[KATARIBE 29968] [HA06N] 小説『風春祭断片・その三』

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Date: Sat, 24 Jun 2006 00:36:14 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29968] [HA06N] 小説『風春祭断片・その三』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年06月24日:00時36分14秒
Sub:[HA06N]小説『風春祭断片・その三』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
もう、こまこま流すことにしますっ(えう)
……うう、ほんとこう、すすまねへ……

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小説『風春祭断片・その三』
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 登場人物
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 相羽真帆(あいば・まほ)
     :自称小市民。多少毒舌。10月に入籍して姓が変わる。 
 軽部片帆(かるべ・かたほ)
     :毒舌な大学生。真帆の妹。相当のシスコン。相羽尚吾を敵視中。

本文
----

 うわあ似合わない、が、妹の第一声。
 それは言い過ぎだろうと思ったけど……まあ、かなり賛意というか、反対す
る術がないというか。

             **

 土曜日の朝、かなり早く相羽さんは出て行った。
「始まるの10時くらいだっけ」
「うん」
「それくらいに、じゃあ、片帆と行くね」

 風春祭に一緒にいこう、と……実は片帆から誘われた。何でも尊さんが手伝
いに行くらしい。
「って……民間人なのに?」
「なんか、女性向けの護身術教室で、教えるの手伝うんだって」
「あ、なるほど」
 細身で年齢よりも相当に若く見える彼女は、けれど剣道でも相当の腕だった。
あの後豆柴君と一緒に稽古していたらしいし、そこらの腕を買われたのだろう。
「ねーさんもやろうよ」
「面白そうだね」
「じゃ、いっしょに行こう?」

 どうせならオープニングセレモニーから行ってみようよ、と言うと、一瞬ぶ
すっとしたものの、すぐに行く、と返事をした。
「どうせ居るんだもん。仕方ない」
 ……仕方ないって……言うかなあ、普通。

              **

 で。

「うわあ似合わない」
「……あんたねえ」

 オープニングセレモニー。
 よく考えてみたらひたすらに整列して行進、なんだけど、そこは流石に県警
(というか警察官、というか)、『一糸乱れぬ』って形容を使いたくなる。

 いわゆる「お巡りさん」の制服の人達、そして時折テレビに映る、機動隊の
制服の人達。
 以前、どこかでのオリンピックの入場式で、日本人の入場する場面を見たの
を思い出す。前後が結構ばらけていたのに比べて、日本人は妙にびしっと足並
みが揃っていて、それがまた『日本らしい』と……少なくとも当時、友人宅に
上がりこんでテレビを見ていたあたし達は言い合ったものだけど。
 うん、何だかあの映像を思い出した。

 に、しても。

「あ、本宮さんだ」
「ああ……やっぱり良く判る」
 なんせ背が高いからよく目立つのだ、本宮さんは。
「あの人も、似合うようで、滲み出てくるものが似合ってないね」
「…………片帆、あんたね」
 なんか怨みでもあるのか、本宮さんに(というか本宮さん『にも』)。
「でも、流石にあの人よっかは似合ってるけど」
 ……これだもの、なあ。


 相羽さんの制服姿というのは、見るのはこれが初めてである。
 こうやって見た限り、似合ってない……とは、あたしは思わない。もし全く
知らない人で、交番の前に立ってたら、それはまあ普通にお巡りさんなんだろ
うと思うけど。
 ……けど。

 濃いグレーか黒のスーツ。夏でもきっちり着て……いる割に、どこか崩した
ような印象があって、でもそれが似合っていて。
 こう……『刑事』と言って大概の人が連想しそうな服装が、あまりにはまっ
てるから、どうしても制服が『似合わない』になる。
 ……とか、考えてたら。

「制服ってものの持つ印象から、見事に外れてるものね」
「……あんたね」
「だって、規格に合うとか指示に従うっての、すごく似合わないじゃない」
「…………お巡りさんなんですけど、それでも」
 いや、かなり同意する部分はあるけど、流石にそうは言えない。反論になら
ない反論が、まさか聞こえたわけじゃないだろうけど。
 一瞬、相羽さんの目が動く。一瞬、まともに目があった……と思ったら。
(……あの人はっ)
 ごくごく自然に、ウィンクして、一瞬だけにやっと笑う。
 ……そんなことしてるから、制服が似合わないんだ、あの人は。

             **

 行進が終わって整列した後、前に本部長さんとやらが立たれる。どうやらこ
れから挨拶が続くらしかった(横に何人か並んでいたことから推察)ので、片
帆とあたしは二人して抜けることにした。

「屋台なんかは出てるんだね」
「古本屋あったよ、古本屋」
「あーわかったわかった」

 この前うちの近くの青空古本屋さん(つまり道端に本の入ったダンボール箱
とお皿が置いてあるという……)で、一冊10円の本を買ってから、相当味を占
めたらしい。

「行こうよー」
「あ、あたし先に、ちょっと屋台見ていく」
「えー」
「お留守番に、お土産買うから」

 出掛けに相当拗ねられたけど、まさか空を飛ぶ魚や小さな竜を一緒に連れて
くるわけにもいかなかったし。
 近くの屋台を覗いてまわる。綿あめやたこ焼き、りんご飴。

「でもねーさん、そういうのって帰る前に買った方が良くない?」
 結局ついてきてる片帆の言葉に頷く。確かにそのほうがいい。
「だから本に行こう、本に!」
「あーはいはい」

 引っ張られて、古本の並ぶ一角に向かう。
 だんだんと人は増えている。

 県警のお祭りが始まる。


時系列
------
 2006年4月22日

解説
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 県警のお祭り、風春祭のはじめ。真帆の視点で。
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 てなもんで。
 次は、護身術だ!(なんだそれは)
 


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