[KATARIBE 29918] [HA06N] 小説『ぶぶづけ伝説』

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Date: Mon, 22 May 2006 23:32:47 +0900 (JST)
From: みぶろ  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29918] [HA06N] 小説『ぶぶづけ伝説』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年05月22日:23時32分46秒
Sub:[HA06N]小説『ぶぶづけ伝説』:
From:みぶろ


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小説『ぶぶづけ伝説』
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登場人物
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 僕 :前半の語り手。関西圏の大学生。
 部長:『僕』と同じ大学の学祭実行委員会責任者。
 会長:千緒の所属する学祭実行委員会の会長。
 藤咲千緒(ふじさき ちお)
   :大学生。学祭実行委員会。外面はんなり内面いけづ。


本文
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 それは僕たちがNF実行委員会の会室を訪ねてから2時間ほど経った時だっ
た。窓縁の机で書き物をしていた女の子がつ、と立ってこちらにやってきて言
うのだ。

「ようけしゃべって喉渇かはったでしょ? アイスコーヒーでも飲みます?」

 女の子が立った時点でひやりとした――なんせ暇とはいえない時期にノンア
ポで2時間も喋っているのだ(ええと主にはうちの部長が)――僕は、その京
言葉を聞いて背中にどっと汗が吹き出るのを知覚した。
「あ、えっと部ちょ」「おっ、藤咲ちゃんがいれてくれるの? そりゃありが
たみあるねぇゴチになりますっ」
 ……。
 藤咲ちゃんことその女の子は、にこぉっと綺麗に微笑んで、奥の部屋へ。
 いや、うん。まさか都市伝説だよね。でも今からコーヒー飲んだらまた30
分くらいは居座ることになるだろうし、やばいんじゃないかなぁ。
 果たせるかな、アイスコーヒーとやらは、5分たっても10分たっても、出
てくる気配が一向になかったのだった。

 僕は膝をそわそわさせてみたり、窓の外を眺めるふりをしてみたりと、早く
帰りたいオーラを精一杯出してみたのだが、部長には通用しないようだった。
アザラシに似ているのは顔や体型だけでなく、鈍さもらしい。むしろ向こうの
会長が気づき、気の毒そうな視線を向けてくる。死にたい。部長が珍しくも
「コーヒーマダー?」とか不躾なマネをしないのだけが救いだった。
 15分後。件の女の子が奥の部屋から出てくる。
「あっ、藤咲ちゃん」
 げっ、部長、やめ
「もう俺のど渇いちゃって」
 僕の祈りもむなしく、アザラシ部長は満面の笑みで手を振った。
「コーヒーマダー?」

 藤咲ちゃんは軽く驚いて、すぐに笑顔になり
「はい。今おいしいダッチコーヒー用意してもろてはるんで、もうちょっと待
ってくださいね」
「あ、あの、もう帰ります。帰りますんでっ」

 案の定、帰り道の部長は不満たらたらだった。
「お前ね、せっかくコーヒーいれてくれてるのにあれはないよ」
「いやいやいやいや。部長、ダッチコーヒーって水出しですよ。できるのに明
日の朝までかかりますよ」
「ぇ、なんでそんなの作ってるの」
 僕はばれないように口の端っこからため息を押し出し、説明を試みた。
「だから、遠まわしに帰れって言われたんですよ」
「うわあああ。これがぶぶづけってやつか」
「です。きっとあのままいたら、コーヒー豆とお湯を出されて『どうぞおあが
りやす』とか」
「ひいいいいい」

                ◇

「……ねえ、藤咲さん。これはちょっとした知的探究心からの質問で、それ以
上でもそれ以下でもないんだけど、あのまま彼らが帰らなかったら、どうして
たの?」
「はあ。普通にコーヒー出しましたよ。こんな風に」
「あ、こりゃどうも。本当に淹れてたのか。じゃあなんであんな嘘を」
「普通に『ちょっと手間取りましてん』じゃおもろぅないですもん――と、い
うことにしときましょ♪」
「ねえ……俺にむかつくことがあったら、はっきり言ってね」
「会長はええ人ですよ?(にこにこ)」
「ひいいいいい」


解説
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 なんだか悪い人みたいになった。

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