[KATARIBE 29978] [HA06P]エピソード:『昔語りにはええ夜や』

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Date: Wed, 28 Jun 2006 15:23:23 +0900
From: "Toyolina and or Toyolili" <toyolina@gmail.com>
Subject: [KATARIBE 29978] [HA06P]エピソード:『昔語りにはええ夜や』
To: kataribe-ml@trpg.net
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昨日のログから切り出し整形。
鋼洋くんが出てきたあたりは上手くつながりそうにないので割愛勘弁。
そしてきしとんには修正あればよろしくお願いします。
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エピソード:『昔語りにはええ夜や』
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登場人物
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 御厨正樹(みくりや・まさき):創作部部長でマッド科学者。爆発常習者。
  http://kataribe.com/HA/06/C/0534/
 品咲 渚(しなざき・みぎわ):創作部書記でうるさい関西人。
  http://kataribe.com/HA/06/C/0636/


突っ伏す!
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 正樹     :「なんだか、最近俺が武器に思えてきた。」

 珍しく正樹と渚しかいない創作部室。
 突然独り言を言い出す正樹。俺が武器とは一体どういう意味だ。
 カンサイウォーカーを斜め読みしていた渚が顔を上げたが、正樹は気づいて
いない。

 正樹     :「別の物作るか……、最近後輩がうるさいしなぁ……いつ
         から懐が狭くなったんだか……」

 懐の広さではなく、爆発するのが問題なのではないだろうか。
 音々の小言も、聞き流されているようで、実は堪えていたのだろうか。

 正樹     :「前の部長に比べればかわいい物なのになぁ……」
 渚      :「前の部長について詳しく伺いましょうか、ちょっと署ま
         でご同行を」
 正樹     :「わ、私は何も悪い事はしていないっ、全部あいつが悪い
         んだっ」

 がしっと、腕を掴んで引っ張ろうとする渚。ドラマの真似でもしているのか、
標準語である。反射的に犯人役を演じてしまっている正樹。三年の今になって、
創作部に入り浸り、なぜか書記になっている渚は、先代の創作部部長について、
全く知らないのだった。

 正樹     :「って、何言わせんだ」
 渚      :「まさきさまもノリがよろしぅなってきはって」
 正樹     :「毒されてきたか……」
 渚      :「昔語りをするにはええ夜や」

 なぜか遠い目をして窓から外を見る渚。どうみても明るくて、どうひいき目
に見ても、夕方ですらない。時計を見ても3時半過ぎ。
 ボケも標準装備なんだなあ、と正樹は思った。

 正樹     :「品咲毒。分類・思考汚染。常温気体の無味無臭。一定量
         を超えるとボケ、もしくはツッコミの属性が芽生える。」
 渚      :「どっちが芽生えるかは神の御心次第なん?」
 正樹     :「本人の資質による。」

 おもむろにガスマスクを、どこからともなく取り出して装着する。
 君のノリはもう十分に毒されていると思います。

 渚      :「そんなんせんでも、まさきさまはツッコミやんか」

 手遅れでした、と告知でもしたいような口調。

 渚      :「忘れたとはいわさへん。あのとき同時にはなったクロス
         ボンバーを」

 クロスボンバーとは、二人がかりで前後からアックスボンバーを相手にぶち
かます荒技である。ちなみにラリアットとアックスボンバーは違う技なのだが、
それはまた後の機会に。

 正樹     :「そんな昔の事は忘れた。」
 渚      :「先月の話やのに。認知症? ちゃんと魚の骨とか食べて
         る?」
 正樹     :「興味の無い事は覚える気が無いんだ。」
 渚      :「ゆかりんのことしか頭にないんかー。ええなあ、一途で」
 正樹     :「……」

 ああ、自然な流れで内角をえぐってしまう。恐るべし関西トーク。
 正樹はずーんと沈み込んでしまっている。顔に縦線入っているかもしれない。

 渚      :「あれ図星? 別にからかってるわけちゃうでー」
 正樹     :「はぁ……」

 電池が切れたように、机に突っ伏す正樹。思い出してしまったらしい。

 渚      :「まあ、たまにはからかったりもするけど、根本的にはあ
         れよ、応援してるんやで?」

 ちょっと罪悪感があるのか、ちょっとだけフォローする渚。
 まあ、応援してるのは本当だろう。手段はともかく。

 正樹     :「そうじゃなくて、蒼雅さんに守られてる自分が情けない
         から」
 渚      :「……気持ちはわからんでもないけどさあ、案外嬉しいも
         んやで、弱いとこ見せてもらうってのも」

 なんか母性がくすぐられるらしい。そしてなにか思い出したのか、ちょっと
嬉しそうな表情をしている。

 正樹     :「見せたくて、見せたんじゃない……から。」
 渚      :「あほかぃ。んなもん、見せたくて見せるやつなんか、ず
         るいやんかぃ」

 ホストの手管とか、そういうのを想像してるらしい。

 正樹     :「まぁ、そうなんだけど。あんな事でトラウマになってるっ
         てのも弱いなぁ……」
 渚      :「そんなんそのうち立ち直るって。いや、開き直る、かな、
         あれは……」
 正樹     :「だといいけど……」
 渚      :「んふー。まあなんや、そういうなんやった、苦悩? も
         ええもんよ(えらそう)」

 わかったような口ぶり。
 お姉さんぶりたいんですか、たまには(笑

悩みについて
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 正樹     :「品咲さんは、悩み無さそうだもんねー」
 渚      :「今はなー。中学とか高校入ったばっかりとか、悩みまく
         りでハゲるかと思ったけどなー(うふふ)」

 普通だったら怒られそうなことを素直に口にする正樹。
 しかし、渚は構わず続けた、笑顔で。

 渚      :「胃もキリキリ言うてたなー」
 正樹     :「えぇっ!?うそだー!」
 渚      :「ほんまやっての。中学んときは友達入院して、今も入院
         しとるけど、それで悩んだし」

 淡々と。

 渚      :「高校入ったら膝けがして歩くのひーひーやったし」
 正樹     :「人それぞれに歴史ありって感じだな」

 とりあえず、二つは悩みがあったらしい。
 そういえば、体育の授業でランニングなんかだと、ダントツで最後尾を走っ
ているなあ。あれは、サボってるわけじゃなかったのかな。

 渚      :「結構波瀾万丈の人生続いてるんやで、これでも」
 正樹     :「俺はあんまり波乱万丈ってわけでもないなぁ……引きこ
         もりだったし。」
 渚      :「ほうほう。それはあんまりつっこまんほうがええかしら」
 正樹     :「んにゃ、ただ単に学校終わったら物作るために部活に入
         らんと速攻で家に帰ってただけ。」
 渚      :「外出てるやん」

 すごく冷静にツッコむ渚。たしかに、ひきこもりと言えば、世間一般では、
部屋からも出ようとしない人間のことではある。

 渚      :「ただの帰宅部やん」
 正樹     :「学校位は行かないとね。」

 ごもっとも。

 正樹     :「夏休みとかめったに家から出なかったなぁ」
 渚      :「世の引きこもりは、それすらせんからなあ。学校いけるっ
         てのがすごい贅沢ってわかってへんわ」
 正樹     :「その辺の感覚はよく分からん。」
 渚      :「研究してたんやろー? そのへんか、さっき言った友達
         やけど、もう3年?4年?病院出たり入ったりしてんねん」

 フォローしながら、渚はそのままの調子で続けた。

 正樹     :「ふむ。」
 渚      :「小学校んときとか、めっさ元気で、うちとか泣かされとっ
         たんやけどなー」
 正樹     :「いじめっこかぁ……懐かしいなぁ、10m以上はなれて
         悪口言ってくるあいつらはどうしてたかなぁ……」
 渚      :「いじめっこっていうか、なんていうかなー。普通に幼な
         じみなんやけどなー」

 正樹の言葉を聞いているのかいないのか。意図的かどうかもわからないが、
結果として正樹の意識から、いじめっこはどこかに飛んでいった。

 正樹     :「男?」
 渚      :「ん? ああ、うん、男子」

 小学校低学年頃とか、幼稚園あたりの話なんだろう。
 このくらいになると、女子を泣かすのがステータスになることがあるものだ。
 困ったことに。

 正樹     :「なるほど、らしい話だ。で、その幼馴染がどうしたの?」
 渚      :「ああうん、うちが中学2年ときかな、向こう小6やったん
         やけどな。突然血ぃどばーって吐いて」
 正樹     :「は?」

 いつもの口調で、ギャグでなく、爆弾発言する渚。身振り手振りはなく、世
間話のように。

 渚      :「そんで、入院退院繰り返して今に至ってます」
 正樹     :「……」

 二の句が継げない正樹。

 渚      :「今は体調ええ感じらしいから、たまに外とか連れてって
         るんやけどな」
 正樹     :「……なんとも、コメントしがたいな。」
 渚      :「まあそういう子もおるってことで。もしかしたらここの
         1年なっとったかもしれんけど、今は大検受けてるみたい」
 正樹     :「病気は専門外だからなぁ……」

 正樹の言葉は何気ないものだったかもしれない。
 でもそれは、優しい言葉として渚の心に響いていたようで、口調に少しだけ
感情をが乗せていった。

 渚      :「治るって信じとるけどなー。でもなー……たまにあかん
         ねんな……」
 正樹     :「……なんだか大変だな。」

 ちょっとだけ微笑んで、渚は謝った。少し、無理している表情だった。

穏やかな時
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 渚      :「なんかしんみり空間なってもーたな、ごめんなー」
 正樹     :「いや、いいんじゃないか?品咲さんからシリアスな話が
         聞けて新鮮だった」

 日頃うるさくて、痛いチョップを振り回してるだけじゃなかったんだ。
 気がつくと、日差しが少し和らいでいる。夕方にさしかかってきていた。

 渚      :「へへー。膝のけがの話も聞く?」

 茶化されずに正樹が聞いてくれたのが、嬉しかったんだろうか。

 正樹     :「それは、また今度で。」

 聞くと長くなりそうだったし、それよりも、今の穏やかな空気が、なぜかあ
りがたかった。

 渚      :「おっけー。またなんかそういう空気になったら言うわー」

 そういう空気っていうのは、渚語でいうところの「昔語りにはええ夜」って
時なんだろうか。まだ夕方なんだけどな。

 正樹     :「いい話を聞かせてもらったから、今度何かリクエストに
         沿ったものを作ってやろう。」
 渚      :「お、ほんま?やった」
 正樹     :「ほんま、ほんま。また今度言ってくれれば作るから。」

解説
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 よくわからんけどいい雰囲気っぽい2名。


時系列
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 2006年初夏の放課後。

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