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Date: Fri, 10 Mar 2006 00:35:42 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29819] [HA06N] 小説『雑巾がけ』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負（http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min）。
お題は
23:51 <Role> rg[hukiwrite]HA06event: 子猫(雄)が使い古しのぞうきんをくれ
た ですわ☆
でした。かなり短め。
久志さん、毎度毎度ありがとうございます。
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小説『雑巾がけ』
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登場人物
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火川猛芳（ひかわ・たけよし）：http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
帆川神社の宮司。
本編
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猛芳は神社の本宮の廊下で仁王立ちになっていた。
「……おのれ。猫のくせにわしに指図する気か」
顔は下を向いていて、その視線の先にいるのは一匹の仔猫。口にどこから
引っ張り出してきたのか雑巾をくわえている。
「みゅー」
鳴き声を上げると同時にくわえていた雑巾が落ちた。仔猫はもう一度くわえ
直すと、猛芳のはいている袴の裾に前足を引っかける。
「こらこら」
猛芳はしゃがんで、仔猫を両手で抱え上げた。顔の高さまで持ち上げられた
仔猫は猛芳の目の前で「みー」と鳴いた。くわえていた雑巾が猛芳の腕の上に
落ちる。猛芳は、やれやれ、と溜め息をついて仔猫の顔を見た。
「そこまで言うんじゃったら、お前さんの言う通り雑巾がけでもしてやるか
の」
そう言って猛芳は仔猫を床に下ろすと、雑巾を濡らしに行った。
仔猫はしばらくの間、猛芳が行った方を見つめていたが、やがて廊下をちょ
こちょこと歩き出した。
３月に入り、暖かい日は本当に春らしく気持ちの良い陽気に包まれるように
なっている。仔猫は廊下にできている日だまりを見つけると、そこに腰を下ろ
した。目を細めて顔を撫でて満足げに「みゃあ」と鳴く。
雑巾を濡らしてきた猛芳は廊下でじっとしている仔猫を一瞥して、端に行き
「よし」と気合いを入れて雑巾がけを始めた。
両手を雑巾の上に置き、端から端まで一気に駆け抜ける。一往復する毎に体
を起こし、溜め息をついて腰を叩き、また勢いよく駆けていく。
仔猫はその様子をじっと目で追っていたが、陽気に誘われて大きなあくびを
したかと思うと、コクリコクリとうたた寝を始めた。
境内は相変わらず静かで、猛芳の足音だけが響いている。
「やれやれ。久しぶりにやると腰にくるわい」
雑巾がけを終えた猛芳が仔猫の下にやってくる。そして、寝ている姿を見て
苦笑した。
「なんじゃ、人に雑巾がけをさせておいて自分は昼寝か。良い身分じゃのう」
仔猫の側に静かに腰を下ろすと、眠っている猫を起こさないようにそっと頭
を撫でた。
「まあ、今日は暖かいしな」
仔猫が目を閉じたままあくびを一つ。つられて猛芳も大きなあくびをした。
時系列と舞台
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2006年３月。
解説
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平和なひととき。そして、爺さん連敗中。
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