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Date: Wed, 15 Mar 2006 23:53:03 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29829] [HA06N] 小説『ヤモリの贈り物』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200603151453.AA00195@hikaru-h8akl379.blue.ocn.ne.jp>
X-Mail-Count: 29829
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29800/29829.html
ふきらです。
三十分一本勝負（http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min）。
お題は
22:57 <Role> rg[hukiwrite]HA06event: 子ヤモリが錆びたクリップをくれた
ですわ☆
でした。
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小説『ヤモリの贈り物』
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登場人物
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火川猛芳（ひかわ・たけよし）：http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
帆川神社の宮司。
本編
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猛芳は神社の本宮の廊下に胡座をかいていた。顔は下の方を向いていて、そ
の視線の先で小さなヤモリが猛芳の顔を見つめている。
ヤモリの前足の下には同じくらいの横幅の目玉クリップがある。それは端の
方がさびていて、全体的にくすんだ色をしていた。
ヤモリは猛芳の顔を見て首を捻ると、クリップを前に差しだした。
「一体何がしたいんじゃ」
そう言って猛芳は右手の人差し指をクリップに乗せて、ヤモリの方に押し返
す。ひっくり返りそうになったヤモリは慌ててクリップから前足を離して脇に
退いた。
猛芳はふふん、と軽く笑いクリップから指を離した。
ヤモリはクリップに前足を乗せると、再び猛芳の方に押し出した。そして、
猛芳の顔を見上げて首をかしげる。
「……うぬ」
もう一度、猛芳はクリップをヤモリの方へと押し出してみる。ヤモリも懲り
ずに猛芳の方に押し返す。
「どうしても、ワシに渡したいようじゃな」
溜め息をついて、猛芳はクリップを取り上げた。ヤモリは猛芳を見て舌をチ
ロチロと出し入れしている。
クリップはバネの部分もさびていて力を入れても中々口が開かない。
「挟めないクリップに用はないな」
猛芳はクリップを持つ手にさらに力を込めた。やっと少しだけ隙間ができ
る。そのままヤモリの顔の前に差しだした。
ヤモリがびくっと体を震わせて数歩後ろに下がる。
「こいつ、本当にワシにこのクリップを渡したいのかのう」
独り言めいた口調で猛芳は言うと、クリップをヤモリの前に置いてみた。
ヤモリは目の前のクリップを見て、首を捻るとそれに前足を乗せ、さっきと
同じように猛芳の方へとクリップを押し出した。
「……どうやら、本当らしい」
苦笑してクリップをヤモリから受け取る。目の前に持ってきてクルクルと回
しながら変わったところがないか見てみたが、錆びている以外はいたって普通
のクリップだった。
その様子を見て満足したのか、ヤモリは猛芳の顔を見上げて頭を上下させる
とクルリと反対方向を向いて、あっという間にその場を離れていった。
「満足して帰って行ったのは良いのじゃが」
ヤモリが行った方向を見て、それから再び手にしたクリップに目をやる。
「これ、どうしろっていうんじゃ……」
太陽にかざしてクルクルと回してみる。クリップは光を反射することなく
回っていた。
時系列と舞台
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2006年３月。
解説
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相変わらず落ちはない。
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