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Date: Fri, 17 Feb 2006 21:33:11 +0900
From: 月影れあな <tk-leana@gaia.eonet.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29779] [HA20N]小説『探偵倶楽部最後の事件』（その３）
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おいっす、れあなです。
締め切りいっぱいまで引き伸ばしてごめん。あと、話の順番微妙にばらばら
だけど、とりあえずこんな感じで、美沙希の一人称で行こうと思います。
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小説『探偵倶楽部最後の事件』
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Part3.光太郎は迷わない
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楽鈴寺光太郎という女は迷わない。
私が光太郎と知り合って、もう六年ほどになる。年月相応に、あいつの人と
なりについて知っているが、あいつの迷うところなどほとんど見たことが無い。
私より長くあいつと付き合い続けている人たちに聞いても、皆口をそろえて「
光太郎は迷わなかった」と断言する。
思い立ったら即断即決。電光石火と言っていいほどの速さで決断を下し、決
して違えない。天分を超えぬほどに我が侭を通し、一度そうと決めたことは最
後まで確実にやり通す。
あいつが本当に迷ったことは、その生涯でたったの二度きりだった。と、後
に光太郎のことを幼い頃から良く知っている人々は語り合っていた。
楽鈴寺光太郎という女は、本当に迷うことが無かった。
だから、逆に。と、私は今になって思うのだが。実のところ光太郎という女
は、誰よりも優柔不断だったのではないだろうか。
あらゆる問題を直感的なひらめきで、常に正しい道を選んでくることが出来
たから、迷うことを知らないままで育ち、それ故本当に迷わなければならなか
った二つの出来事に決断を下せず、あの二つの失敗が生まれたのではないか、
と。
結果として、一度目の失敗はあいつの目的を壊し、二度目の失敗はあいつ自
身を滅ぼすこととなった。
春休みの、あの忌まわしい卒業旅行。
どこか物憂げに、二月の空を見上げながら提案した光太郎の心根が何処にあ
ったのか、計り知る術は最早無い。
あの時の光太郎の異常性について、気づいたものが一人として存在しただろ
うか。仮にも探偵倶楽部の名を冠しながら、話の流れの自然さに、その違和感
に誰一人気づくことは無かった。三年間光太郎の片腕を勤めた漣も、古くから
の知己であるこの私、月影美沙希自身も。
或いは、あの里見葬希ただ一人は何か勘付いていたのかもしれないが、それ
も何の意味も無いことだし、今となっては確かめようも無かった。
とは言え、あの時光太郎の異常に気付けていたなら、あの悲劇は回避しえた
のではないかと思うと、自らの愚かしさに腹立たしさを禁じえない。
あの日、この三年で初めて、光太郎は探偵部の部員たちに向けて『宣言』で
も『命令』でもなく、『提案』をしたのだった。
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