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Date: Thu, 23 Feb 2006 00:45:25 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29794] [HA06N] 小説『爺さん対賽銭箱』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200602221545.AA00181@hikaru-h8akl379.blue.ocn.ne.jp>
X-Mail-Count: 29794
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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ふきらです。
三十分一本勝負（http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min）。
お題は
23:52 <Role> rg[hukiwrite]HA06event: 古びた一円玉が突進してきた
ですわ☆
で、実はその前に
22:56 <Role> rg[hukiwrite]HA06event: きらきらとした一円玉が突進してきた
ですわ☆
というのがあったのでした。
そんなわけで爺さんシリーズ。
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小説『爺さん対賽銭箱』
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登場人物
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火川猛芳（ひかわ・たけよし）：http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
帆川神社の宮司。
本編
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本宮の正面に設置してある賽銭箱を前にして猛芳は仁王立ちになっていた。
周りには誰もいない。太陽は西の空に沈み、境内の電灯に明かりが点る。し
かし、まだその電灯が影を作り出すほどには暗くなっていない。
猛芳の周囲には何故か十円玉や五円玉などの硬貨が落ちている。
じり、とすり足で彼は賽銭箱に一歩近づいた。すると、それにあわせて賽銭
箱の隙間から一円玉が浮き上がった。
一円玉はふわふわとしばらく浮かんでいたが、猛芳が再び一歩近づくと彼に
向かって一直線に飛んでいった。
「甘いわっ」
ぶつかる寸前で猛芳は右の拳で打ち落とす。乾いた音を立てて一円玉が境内
の石畳の上に落ちた。
賽銭箱との距離は３メートルほど。このようなことを繰り返して、じりじり
と賽銭箱に近づいていた。
「こうなれば、一気に間合いを詰めるか……」
猛芳は呟いて、今までよりも大きく前に一歩踏み出した。
賽銭箱がジャラジャラと盛大な音を上げて、今度は何枚もの硬貨を浮き上が
らせる。新しいものから古いものまで、一円玉から五百円玉までよりどりみど
りである。
「ぬぬっ……」
猛芳の額に浮かんだ汗が頬を伝い地面に落ちた。
そのままの状態で両者は静止する。
強い風が吹き、境内を囲む木々が揺れる。地面に落ちていた一円玉が風に動
かされて他の硬貨に当たりチャリ、と小さな音を立てた。
それが合図となって、猛芳は再び前に踏み出し、賽銭箱の上に浮かんだ硬貨
たちが一斉に猛芳に向かって飛んでいく。
「ふんふんふんふんっ」
前に進みながら飛んでくる全ての硬貨を拳で打ち落としていく。前に進むた
びに、チャランチャランと硬貨と石畳が触れる音が境内に響く。
「そらそらそらそらぁーっ」
賽銭箱からは次々に硬貨が浮かび、撃ち出される。間合いは段々と詰まって
いき、そのペースは次第に速くなるが猛芳はその全てを迎撃して進んでいく。
あと一歩というところまで近づいたとき、不意に賽銭箱の攻撃が止んだ。
「む？」
猛芳はその場に立ち止まり様子を伺う。
賽銭箱からはカスッカスッとしか聞こえてこない。猛芳はニヤリと笑った。
「打ち止めか」
そして、最後の一歩を踏み出し賽銭箱にとどめの一撃をぶち込む。
賽銭箱は鈍い音を発した後に、静かになった。
「……全く手こずらせる奴じゃわい」
やれやれ、と猛芳は首を回した。
「まあ、確かに最近磨いてやらなんだこっちも悪いがな。今度の休みにでも
ちゃんと磨いてやるから……神羅が」
そう言ってから猛芳は後ろを振り返った。石畳の上にはたくさんの小銭が散
らばっている。勿論、先ほどの戦いの結果である。
「しかし、これを集めるのは手がかかるのう……」
猛芳が溜め息をついて肩を落とす。電灯が作り出す彼の影もつられて肩を落
とした。
時系列と舞台
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2006年２月
解説
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○爺さん vs. 賽銭箱（賽銭箱のギブアップ）
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