[KATARIBE 29824] [HA06P] 『ロマンス』

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Date: Sun, 12 Mar 2006 01:18:09 +0900 (JST)
From: ごんべ  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29824] [HA06P] 『ロマンス』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年03月12日:01時18分08秒
Sub:[HA06P] 『ロマンス』:
From:ごんべ


 ごんべです。
 本編を進めようと言いつつ、ちと寄り道で、エピソードに着手。

 雄人さんと愛菜美ちゃんをお借りしていますので、るなさん、MOTOIさん、
チェックをお願いします。

 えーと、エピソード、ですから。(詳細は番組の最後に(ぉぃ))


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エピソード『ロマンス』
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本編
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 多くの人並みが行き交う土曜の昼下がりの近鉄吹利駅前。
 そこに、人待ち顔に道行く人を見送る珊瑚の姿。

 その目が黒山の向こうに雄人の姿を見つけて、ぱっとほころぶ。
 高く伸ばされ華やかに左右に踊る珊瑚の右手に、雄人も吸い寄せられるよう
に小走りに駆け寄ってきた。

「ごめん、待ったかい?」
「いいえ、私も今来たところですから」

 上気したように頬をピンクに染め、珊瑚は雄人を見上げて微笑んだ。
 また走ってきたのかも知れない。
 あるいは、……心なしか、目が潤んでいるようにも見える。

「……じゃ、じゃあ行こうか」
「はいっ」

 先に立って歩き始める雄人に、続く珊瑚。
 す、と雄人の傍らに寄り添いつつ、横から雄人の顔を覗き込む。

「……どうしたの?」
「なんでもありません(ふふ)」
「…………あの、手、つなぐ?」
「はいっ」

 そっと差し伸べられた左腕に元気よく自分の両腕を絡ませ、珊瑚は雄人の肩
にぴったりと頭をもたせかけた。

「……(苦笑)」


 二人が入ったのは流行りのファンタジー映画。
 封切り後も熱狂の衰えない場内に最後の席を見つけて、二人は並んで座る。

 視界一杯に幻想世界が広がり、本物としか見えぬ仮想生物や魔法が飛び交う。
 主人公の少年少女を追い詰める罠がじわじわと絞られ、物語が佳境に迫る。

 ドラゴンが巨大な口を開け近づいた時、きゅ、と細い指が雄人の手を握った。
 ふと雄人が目をやると、それは珊瑚の手だった。

「……珊瑚ちゃん?」

 珊瑚はスクリーンを見つめたまま、ただ雄人とつなぐその手に力を込めた。


 夜になり、夕闇に代わって星々の踊る漆黒の空が、舞台を覆う。
 映画を観た後食事をしながら感想を語り合った雄人と珊瑚は、連れだって夜
の街をそぞろ歩いていた。
 街の灯りが瞬き、鼓動のように心を急かす。
 いつしか二人が交わす言葉も少なくなっていく。

 どちらが言うともなく、二人の歩みが止まった。
 確かめるように、互いの姿を探す二人。
 そこにも、まっすぐに自分を見つめる愛しい人の目が。

 引き寄せられるように、唇がそっと重なる。
 柔らかい、しかし電気のような感触が走って、それ以外の感覚が消え失せた。
 雄人の身体にしがみつくように腕を回し、珊瑚が唇を押しつけてくる。
 二人の息づかいが聞こえる。
 珊瑚を抱きしめる手に力がこもる。

「……ここでは、イヤです」

 唇を離した珊瑚は小さくつぶやいた。

「今夜は、ずっと一緒にいてくれますか?」
「……いいとも」

 二人の視線が、熱く絡み合う。



  ………………



 陽      :「……男と女が付き合ったら、だいたいこんな感じになる
        :んじゃないのか」
 珊瑚     :「その人の性格や、親密度、二人の間の関係のスタンスに
        :も依るわね。でもそうね……仮にもし、そこまでの間柄に
        :行き着いてしまったとしたら、私が人間でないところが
        :見えてしまうことになるのね……どうしたものかしら」
        :(うーむ)
 愛菜美    :「陽君、テレビドラマの見過ぎっ! 珊瑚ちゃんもっ、
        :問題が、ち、ちがっ……」

 真っ赤になって一人両手をバタバタさせている愛菜美。
 常識人はつらい。


(終)


時系列
------

 2005年第1四半期とかそのへん。


登場人物
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霞原珊瑚(かすみはら・さんご) :おとめのようなもの。
桐生雄人(きりゅう・ゆうと)  :彼氏のようなもの。
霞原陽(かすみはら・よう)   :隠れ耳年増。
榎愛菜美(えのき・まなみ)   :今回の(だけか?)苦労人。


解説
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 心配してる点と現実の間に埋まりそうもないズレがある、珊瑚の杞憂の話。

 珊瑚、お前にゃ無理だ、いろんな意味で。


$$

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 一応「エピソード」としてありますが、時系列上いつ頃にアサインできるか
わからないので、その意味でも、場合によってはなかったこと=Jになるかも。

 というわけで、両者ノリノリの場合の想定デートを書いてみたわけですが、
実際にはそうはならないのがネタのあるべき姿というもの。実際どうなるかは
乞うご期待。(ぉぃ


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ごんべ
gombe @ gombe.org



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