[KATARIBE 29976] [HA06N] 小説『奉納武道大会決勝 - Round ZERO』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Tue, 27 Jun 2006 00:00:24 +0900
From: "Sakurai.Catshop" <zoa73007@po.across.or.jp>
Subject: [KATARIBE 29976] [HA06N] 小説『奉納武道大会決勝 - Round 	ZERO』
To: Kataribe-ml <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <449FF688.8040800@po.across.or.jp>
X-Mail-Count: 29976

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29900/29976.html

こんばんは、Catshop/桜井@猫丸屋です。

 吹利県警春風祭の奉納武道大会に一枚かんでみようかと。
 ──いや、まだ試合も始まっちゃいませんが。

 ではでは。

======================================================================
[HA06N] 小説『奉納武道大会決勝 - Round ZERO』
============================================
登場人物
--------
東治安: http://kataribe.com/HA/06/C/0597/
 吹利県警警備部、公安の人。
 キャッチフレーズは"吹利県警の精密機械"、或いは"不可視の東"。
 
相羽尚吾: http://kataribe.com/HA/06/C/0483/
 吹利県警刑事課巡査。ヘンな先輩。
 キャッチフレーズは"ヤク避け相羽"。

桜木達大: http://kataribe.com/HA/06/C/0365/
 愛称は若旦那、通り名は猫回し。
 その正体は矢垣物産(株) ITサービス事業部 吹利事業所の便利屋SE。

薗煮広矢: http://kataribe.com/HA/06/C/0627/
 吹利県警交通部交通企画課巡査。熱血企画人


1. Round ZERO - 或いは、観戦する桜木達大
------------ー--------------------------
 春うららかな花曇りの日。
 まだ薄着するには少しだけ冷たさを残す4月の風が穏やかに吹いている。

 しかし達大は、そして達大と同じく特設リングを取り囲んだ観衆たちは、
その風の冷たさを忘れていた。
 吹利県警が市民交流イベントとして毎年開催している風春祭の会場である。
 例年であれば、剣道や柔道,居合いなどの奉納演舞が行われる特設リング
では、今年に限って署員有志による総合格闘技イベントが行われていた。
 例年なら県警関係者か、一部のマニアくらいしか集まらないそこに、今年は
老若男女取り混ぜ様々な市民が押しかけた。げに世の格闘技ブームというのは
衰えていないものである。

 すでに市民を交えてのエキシビジョンマッチを含め、6試合が終わった。
 どれも白熱し、市民を熱狂させたがとうとう最後の試合──決勝戦である。

 残ったのは公安の東治安、そして刑事部の相羽尚吾。
 白熱し、拮抗した試合の多かった今回の大会だったとうのに、この二人だけ
は安定した試合運びでここまでコマを進め、ほとんどダメージがない。
 どちらも30代前半。
 体力は下り坂に傾き始めた頃だが、技術と気力はほぼ上り坂の頂上に近い。
おそらく、格闘技者としてはもっとも充実を見せる頃合だろう。

「──って、別に格闘家じゃないんだけどな。二人とも」
 我ながら大仰なモノローグに呆れて呟く。そして苦笑い。
 相羽尚吾は個人的な知り合いである。そのひいき目を差し引いても二人の
実力は拮抗しているように見えた。
「さあ、春の風舞う風都ことこの吹利市吹利県警特設会場にて、まさに風春祭
クライマックスとも言える奉納試合決勝戦が始まろうとしています」
「いずれ劣らぬ闘士達やねえ」
「以前の試合に引き続き、今回の試合の実況は私、吹利県警交通部薗煮広矢と
解説に吹利県警生活安全部少年課課長桃実幸さんでお送りします」
「どうも、よろしうに」
 アナウンサが実況なんじゃないかと思うような手馴れた薗煮と、なにやら
自らに合気道を手ほどきした師匠を思い出させる桃実の掛け合い。
 リングの左側から相羽、右側から東が現れる。
「さぁっ、決勝に勝ち残った戦士が今っ、今っ、リングに向けて一歩、また
一歩と歩を進めて参りますっ! その胸中には何があるのかっ、その遠い視線
の先に二人は何を見るのかっ! 今、両選手の入場ですッ」
 白熱した薗煮の実況が、観衆をいっそう盛り上げる。
「片や、吹利県警にその名を知れたヤクザも避けて通る男、通称ヤク避け相羽こ
と吹利県警刑事部の相羽尚吾!」
 オオーッ、とおそらくは刑事部の署員たちの鬨の声。
 その声を浴びるように、ゆったりと相羽がリングに上がる。
「そして、片や吹利県警の精密機械の呼び名も高い、吹利県警警備部公安一課
不可視の東こと東治安!」
 ウォォォォッ! といっそう太く猛々しい公安部の吠え声。
 それすら耳に入っていないように、真っ直ぐに歩を進め今度は東がリングに
上がる。
 いやだから、県警の市民交流イベントだよね?
 不意に我に返って思う。思うが、どこかで同じキモチでいる自分もいる。

 ふと相羽側のリングサイドに真帆の姿が見えた。
 なにやら不安げに、声を掛けている様子だが、刑事部と公安の応援合戦の
怒号に掻き消され聞こえない。この調子では、相羽本人にも聞こえているか
どうか。
 ──あの愛妻家ならばっちり聞いていかねないけどな。
 自分の思いつきにくすぐられて、小さく笑みこぼれる。
 なんとなく気になって東サイドに視線を向ければ、こちらは妙齢の女性と
その娘さんらしい女の子がじっと祈るように東を見ている。おそらくは東の
奥さんと娘さんだろう。
 これは、面白い試合になりそうだな。
 それぞれ絶対に負けるところを見せたくなさそうだから──なんて思いつい
て今度は意地の悪い笑みがこぼれる。
 試合そのものよりも、こういうリングの外のドラマに目が行ってしまうのは
なんともプロレス的な発想だとは思うけれど。でも、やはり面白い。

「さあ、激戦を戦い抜いてきた両名、にらみ合っております──さぁ、そろ
そろ時間いっぱい、さぁいざ、いざいざッ、ついに試合が始まりますッ!」

 カーンッ、と少し軽やかで甲高いゴングの音が響く。
 ついに試合が、始まる。


時系列と舞台
------------
 2006年04月23日、春風祭の奉納武道大会決勝。


解説
----
 奉納武道大会を見物に来た達大の視点から。

 まだ試合も始まってないのにこの盛り上がり。
 ホントにこの人たちの本業はお巡りさんなんでしょうか?(笑)


参考リンク
----------
 狭間06 Wiki - 風春祭
   http://hiki.kataribe.jp/HA06/?FuSyunSai

$$
======================================================================
-- 
#====================================================================#
Sakurai.Catshop / 桜井@猫丸屋
 e-mail : zoa73007@po.across.or.jp
  blog   : http://www.mypress.jp/v2_writers/sakurai/
 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29900/29976.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage