
が、聡のほうはけろっとしたものである。
「別に、そんなたいそうなことしないよ。でも、高瀬君の短歌をきちっと正装
してあげたいじゃないか」 
「むむ……それは非常にありがたいんだけど」 
「あとは、高瀬君の短歌を印刷するだけだよ」 
 ええ、と、夕樹はのけぞった。
「もうそこまで進んでるー」 
「……なんか、まずいかな」
 人がいいんだか悪いんだか、聡の表情には微塵の含みも見えない。ただ不思
議そうに夕樹を見るばかりである。

「いあ、その、こころのじゅんびというものが……」
 じーーーっと見ている聡の視線を避けるように、夕樹が俯いた。
「だけどさ、高瀬君」
 少し首をかしげながら、聡が突っ込む。
「詩歌創作部のままだったとしても、やっぱり文化祭には作品を発表してたん
じゃないかな?」
 確かに、そうやって作った部誌を、年に一度出している文化部は多い。
 うーん、と、考え込んでいる夕樹の背中を、これまたどんと押す一言がかかっ
たのはその時である。
 
「迷わずいけよ、いけばわかるさ」 
 へ、と、三人がロッカーのほうを見る。
 ロッカーからは、ぴょこんと見慣れた渚の顔が飛び出している。
 相当お間抜けな情景なのだが、夕樹のほうはそれどころではない。
「ぐぅ……でも、多分わら半紙にホッチキス止め程度だと思うんだけど」 
「そんなことはないよ。それにオフセットで外部印刷するよりは、余程安上が
りだし」 
 そーやそーや、と、やっぱりロッカーから顔だけ出して応援(?)している
渚を見やると、聡は溜息交じりに声をかけた。
「……ってか品咲先輩。そこから頭だけ出してないで入って来て下さい」  
「……なんかお邪魔するの悪いかなーって」 
「…………何のお邪魔なんですか」
 こそこそ……というか途中はよいしょ、の勢いで……入ってきた渚に、巧が
ひょいと椅子を示し、やっぱり机の上をうろうろしていたケイトちゃんが大喜
びで挨拶に来る。それら一切が目に入っていない勢いで。

「……ああそうか。詩歌創作部に入っていたらこうなるのが当然だったのか……」 
 ぶつぶつと、夕樹が呟いている。これは多少傾いているな、と見て取って、
聡はにっこり笑った。

「それにね」
 妙に企むような顔になって、言葉を続ける。
「わら半紙に印刷のほうが、作品それだけの鑑賞になるから容赦ないよね?」 
「……む」
 ひょっと夕樹が顔を上げた。
「それはつまり短歌だけだと作品としては弱い、と?」 
「ううん……ああそうか、作品だけで勝負なら、凝らないほうがいいのか」 
 そうするとシンプルなのがいいのかなあ、などと、天井を見上げて考え込む
聡を見て、夕樹は慌てたような顔になった。
「……いや、それはかなり厳しい」

 ……つまりどっちやねん、と、つっこんだのは恐らく複数に違いない。

「せっかく発表するんやで、おめかししたらええねん」 
 ケイトちゃんの前で指をひょいひょい振りながら、渚が言う。
「品咲先輩も巧先輩も賛成ですよね?」 
 にこにこと、聡が聴くのに、3年の先輩二名は頷いた。
「無論です」
「そりゃもちろん。きれいにしてあげるべきやん」 

 3対1。
 うむむーと夕樹が唸る。
「……どうせ本にするんだったらきれいにしたい、というのは、ある」 
「そんじゃ、問題無いじゃないか」 
「でも、装丁はともかくとして、中身が短歌だけというのはなあ……」 
 他の中身って……と、疑問符が飛ぶ前に、夕樹は自分から付け足した。
「写真でも入れられたらいいんだけど」 
「……ふーむ……そういう写真を撮る人がいたら……入れてみたいよね」 
「短歌にあった写真…… あ」 
「なんかあるんだ?」 
「自分で撮ればいいのか」 

 ぽん、と手を打った夕樹を、三人ともちょっときょとんとして見やる。数瞬
の後、それでもああ、と、頷いたのは、彼の異能を知る聡である。
「……ああ、そうかあ」

 詩歌を詠めば、その詩歌の風景が現実化する。
 その現実化した風景を、写真に撮れば。

「写真、ですか」
「そういうのを携帯とかであえて撮ると親近感とかわいてええ感じかもなー」 
「まあ、そんなに性能の良いカメラなんて無いですから……ああ、ピンホール
カメラという手もありますね」 
「そこら辺も含めて、製本考えようよ」 
 かなり乗り気になったらしい夕樹と、わくわくしながら、話を進める聡と。
 うんうんと頷く渚と、楽しそうに聞いている巧と。


 裏の創作部。
 文化祭での展示物に、多少のめどがたったようである。

時系列
------
 2006年7月

解説
----
 今年の文化祭の展示物についての会合。
 暗躍してませんが、それはまあ言葉のあやというもので<こら
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 てなもんで。
 問題等ありましたら、宜しくです。

 ではでは。
 


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