[KATARIBE 29878] [HA06N] 小説『だーれだ』

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Date: Wed, 3 May 2006 16:32:53 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29878] [HA06N] 小説『だーれだ』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年05月03日:16時32分52秒
Sub:[HA06N]小説『だーれだ』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーる@わーいやすみー です。
というわけで、話です。

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小説『だーれだ』
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登場人物
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 軽部片帆(かるべ・かたほ) 
    :毒舌大学生。相羽真帆の妹。相当のシスコン。
 橋本朱敏(はしもと・あけとし)
    :ワーウルフな大学生。地雷踏み。ジャニスガレージでアルバイト中。
 由良木空帆(ゆらき・あきほ)
    :ほわほわーとした高校生。ジャニスガレージでバイト中。

本文
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「えー、それはわかりますよぉ」

 扉を潜った途端、高い声が聞こえた。


 ジャニスガレージの朝は、そこまで早くない。
 よって朝一番、といっても、早めに来るのに苦労する時間でもない。朱敏も
時間通りに来ているのだが、どうやら後の二人はもっと早めに来たようだ。店
長も一緒にレジの前に固まって、なにやら話していた……のが。
「?」
 朱敏が入ってきた途端、ぴたっと止まった。

「なに、何の話?」
「え、あの……」
「関係ない話」
 口ごもった空帆の代わりに、一撃で答えたのは片帆である。すぱーんと言い
切ると、じゃ、と、店長に一礼すると、空帆を促して休憩室に入る。何だよ一
体、と朱敏はぶつくさ言ったが、そこはそれ、何事も気にしないのが長所でも
あり短所でもある。すぐに忘れて自分も休憩室に入った。


「今日は空帆ちゃんが一階だよね」
「はい、そうですー」
 
 荷物を置いて、上着をぬいで、制服代わりのエプロンをして。
「あーと、忘れてた」
 慌てて上着のポケットを探っている朱敏の後ろから。

「だーれだ」

 ひんやりとした手が、目を抑える。と同時に、お約束の言葉。
 それはそれは可愛らしい声だった。
 
「んあ……」
 それでもあまり迷うことなく、朱敏は答える。
「空帆ちゃん?」

 一瞬の間。
 そして。

「あうー」
「ほらだから、人間の時には、鼻が効かないって言ったじゃないすか」
 ぱっと手を離した相手は、それこそいつもの口調でざかざかと喋る。
「え、片帆さん?」
「はい、店長さん、空帆ちゃん、後でジュース一本ずつ」
「あう、わかりました……」
「……判った、バイト終わる時にね」

 あーあ、と、一階の仕事の二人が、がっくりと肩を落として部屋から出てゆ
く。

「……何一体?」
「うん、橋本君が判らないほうに、ジュース賭けてましてね」
 本当に珍しくも、片帆は機嫌よく答える。
「空帆ちゃんと店長は、匂いで判る筈だ、一応人狼なんだから、と言ってたん
だけど、そんな油断をしない人狼じゃないのはよく判ってたから」
「いやー鼻より直感つーか、こりゃ空帆ちゃんだろーと」
「ああ、じゃあ、直感があてにならない人狼ってのも当たってたわけだ」
 上機嫌で言う台詞としては相当ひどいが、
「まあ、うーん、確かに」 
 返すほうも少しは否定しろよというか……
「さんきゅ、ジュース二本得した」
 とりあえず、ジュース二本でほこほこしている辺り、安上がり至極な感があ
るわけだが……

「……あ」 
 ふ、と片帆が真顔になった。きっと朱敏を見据える。
「ジュースあげないからね」 
「ちぇー」 
「言うんじゃないかなーと思ったんだよね」

 あーあ、という顔の朱敏と。
 得意満面な片帆と。

 ……それ先読みしてもちっとも偉くない内容なんだが、と、ツッコミを入れ
る人員が不足していたのは、良いのか悪いのか微妙なところである。

「さて、あと5分だ」
 エプロンをつけて、休憩室を出て。
「さーてお仕事だ」

 ジュースだジュースだ、と、楽しそうに片帆が出てゆく。
 何となく釈然としない顔で、朱敏が続く。

 ジャニスガレージでの、ある日のことである。

時系列
------
 2006年4月ごろ。

解説
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 某お題から、ひょいと思いついた風景。
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 てなもんです。
 ではでは。
 
 


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