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Date: Wed, 08 Mar 2006 19:52:03 +0900
From: 葵一 <gandalf@petmail.net>
Subject: [KATARIBE 29814] [HA06P] エピソード『Valentine's Day 協奏曲(後編)』
To: ML <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <20060308192410.11A4.GANDALF@petmail.net>
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Web: http://kataribe.com/HA/06/P/
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こんにちは葵でっす。
えっと、後編でっす(汗
と、とりあえずチェックよろしゅー
>ひさにゃー、きしとん、ハリにゃ、いーしゃ
ではっ(脱兎
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[HA06P] エピソード:『Valentine's Day 協奏曲(後編)』
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登場人物
--------
如月 尊(きさらぎ・みこと):思い込んだらまっしぐらな外見十六、中身
三十路のお嬢さん(?)。
ところで退魔師の本業はどうした。
http://kataribe.com/HA/06/C/0069/
本宮和久(もとみや・かずひさ):県警生活安全勤務の好青年。兄二人とは違
い、とっても奥手。 尊と微妙に良い雰囲
気なんですが……。
http://kataribe.com/HA/06/C/0073/
如月 夾(きさらぎ・きょう):如月家に同居するFLOWER SHOP Mikoのマス
コット。 お姉ちゃん思いのよい子なのだが
優柔不断で煮え切らないお姉ちゃんとそのお
相手に偶に過激になることも。
http://kataribe.com/HA/06/C/0514/
奈良井・トレース・知恵
(ならい・とれーす・ちえ):如月家に下宿する留学生……なのだが。
そのブッ飛んでるけど、適切な言動と行動は
一体誰の教育なのか。謎の少女。
http://kataribe.com/HA/06/C/0510/
軽部片帆(かるべ・かたほ) :違和感無き毒舌女子大生。ひょんな事から如
月家に出入りするようになり、豆柴&尊の中
を後ろから尻を蹴っ飛ばすように応援中。
http://kataribe.com/HA/06/C/0487/
決戦は14日
------------
14日夜。
夾ちゃん、知恵ちゃんに片帆さんも交えたバレンタイン。
お互いにチョコを送りあうのもなんなので、みんなで囲んだチョコフォン
デュ。
わいわいお喋りして、結局、なんだかんだで片帆さんは泊まる事になって。
お喋りの間、夾ちゃんの
「おねえちゃん、おにいちゃんにチョコ持って行かないですか?」
とか。
片帆さんの
「……(にっこり)」
と無言でプレッシャーをかける謎な微笑みとか。
周囲の目をことごとく受け流して、夜。
御風呂入ってみんな自分の部屋へ引き取った頃。
そろり、そろりと廊下を進む影が一つ。
尊 :(そーっと知恵ちゃんの部屋のドアを開けて覗き込む)
知恵 :「すーすー(寝息)」
ベッドの上でもピシリと真直ぐな姿勢で。
すやすや寝ている知恵ちゃん。
尊 :「ん、よく寝てる(くす)」
でもって。
尊 :(こっそり夾ちゃんの部屋のふすまを開けて覗き込む)
夾 :「すやすや……(寝息)」
布団かぶって、にゃんこのように丸くなってる夾ちゃん。
さらに。
客間のドアをそーっと開けると、布団をかぶってる片帆さん。
尊 :「よっし、三人とも寝入ったかな……」
自室に戻って手早く寝間着から私服に着替え始める。
床に散らばる衣装群。
夕食後、部屋に篭ったのは衣装チョイスの為だったようで。
尊 :「どうしよう、ジーンズもなぁ……せっかくの14日だし」
スリムジーンズを持ち上げて見るけど。
気にいらないのか、それとも。
尊 :「うーん(横目でちらちら椅子の上においてあるスカート
:を見る)」
普段よりかなり短め、膝上10cmくらいの紅いミニスカート。
まだ一度も身に着けたことがない手持ちの中で唯一のミニ。
決心したのか、えいやっとジーンズほっぽってミニスカートで姿見の前に
立って見る。
尊 :「み、短い……かな(赤面)えっと確か……」
クローゼットに頭を突っ込んでごそごそと。
取り出したのは黒いニーソックス。
尊 :「うん、これなら……」
本人は『肌の露出が少なくなった』と思っているようですが。
違う意味での破壊力増大。
さらにクリームホワイトのタートルネックセーターを合わせてポーズをとって
みる。
尊 :「よっし、これで……このくらい……いいよね(くすくす
:くす)」
ちょっと寒そうですが、どっからどう見ても、気合の入りまくったチョコ
レート作戦仕様の服装。
そんな格好で抜き足、差し足、忍び足。
そーっと玄関まで行って。
尊 :「(靴履いて)……あ(はたと気付く)」
おやおや、衣装選びに熱中して肝心のチョコとアイスの入った保冷バッグを
忘れたようです。
片帆 :「尊さん忘れ物です(クーラーバッグを持ってる)」
夾 :「寒いから風邪を引かないように気をつけるです(マフ
:ラーを持ってる)」
知恵 :「……(火打ち石と火打ち金を持ってる)」
尊 :「さんきゅー助かっ……」
夾 :「……(にこにこ)」
知恵 :「……(にっこり)」
片帆 :「……(微笑)」
にっこりと、パジャマの上にドテラを羽織った知恵ちゃんと夾ちゃん。
そして片帆さん。
思わず、ずさっ、と、玄関ドアに張り付いちゃったり。
尊 :「い、いつ、から起きてたのかなー(滝汗)」
知恵 :「尊さんの『ジーンズもなぁ……』からです」
夾 :「はいです(にっこり)」
律儀に尊の声色をそっくり真似てみせる知恵ちゃん。
結構よく似てます。
尊 :「あぅぅ(赤面)」
それって全部見てたって事じゃん、とは突っ込みかえせず。
と。
SE:時計がボーンと11時を打つ。
片帆 :「さ、時間がありません(尊にクーラーバック押し付ける)」
夾 :「さーおねえちゃん、張り切っていってくるのですっ!
:(尊にマフラー巻き巻き)」
知恵 :「いってらっしゃい(かっちかっち)」
いや、出入りじゃないんですから。
尊 :「う、うん(まだ赤面)行ってくる……ね」
知恵 :「ぐっどらっく!です」
夾 :「がんばるですよー」
片帆 :「さあ急いで急いで」
にっこり笑って親指をピッとたてる知恵ちゃんと。
そのままだと万歳三唱しかねない夾ちゃん。
ぐずぐずしてたら背中を蹴飛ばしそうな片帆さんを後に。
一路、目指すは吹利県警。
吹利県警二階 宿直室 11:25
--------------------------
シン、と静まり返る庁舎内。
緊急対応に備えて当直が残る事になっていて、今日は豆柴こと本宮君の番。
和久 :「ふぅ(ちらと時計見て)よりによって14日に当直とは
:なぁ」
数日前の電話のやり取りが思い出される。
和久 :「食べたかったな……」
4畳くらいの畳敷きの部屋の中にチャンネルがダイヤル式の年期の入ったテ
レビとちゃぶ台。 それに簡易コンロと流し台。
ちゃぶ台の上には大きな紙袋に入ったチョコレートと似顔絵、それにメッ
セージカード。
拙い筆致でも一生懸命描いたのが伝わってくる『がんばれまめしばん!!』
の応援メッセージ付きクレヨン画とチョコレート。
まだ字の描けない子供の変わりに母親が代筆したであろう『息子に頼まれ代
筆します。「マメシバンへ 頑張ってウルフ将軍をやっつけてください」』と
綺麗な字で書かれたメッセージ付きチョコレート。
他には『ウルフ将軍と御幸せに(はーとまーく)』とか『ピレネー司令とい
つまでも……』とか、謎のメッセージがついたチョコとか。
コピック、パステル、水彩、油彩を駆使して描かれた、ウルフ将軍とマメシ
バンが何故かうっとり見詰め合っちゃってるイラストとか。
若干、頭痛を感じさせる品も混ざっているものの、おおむね子供達からの熱
い応援のこもったチョコ。
が。
和久 :「……尊さんのチョコ」
応援チョコは嬉しいものの。
やっぱり一番に食べたいのは。
赤ん坊 :「ほぎゃーっほぎゃーっ(じたじた)」
と、突然響き渡る赤ん坊の泣き声。
和久 :「っとと……おーい、泣き止んでくれー」
どーゆー訳か和久君の腕の中で泣き叫ぶ赤ん坊。
和久 :「弱ったなぁ(困惑)」
泣き叫ぶ赤ん坊に弱りきる和久君。
事は数時間程前に遡ります。
吹利県警一階 生活安全課 21:00
-------------------------------
生活安全課のデスクで本日の日報をまじめに書いてる本宮巡査。
SE:Tel..Tel..Tel..(内線呼び出し)
和久 :「はい、生活安全課、本宮です」
刑事課長 :「ん、本宮君か、たしか今日の宿直は君だったな?」
和久 :「はぁ……そうですが」
刑事課長 :「ちょっと頼みたい事があるんでな、一係までちっと来て
:くれんか」
和久 :「了解しました」
TELを切って。
和久 :「なんだろう……」
で。
和久 :「生活安全課、本宮巡査、参りましたっ(ぴしっ)」
直属ではないとはいえ、課長直々の呼び出し。
緊張でカチカチになりながら敬礼。
刑事課長 :「ああ、忙しいところスマンな、で、頼みというのは他で
:もないこの子をしばらく預かってくれんか」
和久 :「は?(汗)」
刑事課長の腕の中ですやすや眠る赤ん坊。
薄いピンクのおくるみに包まれた、一歳に満たないであろう小さな小さな命。
和久 :「じ、自分がですか? この子は一体……」
刑事課長 :「いや、実はなこの子、誘拐事件の被害者でな」
和久 :「誘拐っ!?」
課長の口から飛び出した言葉に一瞬体が強張るが。
刑事課長 :「ああ、心配要らん、この子が此処にいるのでも解る様に
:幸いスピード解決してな……オマエさんの兄貴が大活躍
:だったよ(にやり)」
和久 :「え?」
刑事課長 :「事件の発生は奈良なんだが、奴さん吹利まで逃走してき
:て脅迫電話をかけたんだわ。 事もあろうにパトロール中
:の相羽と史の眼の前でな」
くっくっくっくと老練な課長の顔に浮かぶ楽しげな笑み。
話を聞いてみれば、史久&相羽コンビがパトロール中に助手席で赤ん坊が泣
き叫び、すぐそばの公衆電話から電話をかける男を見つけのだという。
で、職質してみれば。
刑事課長 :「まぁ、あいつ等に見つかったのが運の尽きだわな。 で、
:うちの連中は犯人の身柄の輸送と諸々の手続きで飛び回って
:るって訳だ」
和久 :「それでこの子は……」
刑事課長 :「ん、親御さんが現在奈良県警の担当者と共にこっちに向
:かってるらしい。 んでな、俺もこれから奈良県警に行か
:にゃならんし、親御さんが到着するまでしばらく預かって
:くれんか」
和久 :「は、はぁ……」
刑事課長 :「おっつけ誰か戻ると思うが、じゃ、しばらく頼む」
そっと渡される暖かい小さな包み。
そういえば、ちゃんと赤ん坊を抱くのは……初めてかもしれない。
吹利県警二階 宿直室 11:30
---------------------------
赤ん坊 :「ふぎゃっふぎゃっ(じたじた)」
和久 :「あー頼む、泣き止んでくれー(必死)うー弱ったなぁ……」
よしよし、と一生懸命ゆすったり、あやしてみたりするけれど。
馴れない抱き方に居心地悪いのか、手足をばたつかせて泣き叫ぶ赤ん坊。
と。
SE:コンッ
和久 :「ん? なんか今音が(見回す)」
SE:コンッ
赤ん坊の声に紛れそうだが、確かに響く音。
和久 :「外?」
カラリとガラス窓を開けて外を見回すと。
和久 :「みっ(汗)」
地上の駐車場で手を振る尊。
その気合の入った格好に思わず絶句する和久君。
でもそれ以前に。
尊 :「やっほー差し入れ持って来ちゃっ……」
腕の中の子供に気付いて尊の顔が引きつる。
和久 :「あ、いや、その、この子はっ(汗)」
その子は一体なに?と言うオーラを纏い下から見上げられて。
一瞬隠そうとも思ったけど、でも別に悪いことしてる訳じゃないしと思ったり
……わたわたわた。
尊 :「とりあえず……そっち行くから……下がって」
和久 :「え?」
ちょっと下がってスニーカー脱いで。
尊 :「はっ!(跳躍)」
軽い助走と共に音も無く夜空に舞う姿。
駐車場と建物の間に伸びた枝を踏み台にして、ふわりと窓に飛び込む。
瞬発力と跳躍力はさすが如月流継承者と言った所か。
尊 :「(しゅたっと着地)よっ……と」
和久 :「わっ(焦)」
でも、あんまりミニスカでそういう事はやらない方が。
尊 :「きゃっ(焦ってスカート押さえて)み……」
和久 :「見てませんっ(滝汗)」
尊 :「(赤面)…………(くす)」
問われる前に目をつぶってそっぽ向いてる和久君。
そんな正直さに悪いとは思ったけどつい笑っちゃったり。
赤ん坊 :「ほぎゃーっほぎゃーっ(じたじた)」
和久 :「ええと、いや、実はこの子は(おたおた)」
尊 :「もうっ! そんな抱き方しちゃダメじゃない、とりあえ
:ずこっちに貸してっ(受け取り)」
包みこむように頭を支え、優しく抱くが。
赤ん坊 :「ふぎゃっふぎゃっ(相変わらず泣き叫び)」
尊 :「あれ、変ね……」
抱いた赤ん坊がもぞもぞと尊の胸の辺りをまさぐって。
尊 :「ちょ、ちょっと……あ、もしかして」
赤ん坊の口元に指を持っていくと、あむっと咥えて一生懸命指を吸い出す。
尊 :「やっぱりおなか空いてるんだこの子、ミルクは?」
和久 :「(はっ)そういえば、もしかして夕方から何も口にして
:ないんじゃ……実はですね」
かくかくしかじか。
和久 :「そんな訳で、預かる事になったんです」
尊 :「じゃ、もうすぐお母さん達が来るんだ……でもそれまで
:お腹空かせたままってのも……そうだ」
手早く手近なメモに何事か書き付けて。
尊 :「和久君、今すぐコレに書いてある物買ってきてくれる?」
和久 :「え、いや、今当直中で……」
尊 :「この子とどっちが大事っ!?(憤然)」
和久 :「はいっ(条件反射で駆け出す)」
慌てて駆け出して。
……なんだか尻に敷かれてるなぁと何となく思ったり。
和久 :「買って来ましたっ(全力疾走したので息ぜいぜい)」
尊 :「ありがと、あと、お湯と水ある?」
和久 :「お湯ならストーブの上の薬缶に沸騰した奴が、水はそこ
:の流し使えます」
尊 :「OK、じゃぁちょっとの間この子をお願い」
赤ちゃんは再び和久君の許へ。
カチコチの腕に抱かれて居心地の悪さに除々にくしゃくしゃと崩れる顔。
和久 :「ああああああ(滝汗)」
赤ん坊 :「ほぎゃーっ(絶叫)」
尊 :「もう(苦笑)……ちょっとの間我慢してね」
手早く買い物袋から哺乳瓶出して薬缶の熱湯で消毒する。
消毒してる間に粉ミルクの缶を開けて哺乳瓶一本分を計りとって。
消毒した哺乳瓶に粉ミルクとお湯を注いで。
水道の水で適温まで冷ます。
尊 :「温度は……(頬に哺乳瓶を当て、手首の内側に一滴たら
:してみる)よし」
和久 :「手馴れて……ますねぇ」
そこらの新米ママなんぞ足元にも及ばないような手際のよさ。
尊 :「ん、子供の頃よく近所の子の子守してたからね(照)
:さーミルク上げましょうね(微笑)」
で。
和久 :「……(赤ん坊を抱いてミルクをあげてる)」
赤ん坊 :「……(無心にミルクを飲んでる)」
尊 :「……(ミルクを飲む赤ん坊と和久君眺めてる)」
なんとも穏やかで幸せな空気が。
よっぽどお腹が空いていたのか、多少居心地悪かろうと無心にミルクを飲む
赤ちゃん。
いつか自分も……とは、どっちが思った事か。
Sweet Chocolate
---------------
尊 :「あ、忘れてた(ぽん)」
和久 :「はい?」
尊 :「あのね、差し入れ……その……持ってきたの……チョコ
:(赤面)」
最後の方は小さな声でかろうじて聞き取れたぐらいだったが、確かにチョコ
と聞こえた。
和久 :「あっ……ありがとう御座いますっ」
尊 :「しーっ! だ、ダメだよっ大きな声だしたら、赤ちゃん
:ビックリしちゃう」
和久 :「すっ、すいません」
尊 :「ちょっと待っててね、準備するから」
和久 :「準備?」
チョコに準備がいるのかな?、と思う間もなくストーブの上で暖められて目
の前に出てくるショコラ・デ・アイス。
立ち上るカカオの香りがなんとも芳ばしい。
尊 :「美味しいかどうか判んないけど……(照)」
和久 :「じゃ、早速……あ」
満腹したのか、いつの間にか哺乳瓶を落としてスヤスヤ寝入っている赤ん坊。
座布団に寝かせようと思っても。
尊 :「あ、動いたら……」
ちょっと動くとむずかるように顔をしかめる。
和久 :「こ、困りました……ね(そっぽ向いて)」
尊 :「そ、そうだね……早く食べないと……溶けちゃうから
:(明後日の方向いて)」
正座で並ぶ二人の前でカカオソースの熱さに除々に溶けるアイスクリーム。
両手を使わず溶ける前に食べるには方法は一つしかなくて。
尊 :「そっ……その……あのね……よかったら……なんだけど」
和久 :「ハイ(かちこち)」
和久君、若干声裏返ってます。
尊 :「食べさせ……て……あげ……よか?」
俯いて、上目遣いでぽそぽそと。
薬缶を頭の上に乗っけたらそのまま沸騰しそうです。
和久 :「ハイ(かちこち)」
こちらも沸騰寸前。
尊 :「じゃ、じゃぁ(俯きながら一匙すくって和久君の口元へ
:そーっと持ってく)」
和久 :「い、頂きます……(カチコチになりながら口を開ける)」
いや、そんなに大口開けなくても。
とにかく、あーん、ぱく、と一口。
尊 :「ど、どうかな……」
和久 :「……(目を閉じて味わってる)」
鼻に抜ける芳ばしいカカオの香り。
甘いバニラアイスと絡むほろ苦さ。
和久 :「(にっこり)……美味しいですよ、すごく」
尊 :「よかった(ほっ)それじゃ……(照)」
もう一口、あーん、と。
スプーンが口元に来た瞬間。
SE:ガチャッ
相羽 :「豆柴〜、赤ん坊引き取りに来た……んだが」
和久 :(ドアの方みて硬直っ)
尊 :(ドアの方みて硬直っ)
まさに、あーん、ぱく、の瞬間。
色々な意味でさすが先輩。
その死のような沈黙はどの位続いただろうか。
最初に復帰したのはやはり先輩であった。
相羽 :「とりあえず、親御さん到着したからその子引き取るわ」
硬直している豆柴君から赤ん坊を受け取って。
ドアから出て行きざま、首だけ振り向いて。
相羽 :「……んじゃ、ごゆっくり(にやり)」
SE:ばたん
尊 :「……(赤面)」
和久 :「えっと……(滝汗)」
差し出したスプーンを引っ込める訳にも行かず。
そのまま硬直している尊を見て。
和久 :「(お、落ち着けっ)……い、頂きますっ(ぱくっ)」
尊 :「あ(かぁぁぁっ)」
さすがに。
差し出したスプーンを引っ込めさせるほど野暮ではなかったようで。
尊 :「あ、後はその……(真赤)」
和久 :「あ、はい(照)」
スプーンを手渡して。
尊 :「そ、それじゃ、あんまり遅くなるとみんな心配するから、
:か、帰るねっ(そそくさ)」
和久 :「あ、尊さん」
尊 :「ん?(マフラー巻きつつ)」
和久 :「……ご馳走様でした(にっこり)」
尊 :「ん(微笑)それじゃ」
窓からヒラリと。
……帰るのはドアから帰れば良いのに。
尊 :「オヤスミ〜(手を振りつつ駆けていく)」
和久 :「オヤスミなさい……(後姿見送りつつ)」
後方支援部隊
------------
一方その頃。
如月家リビングの炬燵では。
夾 :「あ、片帆おねえちゃんお茶もう一杯どうですか?(急須
:からお茶を注ぐ)」
片帆 :「ああ有難う……(チラと壁の時計をみて)そろそろ、戻っ
:てくるかな?」
夾 :「おねえちゃん大丈夫かなぁ……」
知恵 :「随分遅いです、ひょっとして泊まりでしょうか(お茶す
:すりつつ)」
夾 :「それって……えっと……(赤面して俯く)」
片帆 :「あの二人に限ってそれは無いな(キッパリ)……そもそも、
:そこに辿りつくまで何年掛かることやら(お茶すする)」
知恵 :「それは、戻られたら聞いてみましょう」
夾 :「そうですね」
後方支援部隊がてぐすね引いて待っているようです(笑)。
時系列と舞台
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2006年2月バレンタイン当日。
解説
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久志さんのご希望通り、「あーん」をやってみました(ぉぃ
$$
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葵 一<gandalf@petmail.net>
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