[KATARIBE 29773] [HA06N]小説『鬼ごっこ』

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Date: Tue, 14 Feb 2006 23:49:01 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29773] [HA06N]小説『鬼ごっこ』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
お題は
22:37 <Role> rg[hukirdead]HA06event: 探偵が走っているのに出くわした 
ですわ☆

でした。
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小説『鬼ごっこ』
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登場人物
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 火川猛芳(ひかわ・たけよし):http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
  帆川神社の宮司。

本編
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 通りを歩く人の足音に紛れて一つ、タッタッタと駆ける足音が聞こえてきて
猛芳は振り返った。
 走ってきたのはいつぞやの探偵。顔は笑っているが、その速度はジョギング
よりも速い。あっという間に猛芳に近づいてきて、彼は立ち止まった。
「やあやあ火川さん」
 息を切らせた様子もない。
「……ジョギングかね?」
 猛芳は訝しげな表情を浮かべて尋ねた。
「いやあ、ちょっと違うんですよ」
 彼は顔の前で手をパタパタと振る。そして、来た道を振り返り、左手を額の
前にかざして背伸びをした。
「うん。追いついて来てないな」
 そう呟いて、再び猛芳の方を向く。
「鬼ごっこでもしてるんかいの」
 冗談交じりで言った猛芳の言葉に、探偵は真面目な顔で頷いた。
「そうなんですよ。但し、鬼が変わることはないんですけどね」
「……は?」
 真意を掴みかねて、猛芳は眉間に皺を寄せる。本当に鬼ごっこをしている可
能性がないとは限らないが、常識的に考えれば大の大人がこんな昼間に鬼ごっ
こなどすることはまずない。子供相手なら追いかけてくる姿が見えなくなるほ
ど離れて逃げるということもないだろう。ということは。
「誰かに追われてる、というわけは……」
 思いついて呟いた言葉を否定しようとする前に、探偵は苦笑いを浮かべなが
ら頷いた。
「まあ、平たく言えばそうなんですけど」
 その答えに呆気にとられた表情を浮かべた。まさか誰かに追われるという状
況に遭遇するとは思ってもみなかったのである。さらに、それが刑事や探偵と
いった職業の者だなんてベタなドラマでしか見かけない。
「まさか、そんな状況に遭遇するとはのう……」
「長生きはするもんじゃ、ですか」
 微笑んでいる探偵にニカッと笑って、その表情のまま彼の腹に一発入れた。
「グフッ」
「人を老人扱いするな」
 あいてて、と殴られた腹をさすりながら、それでも探偵は微笑みを崩さない
でいる。
 そして、ふと動きを止めると慌てて後ろを振り向いた。
「あ、やばい」
「何じゃ、鬼が追ってきたのか?」
 彼が見ている方向を猛芳も見てみるが、追いかけてきているような様子の人
の姿は見えない。
「……お前さんには見えておるのか」
「ええ、目は良い方で」
 猛芳も目は悪い方ではない。どちらかというとかなり良い部類に入る。その
彼にすら見えないというのは、どのくらいの距離であろうか。
「ま、とにかく捕まらないうちに逃げるとしますよ」
「さよか」
「じゃあ、また。今度お茶でもごちそうしてくださいよ」
「茶菓子を持ってくればな」
「覚えておきます」
 そう言い残して探偵は来たときと同じような速度で駆けていった。その後ろ
姿を見送ってから、反対方向を見る。
 やっと猛芳の目にも走ってくる人の影が見えてくる。探偵と同じスピードで
近づいていき、そのまま猛芳の横を通り過ぎていった。
「……あ?」
 すれ違う際にちらりと見えたその顔は目や口がやけにつり上がっていて、極
めつけに額には二本の角があったようで。
「……本気で鬼ごっこか」
 まあ、そんなこともないわけではないか、と猛芳はそれ以上深く考えないこ
とにした。
 今日は良い天気である。

時系列と舞台
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2006年2月。

解説
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まあ、日常の風景ですよね。

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