[KATARIBE 29807] [HA06N] 小説『酔っぱらい、こける』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Fri, 03 Mar 2006 00:19:33 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29807] [HA06N] 小説『酔っぱらい、こける』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200603021519.AA00186@hikaru-h8akl379.blue.ocn.ne.jp>
X-Mail-Count: 29807

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29800/29807.html

ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
お題は
23:23 <Role> rg[hukiwrite]HA06event: 楽しそうなおじいさんが倒れてし
まった ですわ☆

ひさしさん、ご協力感謝です。
**********************************************************************
小説『酔っぱらい、こける』
==========================

登場人物
--------
 火川猛芳(ひかわ・たけよし):http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
  帆川神社の宮司。

 蒼雅巧(そうが・たくみ):http://kataribe.com/HA/06/C/0529/
  猛芳が転んだときによく遭遇する。

本編
----
 猛芳は赤い西の空を背にして歩いていた。その足取りはふらふらと揺れてい
て、道路に長く伸びた影もつられて左右に揺れる。
 顔は赤く、やけにニコニコとした笑みを浮かべている。
 酔っぱらっているのである。
 将棋を指しに行った友人の家で酒を振る舞われたのだ。初孫が生まれたその
祝い酒だった。
 いつもより陽気な友人に釣られてつい猛芳も飲み過ぎてしまった。
 友人は午後6時あたりで眠ってしまい、猛芳は結局将棋を指すことなくその
家を後にしたのである。
 向こうの家を出た頃はまだ明るかったのだが、神社の石段の麓に着いた頃に
は少し暗くなっていた。
 猛芳が電信柱の側を通りかかった丁度その時に、その電信柱に設置してある
電灯に明かりが点った。
「おぅ」
 何気なく見上げたのだが、そのタイミングで足が変な方向にふらつき、彼は
バランスを崩して道路に転がることになった。
「あいたたた……」
 誰かに見られていないだろうな、と思いながら立ち上がろうとしたその時、
彼の目の前にすっと手が差し出された。
「大丈夫ですか?」
 見られていたか、と猛芳は小さく呟いた。
「……一人で立てるから大丈夫じゃよ……っと」
 差し出された手に捕まることなく反動を付けて立ち上がる。大丈夫なところ
を見せようとしたが、まだ足がふらついていた。
「お怪我は?」
「特にないのう」
 そう言って猛芳はどこか捻ってないかどうか飛び跳ねて確かめてみる。特に
痛いところはない。そして、ここでやっと差しだした手の主の顔を見た。
 その顔には見覚えがある。蒼雅巧、という名の高校生であった。
「そう言えば、あんたはいつぞやの……」
「ええ、以前こちらで」
 巧はにこりと微笑んで頷いた。
 猛芳は以前であった時を思い出して苦笑を浮かべた。
「……以前も似たようなことがありましたね」
 彼もその時のことを思い出したのか、先ほど猛芳が倒れた地点に目を落とし
た。あのときは怪しげな手があったが、さすがに今回は何もない。
「いやあ、ちょっと飲み過ぎたようじゃわい」
 猛芳は照れを隠すようにカカカ、と笑った。
「ああ、なるほど」
 それを見て巧も少し微笑みを浮かべる。
「昔はあれくらい呑んでも何ともなかったんじゃがのう」
 言い訳めいた口調で猛芳が言う。
「いや、今でも大丈夫じゃぞ? ちょっと飲み過ぎただけで」
「分かりました。でも気をつけてください」
 酔っぱらいを相手にしていても巧は微笑みを崩さないでいた。
「わざわざ心配してくれてすまんの」
「いえいえ、お怪我が無くて幸いです」
 彼はそう言って、石段の上の方を見上げた。
「そういえば、この神社の宮司様でしたか」
「うむ。様が付くほどえらくはないがな」
 猛芳がニヤリと笑う。
「ついでにそちらまで行きましょう。願掛けも兼ねて」
「おう。来ると良い」
 猛芳が先に石段を登っていく。巧は猛芳が倒れないように注意しながらその
後ろをついていった。

時系列と舞台
------------
2006年3月。

解説
----
二度目の遭遇も猛芳が転んだときでした。

$$
**********************************************************************
 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29800/29807.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage