[KATARIBE 29888] [HA06N]小説 『異能を持つようになって』

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Date: Sat, 06 May 2006 21:41:43 +0900
From: asakura <guilsn@boat.zero.ad.jp>
Subject: [KATARIBE 29888] [HA06N]小説 『異能を持つようになって』
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小説『異能を持つようになって』
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登場人物
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 風祭 優一(かざまつり・ゆういち):http://kataribe.com/HA/06/C/0606/
	:超能力者の高校生、オカルト研究会に所属している


普通ということ
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 中学2年のあの日……事故にあわなければこの力は発現しなかった。
あのころは、『普通』じゃないということに憧れていたので病院で力に気づい
たときには、力を使っていないときが無いほどだった。
誰にも教える気は無いけれど自分は『普通』じゃない、何か特別な力を持って
いるんだと。

(特別なんじゃなくて、ただ変わっているんだと気づいたのはいつだったっけ
……)

 退院して、復学して。
学校を通っている間、力を使わないようにしていた。
理由はばれて見世物にされるのがいやだったから、この力は誰もがうらやむす
ごい力なんだと思ったから。

(でも、やっぱり見せたくなるよね……)

 結局のところ、誘惑に勝てなかったんだと思う。抗う気すらなかったかもし
れない。
不良に絡まれている友達を助けようとして力を使った。
怪我をさせる気は無かったし脅かしてやろうという気持ちもあって、不良達を
空高く投げ飛ばした。
正直気分はよかった、怖いものは何も無いような気がした。
……振り返るまでは。

(あの目は……忘れられないよな……)

 振り返ると、何か恐ろしいものを見たような目をした友達がいた。
彼は、僕が声をかける前に走って逃げ出した。

それから、しばらくの間力を使うことは無かった。
うらんでいたこともあった。

 恨んでも、悔やんでも力がなくなるわけではないことに気づくと、今度は力
を使いこなす練習に必死になった。
考えた後に、相性がよさそうだったので合気道も親にお願いして再開させても
らった。受験勉強までの期限付きだったけど。

 そんな日が続いた後に起こったのが、戸萌さんを巻き込んでしまったあの事
件。

 不意打ちの攻撃に対し、うっかり力を全力で使ってしまったのに、戸萌さん
は怖がることも、逃げることもしなかった。
多分、それが一番のきっかけだったと思う。

 それからは、この力に対して優越感に浸るのではなく、恐怖におびえるので
もなく、ただそういう力を持っているんだと。
普通にしていられるようになった。

(本当に、戸萌さんは恩人かも……)

チカラの意味は
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 優越感も恐怖感も感じなくなると、ふと自分の力についてどういう仕組みな
のか気になった。
今のところわかっているのは『ある』と認識しているものの運動ベクトルが色
のついた矢印として認識できること、そして見ることができた矢印に対して物
体に触れることで干渉できること。
そして、力に関係する範囲においては短期未来までなら予測できること。

 つまり、今わかっているのは『何ができるのか』であって、『どうしてでき
るのか』についてはまったく知らない状況にある。
オカルト研に入ったのも、そういったことに関する知識はあるだろうと狙った
ことと、−−−さんが力を見ても驚かなかったから。
『ここなら、大丈夫』、そう思えたんだと思う。

 まぁ、実際のところ。過去におんなじ力を持った人が居たかとかそういうこ
としかわかっていないけれど。
原理を知れば、何か今までと違うことができるんじゃないかと思っている。

「うし……今日も頑張りますか」

 自分がチカラを持った意味を見つけるために。

優一の部活動
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「こんにちはー」

 挨拶をして、部室に入る。
……どうやら今日はまだ、誰も来ていない様だ。

「さて、と……」

 優一は、超能力関連の本、記録が置いてある本棚の前に行きざーっと取り出
して読み漁る。

「……」

 黙々と、読み漁った後は記録用紙を持って実習室に向かう。

「ふぅ……」

 優一の能力は、ありふれたものではない。
まして、超能力なんていう才能前提のものならばなおさらだ。
毎日、調べてはいるもののいまいち理解できたものではないし。
仕方が無いので、自分で実践してその感触などをメモしてためておいて調べよ
う、などと思っている。
観測者、分析者、被験者、すべて自分の奇異な実験。
先輩が作った観測機なるものが完成してればもうちょっといろいろとできるの
かもしれないけれど。
とりあえずは、創意工夫で我慢。
いろいろな実験の結果をためておけば後で役に立つかもしれないし。

「……風を従え、渦となし……渦を放ちて、突風を起さん……」

 実験の結果、超能力といいながらも呪文を唱えるのは効果的な模様。
なんだかんだ言ってイメージのしやすさが違う。
風を起こしてしばらくすると、優一は今の状況をあらかじめ作っておいたチェ
ックシートに書き記す。

「ふぅ……一度戻ろうかな……」

 こんな感じの部活動を続けている。

時系列
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 2006年5月

解説
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 オカルト研究会に入った理由と、その後。

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