[KATARIBE 29796] [HA06N] 小説『お面をかぶったアヒル』

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Date: Fri, 24 Feb 2006 01:25:55 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29796] [HA06N] 小説『お面をかぶったアヒル』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
お題は
23:20 <Role> rg[hukiwrite]HA06event: 追いかけっこしているつくもがみが
鼻の頭を舐めようとした ですわ☆

でした。最早「三十分」など形骸に過ぎぬ(滅。
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小説『お面をかぶったアヒル』
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登場人物
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 一白(いっぱく):http://kataribe.com/HA/06/C/0583/
  津久見神羅の式神。

 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

本編
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 帆川神社の蔵の戸の少し開いた隙間から何かが外に向かって飛び出していっ
た。
「待てーっ」
 次いで、それを追いかける一白が蔵から出てくる。そして、二、三歩前に進
んで立ち止まると辺りをキョロキョロと見回した。
「……いた」
 一白が見つめる先にはアヒルのぬいぐるみ。その視線に気が付いたのか、ア
ヒルは彼の方を向いた。
「ぐが」
 いつもとは違う声で鳴いた。その顔には般若の面がくっついている。前から
見ると、般若の顔にアヒルの体。シュールな光景ではある。
 アヒルは普段とは違う足取りでゆっくりと一白の方に近づいてきた。一白は
アヒルから、というかそのつけている般若の面から感じる不気味な雰囲気に一
歩下がった。
 般若の面は神社の蔵に納められている訳ありの品物の一つだった。だいぶ古
い時代の物で付喪神と化してしまったのを預かっているのである。だいぶ質の
悪い代物で付けた人の自我を乗っ取るらしい、ということを以前に猛芳から聞
いたことがあった。
 で、そんな面を着けたアヒルのぬいぐるみが今、一白の目の前にいるのであ
る。
「やっぱり、乗っ取られてるんだよねぇ?」
 一白が恐る恐る尋ねてみる。アヒルはそれには答えない。聞こえていないの
か、聞く気がないのか。どちらにせよいつものアヒルの様子とは違っている。
 一白は蔵の中にいるはずの神羅を呼ぼうとして、後ろを向こうとした。
 その時である。
 アヒルは急に一白に向かって突進してきた。最初は地面に足をつけて走って
いたが、やがて宙に浮き、ロケットのように一直線に向かってくる。
「わっ」
 一白は思わず仰け反った。上を向いた顔のすぐ側をアヒルの腹が擦ってい
く。一白はそのまま仰向けに倒れ込んだ。
 アヒルはそのまま進んでいって、蔵の戸の前で宙に浮かんだままゆっくりと
体を反転させる。一白は慌てて立ち上がると再びアヒルと対峙した。
 真っ正面から見ると、般若の面に体が隠れてしまい、面だけが浮いているよ
うに見える。
 ふわふわと浮いているのである。
 あまり楽しげな光景ではない。
 一白は般若の面をにらみつけた。般若の面も、目は空洞だが一白の方を向い
ている。
 しばらく両者はその状態でじっと動かずにいた。
「あれ。一白は外におるんか?」
 蔵の中から声がして、神羅が戸の隙間から姿を見せた。
「あ、神羅っ」
 一白が安堵の混じった声を上げる。アヒルも神羅の存在に気が付いて、後ろ
を振り返った。
 非常に至近距離で神羅と般若の面が対面する。
「おおぅ」
 神羅は思わず左手でその般若の面をたたき落とした。
 カランと乾いた音を立てて面は地面に落ち、アヒルの顔から外れた。
「あ、ごめん。つい反射的にやってもうた」
 悪いね、と言いながら神羅は頭に手をやった。一白は呆気にとられたような
表情でその様子を眺めていたが、我に返ると急いでアヒルの元に駆け寄った。
「大丈夫?」
 抱え上げて軽く揺すってみる。するとアヒルは一白の手の中でもぞもぞと動
き、ガァと小さく鳴いた。
「良かった」
 一白が溜め息をつく。
「……えーと、何があったんや?」
 状況を把握できないまま神羅は般若の面を拾い上げた。

時系列と舞台
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2006年2月。帆川神社にて。

解説
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で、この後、神羅が乗っ取られてえらいことに……なるかどうかはさておき。

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