[KATARIBE 29853] [HA06N] 小説『新勧』

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Date: Thu, 13 Apr 2006 01:16:29 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29853] [HA06N] 小説『新勧』
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ふきら@冬眠中です。
何となく新入生歓迎の光景。

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小説『新勧』
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登場人物
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 高瀬夕樹(たかせ・ゆうき):http://kataribe.com/HA/06/C/0581/
  高校生で歌よみ。創作部所属。

本編
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 夕樹は部室で椅子に腰掛けて、ぼんやりとドアを眺めていた。
 ドアはいつもと違って開けっぱなしにしてあり、廊下側には「創作部 展示
会開催中」と書かれた模造紙が貼ってある。新入生の勧誘活動の一環であっ
た。今、部室にいるのは夕樹一人。他の部員は宣伝のために構内を回ってい
る。
 新年度が始まって一週間が経とうとしていた。クラス替えがあり隣には今ま
でとは違う顔がある。新しい教科書が自分の手元にあり、廊下で新入生を見か
ける。
 時々、同じ学校でありながら、別の学校にいるような気がする。そんなとき
は何も変わっていない天井を見て、「ああ、いつもの学校だ」と安堵したりも
する。
 窓は開けられていて、時折暖かい風が部屋を通っていく。
 夕樹はグラウンドに目をやり、そして、ふと、視線を感じて体を反転させて
ドアの方に向いた。
「……あ」
 ドアの陰からこちらを覗いている生徒と目が合い夕樹は声を上げた。驚いた
のか、その生徒はひゅっと顔を隠してしまう。しばらくドアを見つめていたが
その生徒が再び姿を見せることはなかった。
「おどかしてしちゃったか」
 溜め息をついて、夕樹は立ち上がった。
 展示してあるものは細工品から訳の分からないものまで様々である。一度、
見学に来た新入生に「何をする部ですか?」と聞かれて、いつものように「と
りあえず、何かを作る部だ」と答えたら首をかしげられた。確かに今更ではあ
るがよく分からない返答だ。
「でもまあ、やっぱり変な部、か」
 部室の隅の方で異様なオーラを放っている物体を見て、苦笑を浮かべた。蒼
雅先輩の作品群である。最初は周囲が展示を反対したが、それでも一応部の活
動なんだからということで置かれている。
 その対角側にはあるのは開かれた一冊のノート。夕樹の作品である。他の作
品と比べると何というか地味ではある。
 夕樹はあらためて部室を見回してみた。何だかいつもの部の雰囲気がそのま
ま再現されているような気がして、おかしくなる。
「あの……見学してもいいですか?」
 ドアの方から声がして、夕樹はそちらの方を見た。立っているのはいかにも
といった感じの新入生。
「どうぞどうぞ。ようこそ創作部へ」
 そう言って夕樹はその子を中に招き入れた。
 風が吹いて、夕樹のノートがペラペラと音を立てた。

時系列と舞台
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2006年4月。創作部部室。

解説
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さて、新入生は来るのでしょうか

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