[KATARIBE 29831] [HA06N] 小説『爺さんにとってはよくある解決方法』

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Date: Thu, 16 Mar 2006 23:59:44 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29831] [HA06N] 小説『爺さんにとってはよくある解決方法』
To: kataribe-ml@trpg.net
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
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ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
お題は
23:04 <Role> rg[hukiwrite]HA06event: 半透明のきらきらした何かに遭遇する
 ですわ☆

でした。
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小説『爺さんにとってはよくある解決方法』
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登場人物
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 火川猛芳(ひかわ・たけよし):http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
  帆川神社の宮司。

本編
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 猛芳は薄暗くなった道をゆっくりと歩いていた。吹いてくる風は心地よい程
度に冷たく、どこかで咲いている花の香りを乗せている。
 確実に春が近づいていた。
「桜が咲くのも時間の問題じゃの」
 猛芳は呟いて、ふと思った。どうして帆川神社には桜の樹がないのか、と。
あればそれなりに人が来るだろうに。そう考えると今からでも植えようかとい
う気にもなる。
「……まあ、春日さんの桜に勝てるわけがないか」
 そのような結論にいたって、苦笑いを浮かべる。
 道行く知り合いに挨拶をして、角を曲がった。水銀灯に照らされた神社の入
り口が見える。
「む?」
 その石段の前に何やら半透明のものが漂っている。それは水銀灯の明かりを
きらきらと反射させていた。
 猛芳は目を凝らしながらゆっくりと近づいていく。輪郭がはっきりとしてい
るわけではないが、球体に近い形をしているのは分かる。
「球体、というかクラゲじゃな」
 伸縮を繰り返しているそれは確かにそのようにも見える。
 猛芳は人差し指でそれを突こうとした。
 表面は薄い膜のようなもので覆われているように軽い抵抗を感じた。しか
し、少し力を加えただけで指がめりこんでしまう。少し粘りけがある何かがそ
の指を包み、猛芳は慌てて指を引き抜いた。
「一体、何なんじゃ?」
 突いた人差し指を見てみるが、特に何かくっついてはいない。目の前のクラ
ゲのようなものは突かれたことも気にしていないように相変わらずふわふわと
猛芳の目の前を漂っている。
 こちらがちょっかいをかけても何も反応を示さない辺り、害はなさそうであ
る。
「こんなものに入り口を塞がれると、人が来ないではないか」
 普通の人がこのクラゲのようなものに気付くかどうかはさておきとして、入
り口にこんなものがあると分かった以上放置しておくのは何だか気持ちが悪
い。
 猛芳はとりあえず、脇にどけようと両手でクラゲのようなものを押そうとし
た。
 しかし、先ほどと同じように少しだけ抵抗を感じ、両手はクラゲのようなも
のにめり込むだけで、それはその場から全然動かない。
「むぅ」
 両手を引き抜き、猛芳は難しい顔をした。
「……暴力は好かんが仕方あるまい」
 知り合いに聞かれると、文句を言われそうな言葉を呟いて、猛芳は右の拳を
構えた。
 ふっと軽く息を吐くと同時にストレートを放つ。
 拳はクラゲのようなものに当たり、衝撃を与える……はずであった。
「ぬわっ」
 しかし、放たれた拳は先ほどと同じようにクラゲのようなものをすり抜けて
しまい、猛芳はバランスを崩す。
 体がクラゲのようなものにぶつかるのをすんでの所でかわして、たたらを踏
んだ。
「おのれ……気合いが足りなんだか」
 猛芳は再び構えると、右手に精神を集中させた。夕暮れの中でその拳が微か
に光を帯びる。
「これなら……どうじゃっ」
 再び放つ右ストレート。
 光が直線の軌跡を描き、クラゲのようなものにのびる。
 今度はすり抜けることなく、パシンと乾いた音を立ててそれに当たった。
 クラゲのようなものは風船のように弾け、破片がきらきらと光りながら地面
に落ちていき、すっと消えていった。
「我ながらスマートな解決ではないのう」
 消えてしまったクラゲのようなものに向かって両手をあわせ、一礼をすると
猛芳は石段を上がっていった。

時系列と舞台
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2006年3月。

解説
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よい子は拳で解決しようとしてはいけません。

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