[KATARIBE 29770] [HA06N] 小説『羞恥心の定義と応用』

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Date: Mon, 13 Feb 2006 23:26:07 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29770] [HA06N] 小説『羞恥心の定義と応用』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年02月13日:23時26分06秒
Sub:[HA06N]小説『羞恥心の定義と応用』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
出張話、これで、真帆側は終了です。
…………なんつかなあ(げふ)
ってんで、流します。
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小説『羞恥心の定義と応用』
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登場人物
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 相羽尚吾(あいば・しょうご)
     :吹利県警刑事課巡査。ヘンな先輩。
 相羽真帆(あいば・まほ)
     :自称小市民。多少毒舌。10月に入籍。 

本文
----

 羞恥心というものの定義を、時折尋ねたくなることがある。


「…………え?」
 あふれそうになった湯呑みに、慌てて急須の口を上げる。
「今、何て?」
「へ?」
 ご飯が終わった後の、お茶と和菓子。ベタ達は三人(?)揃って盛大につく
つくとお菓子をつついている。
「いあだから、出張中……豆柴君と?」
「同じ部屋だったよ」
 ひょい、と、手が伸びて、相羽さんがお茶を受け取る。
「…………あ、え、あの、でも」
 急須を置いてから、改めて尋ねる。てか、持ったままだと質問の答えが怖い。
「電話のときは、廊下に出てた……よね?」 
 相羽さんが不思議そうにこちらを見る。
「署の宿直の部屋だったし、部屋でかけてたよ」 
「…………っ!!」 

 確かに。うん、確かに。
 あたしの言葉は聞こえてなかったと思う。いくらなんでも。
 でも。
 交わした会話が、何だかこういう時には鮮明に思い出せてしまうもので。
 それが尚更。

「……相羽、さんっ」
 分割した和菓子を楊枝で刺したところで、相羽さんはきょとんとこちらを見
ている。
「どうして一言そう言ってくれませんかっ!」 
「え?いや、別にわざわざ言うことでも」 
 ほんっとに判ってないんだこの人ってっ。
「そーじゃなくってっ」
 どうしたら通じるだろう、とか、そもそも相羽さんが言ってたこと、とか。
思い出したら何か涙出てきた。 
「恥ずかしいでしょうが、そんなっ……」 
「……そうかねえ」 
 絶対この人わかってないっ!
 てか、どうして羞恥心の方向になると、こうも感覚がずれるんだ……っ

 ぽん、と、頭に置かれる手。
「……ほんっと、相羽さんて、そういうところが判らない…っ」 
 何だかいたたまれないくらい恥ずかしくて、下を向いてそう言ったのだけど。
「……別段、普通にしてるつもりなんだけど」 
 さらっと返される。
 何だか……がっくりと気が抜けた。
「…………豆柴君に顔合わせられない」 
「悪かった」 
 その言葉に相変わらず嘘は無い。無い、けど。

「……あのね」 
「ん?」 
 目を何度か瞬いて、涙を払う。
「相羽さんとあたしの間でなら、何言っても平気だけど」
 出来るだけまっすぐ、相羽さんを見て。
「……そういうの、普通、人に聞かせないし……あたしは他の人に聞いて欲し
くないです」
「……わかった」 
 撫でるように動いていた、頭の上の手が止まる。
「ああいう電話って……相羽さんにだけ、話すことだから」 
「そだね」 
 他の人が居るところで、眠れるよね、なんて訊かない。それこそ子供じゃあ
るまいし、そんなこと訊くことじゃない。
 でも、相羽さんだけには、ちゃんと意味が通じる。そして訊いても問題ない
ことはよくわかってる。
「人の居る前で、あたしは相羽さんに甘えたくないし、その返事も人に聞いて
欲しくない」
  
 見栄っ張りなのかな、と、言いながら思う。そもそも裏表無く、最初からそ
んな風に甘えるなってことなのかもしれないけど。
 でも。やっぱりそれでも。

「……だから、そういう時、もし豆柴君とか他の人が居るなら、言って下さい」 
「わかった」 
 ぼそぼそと、下を向いたまま言った言葉に、今度ははっきりとした応えがあっ
た。少しだけ安心した途端。
「もったいないし」 
 
 ………………そら確かに、今は他の人居ませんけど。
 何を言っても平気って、言っちゃいましたけど確かに。

 ……だけどっ!

「…………勿体なかないですけど」
 まともに相羽さんの顔が見れなくて、下向いたままぼそぼそ言ってたら。
 手が伸びて、頬の辺りにかかった。そのままするりと顎にまで動く。自然こ
ちらもつられるように上を向く。向かざるを得ない。
 視線が合った途端、相羽さんはにやっと笑った。
「こういう可愛いとこは俺だけが知ってればいいことだしね」

 何か、改めて思う。
 絶対この人って……

「…………意地悪っ」
 相羽さんはくくっと笑った。


時系列
------
 2006年1月末〜2月くらい。出張から帰ってすぐの日。

解説
----
 出張の際の電話の顛末。
 うん、普通恥ずかしいんです先輩そういう会話は……
******************************************************

 てなもんで。
 思うんですが、豆柴君、相羽家のふつーの会話聞いたら、
数日ひっくり返りやせんだろうか(汗)

 であであ。
 


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