[KATARIBE 29816] [HA06N] 小説『その手にはめて(前編)』

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Date: Thu, 9 Mar 2006 00:44:24 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29816] [HA06N] 小説『その手にはめて(前編)』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年03月09日:00時44分24秒
Sub:[HA06N]小説『その手にはめて(前編)』:
From:久志


 久志です。
リングを君に、なんとか終わらせたいところ。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『その手にはめて(前編)』
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登場キャラクター 
---------------- 
 本宮和久(もとみや・かずひさ)
     :吹利県生活安全課巡査。生真面目さん。あだ名は豆柴。

当直明け
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 目をニ三瞬かせる、晴れた日差しが少しまぶしい。
 当直勤務明け、あくびを堪えながら軽く肩をまわして凝りをほぐす。明け方
に交代で少し仮眠をとったものの、しみついた疲れはなかなか取れない。
 腕時計の時間を確認して、ひとつ息をつく。今から立ち寄る頃には丁度開店
時間。以前顔を出した漆リングの店の店員さんから、注文したリングが届いた
と連絡があったのは昨日。別段、急いで店に寄らなくても尊さんの誕生日まで
時間はあるのだけど、無性に気が急いて仕方ない。

 店員さんに薦められるまま買う羽目になった、表に柄のあるノーマルリング
と内側に柄のあるシークレットリング。意味深というか、こっそりお揃いの指
輪を買ってたなんて知られたら変に思われたりしないか、なんて妙なことばか
り考えてる。頭を軽く振ってこめかみを指先で軽くかく。相変わらずというか、
いつも妙に考えを回しすぎてる。

 もっと自信持ってもいいんじゃないか、と。何度となく史兄に言われた言葉。
 どうして自分に自信が持てないのか。 
 昔の学生時代、自分はしっかりしていると思っていた。幼馴染でいつも一緒
だったどこか子供っぽくて能天気なフラナと中学から一緒になった無口で無愛
想で一風変わっていた佐古田。いつも三人一緒で何かと心配な二人の世話を焼
いていて、自分がしっかりした奴で二人の面倒を見ていると思い込んでいた。
でも実際はそうじゃなくて、本当は一番頼りないのは自分で二人の面倒を見て
いるつもりで、今までずっと二人に支えていてもらっていた。
 でも今はフラナも佐古田もそれぞれの道に進んで、自分一人になって。
 今の自分は、お世辞にもしっかりしているとは言えない。

 そんな自分に、尊さんは頼ってくれるだろうか。
 なんだかそんなことばっかり考えている。

お店にて
--------

「いらっしゃいませ」 
 店に足を踏み入れた自分の顔を見て、カウンターの奥で売り場のお姉さんが
小さく笑って手を上げた。
「いらっしゃい、先日のお兄さんね」
「こんにちは、あの」
「ちゃんと届いてるわよ。ちょっと待ってね」
 言うが早いか、店員のお姉さんがカウンターの下の引き出しから包み紙を取
り出した。奇麗に包装された淡いオレンジの箱がカウンターに置かれる。
「お揃いのノーマルリングとシークレットリング、こちらになりますね」
「はい」
 カウンターに置かれた包みはひとつ。
 えーと、これって一緒に包装してある、とか。
「あの」
「ん、どうしたの?」
「ええと、すみません……包装を別にしてもらえませんか」
「あら。せっかく綺麗に梱包したのに?」 
 なんというか、ことんと小首を傾げて口元にほのかに意味ありげな笑みを浮
かべてる店員さん。なんか、面白がってないかな、この人……
「い、いえ、その、内緒なんで」 
「そうなの、残念ね……」
 小さく息をつくと、おもむろにカウンターの上におかれた包みを音を立てて
破き始めた。
「え!?あのっ」
 びりびりと破いた包み紙の下、個別包装された二つの箱が出てくる。
「はい♪こちらがノーマルリング、水色のほうがシークレットリングね」
 片方が淡いピンク、もう片方が淡い水色の包み紙。
 思わず顔をあげるとニコニコと楽しそうに笑う店員さん。
「……別にしてあるんじゃないですかー!」 
「あはは、そんなに怒らないの。ほら、メッセージカードおまけにつけてあげ
るから」 
「……う」 
 ばっと扇のようにメッセージカードを広げて見せてから、小さな紙の手提げ
袋に包装した二つの箱とメッセージカードを入れてこちらに差し出した。
「はい、がんばってね」 
「はい……ありがとうございます」 
 がんばってって言われても、いや、頑張らないといけないんだけど。
 なんだか今から顔が熱くなってきた。
「ありがとうございました」
「まいどあり〜」
 手を振る店員さんに深々と頭を下げて、店を後にした。

 メッセージカード……何て書こう。

時系列 
------ 
 2006年1月下旬。尊さんの誕生日。
解説 
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 指輪を手に、メッセージカードに頭を悩ませる豆柴。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。



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