[KATARIBE 29755] Re: [TRPG] [KA] 語り部なメンツで首ナイフ問題を考える

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Date: Fri, 10 Feb 2006 01:05:11 +0900 (JST)
From: みぶろ  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29755] Re: [TRPG] [KA] 	語り部なメンツで首ナイフ問題を考える
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年02月10日:01時05分11秒
Sub:Re: [TRPG] [KA] 語り部なメンツで首ナイフ問題を考える:
From:みぶろ


 みぶろです。

>明確な問題点を先に述べておきます。
>
>「ゲームのルールと常識(みぶろさんが常識という語を使うのでここでは常識
>としておきます)が相反する場合、ゲームのルールを優先させる」のがゲーム
>の一般的な原則です。
>
>それを忘れるから根本的な問題を認識できないのです。
>
>要点は以上です。
>以下は返答です。いつもどおり長話です。

 長かったです。でも僕も長いです。
 
1.ルールを遵守せよ
 一見常識に反して見えても、デザイナに根拠があるかも知れないし、抽象化
での解決がはかられていることがある。GMはルールに従った裁定をするのが
役割であり、ルールを意図的に無視する場合、誰もが納得せざるを得ない理由
が必要である。

2.判断・裁量の基準と根拠が不明確
 そもそもどうしてそう判断したか根拠と基準を示せ。
 そしてその基準はプレイヤの納得できるモノでなければならない。GMのそ
れを基準としたのでは裁量基準がブラックボックス化して予見可能性を失わせ
るから。

3.判定不要で死亡とする裁量は合理的とはいえない
 抵抗困難程度なら判定不要とは言い切れない。そう考える人をどう納得させ
るのか。

4.判定次第で救出可能と考えたプレイヤーの判断は合理的である

5.マスタリング例を示せ

 以上のような要旨だったと思います。
 以下、見解です。


1.ルールについて

 私は、「ルールと常識が相反する場合、常識を優先させてもよい」と考えて
います。有限のルールでゲームの全ての状況を表せない以上、GMの常識や合
理的な裁定が期待されていると考えるからです。現実社会においても法と常識
が相反する場合、しばしば行政や司法によって常識にあうような解決がなされ
ます。
 「有限のルールなのだから、ひずみも込みでバランスをとっている」という
のもひとつの見解でしょう。しかし、それがデザイナの意図した歪かどうかは
わかりません。わからないから、不自然なままプレイし続けるのが正しいでし
ょうか。ルールはプレイヤーとマスターが楽しく遊ぶために存在する、という
原則のもとに、ルールの趣旨を考慮しつつ不自然な点を修正するのは正しい態
度だと思いますが。
 ソードワールドRPGにおいて、「フォーリングコントロール」という落下
速度を制御する魔法には速度の制限がされていませんでした。そこを逆手にと
って「光速で敵に体当たりする」という戦術の是非が話題になったことがあり
ます。「ピュリフィケーション」という汚水を真水に変える魔法で、NPCの
血液を真水に変えれば即死させることができるか、という議論もありました
(公式Q&Aでもとりあげられました)。これについてのGMの態度として、
「できないとは書かれていない。ルールはルールだからOK」も「どう考えて
も、そんな趣旨じゃないだろうからNG」もどちらもありだと思います。そし
て私は後者を支持するということです。


2.判断・裁量の基準と根拠について

>「槍で足を払い転んだところで鎧の隙間から急所を刺す」と「人質の首に擬
>したナイフを刺し込む」との違いについて、どういう基準で同様の状況と判
>断しないのか、プレイヤーに抗議の余地が無いように説明できなくてはいけ
>ません
 「ルールに無いから人質の首にナイフ刺して即死なら、槍で転ばせて鎧の隙
間を刺しても即死だよな」と「本気で」言うプレイヤーっているんですか? 
難癖つけているとしか思えませんが。
 説明するとすれば次のようにします。
 人質は拘束されています。ナイフを外す可能性はほとんど0です。前者はこ
れから「うまく転ばせたり」「隙間に刺さったり」「回避されたり」する確率
を論じる必要があります。

 すべてについて、完全な根拠を求めることはできません。「拘束された人質
にナイフがどれくらいの確率で刺さるか」の統計情報は誰も持っていませんか
ら、上の説明もGMの主観にすぎません。それを認めないとなれば、ルールの
機械的適用以外のことができなくなります。ルールを直接適用できない状況が
発生したらどうするのですか? 類推適用がなぜ正しいか根拠を求められたら?
 GMの判断に権威を認めないなら、紛争を解決することは不可能です。
 そして、裁量の基準について常に事前に公開されることは考えられません。
(事前に公開されている誰の目にも明らかな裁量基準、というのはすでに明文
化されたルールです)
 裁量というのは常にブラックボックスをはらんでいます。「裁量権を持つ者
(社会であれば司法・行政など)は『ルールの趣旨と社会正義に添った』『合
理的で』『公平な』裁量基準で判断しているだろう」という信頼関係と、そう
でなかった場合の監視システムによってそれは正当化されます。
 RPGにおいても、GMには不公平な判断をする動機がありませんし、合理
的でないと感じればその場で異議を申し立てればすむでしょう。また不合理な
マスタリングを続ければ、プレイヤー達の糾弾にあいます。
 吉GUYさんは判断の基準として「プレイヤーが納得せざるを得ない基準」
を考えているようですが、それは厳しすぎます。裁量権者のこのような性質か
ら考え、GMの判断が、プレイヤーからみて明白に不合理でなければ採用すべ
きでしょう。

 たとえば野球のストライクゾーンについて、「バッターとピッチャーが納得
せざるを得ない基準」を審判が常に示しているでしょうか。通常審判は、ルー
ルブックに書かれている基準を元に、審判の目でみた仮想のストライクゾーン
をつくりあげていますが、これが選手に示されることはありません。実際のコ
ールから「この審判は(自分の考えるゾーンより)高めに広く取る癖があるな」
「内角は厳しくとるな」などと推測していくわけで、あきらかにルール上のゾ
ーンから外れていたり、基準が回ごとにばらばらだったりしない限り選手は抗
議しません。まして「俺の考えるゾーンと違うじゃないか」などありえません。
 同様に、GMの裁量基準も、明らかに不合理であったり前回の裁定との矛盾
があればともかく、「プレイヤーが納得せざるを得ない基準」を「常に事前に
示」さなければ許されないわけではないでしょう。
 ちなみにストライクゾーンの高めは『打者のズボンの上部と肩の上部の中間
線』らしいです。ルールを文言どおり厳密に運用するなら、ズボンを極端に下
にずらせば(下着が見えないよう上着を工夫して)ストライクゾーンは極端に
狭くなり、打者は有利にゲームを運べそうですが、絶対無視されるでしょう。


3.判定不要で死亡とする裁量は合理的とはいえないか

>↑の状況はまだ刺さっていません。
 実験するしかないんじゃないですかね。
 私なら後ろから首を極められてナイフを突きつけられたら諦めますけど。
 裁量が恣意的でないか、プレイヤーの納得を得られるかについては2で述べ
たとおりです。
 刺さっても死ぬとは限らない、という考察は説得力があったので、プレイヤ
ーにそう主張されたら死亡したかどうか判定すると思います。


4.判定次第で救出可能と考えたプレイヤの判断は合理的である

>「例外措置をとる場合にはその旨を告げないと、プレイヤーに対して公正と
>言えないのは間違いない。“そして首ナイフ状況も例外ではない”」

>という意味だったのでしょうか?

 そういう趣旨でした。
 ただ「この状況で「死にゃしない」と考えて行動するのもどうかと思います
がね」という発言はそれとは関係ないものです。ですから、「ルールを機械的
に適用して死ぬことは無いと判断したのは合理的」という見解は正しいと思い
ます。
 理屈は正しいですがちょっとどうかと思うのも確かです。

 
5.マスタリング例について

 GM     :「というわけで悪党は村長の娘を人質にとりました。『動
        :とこいつを殺すぞ』とわめいています。ちなみにこの状況
        :でナイフを首に刺されたら人質は即死します」 
 
 プレイヤー  :「ちょっと待って、ナイフのダメージは1d4だから、最
        :大値が出ても人質のHPは0になりませんよ」 

 GM     :「それは通常の戦闘ルールで叩きあいをして、鎧を着けて
        :る戦士や鱗のあるモンスターを相手にどれだけ有効かを示
        :すルールでしょう。動けない人質の首に擬したナイフを刺
        :し込むだけ、という状況は通常の戦闘とは言えませんから、
        :適用すべきではありません。ルールに無い状況はGMの裁
        :量にまかされています」

 プレイヤー  :「こうした状況も踏まえて抽象化されているのではありま
        :せんか? 安易にルールを無視すべきではないでしょう」 

 GM     :「人質の首につきつけるならウォーハンマー(2d6)の
        :方が効率的というわけですか? ちょっと歪みがひどいと
        :思いますよ。こうした状況は想定していないと考えるほう
        :が合理的だと思いますけどね」

 プレイヤー  :「それはあなたの思い込みでしょう」

 GM     :「さあ? 私の裁量はそんなに非合理的ですか?」

 プレイヤー  :「少なくとも私には。それにあなたは、人質が暴れてうま
        :く刺さらない可能性や、刺さっても死なない可能性を無視
        :しています。判定不要で即死というのはちょっといきすぎ
        :ではありませんか?」

 GM     :「君は首にナイフを突きつけられている状況で暴れるの?」

 プレイヤー  :「可能性はあるでしょう。救助に連動したりして」

 GM     :「0ではないというだけですね。無視できるほど小さいと
        :思います」

 プレイヤー  :「根拠は」

 GM     :「常識として」

 プレイヤー  :「あなたの常識が世間の常識とは限りませんよ」

 GM     :「そうですね。明らかに世間知らずな常識を振りかざした
        :らつっこんでください。で、あなたの常識では、人質が抵
        :抗しようと決意し、暴れたためにナイフがそれることって
        :ダイスを振ってみないとわからないほど確率の高いことで
        :すか?」(※1)

 プレイヤー  :「それは誰にもわからない。だからルールどおりすればい
        :いじゃないか」

 GM     :「それは相対化しすぎでしょう。それから、死なないかも、
        :というのもどうなんですかね。私は首にナイフが刺さった
        :らまず死ぬと思うけど」

 プレイヤー  :「そう簡単には死なない、というのは元警官の談話です」

 GM     :「警官ってそんなこと知ってるの? まあいいや、じゃあ
        :こうしましょう。1d100振って40以下なら即死、4
        :1以上なら重態。00なら無傷ということで」

 プレイヤー  :「根拠が無いですね」

 GM     :「ダメージ1d4だから絶対死なない、よりましな解決だ
        :と思いますけどね。で、どうするんですか? 交渉? 強
        :行? 強行ならイニシアティブチェックです。負けたら悪
        :党は君たちが攻撃してくるのを察知して娘を刺します」
        


 こんな感じです。
 実際にはここまで盛り上がらないでしょう。※1のあたりで

 GM     :「うるせー死ぬんだよ。文句は後で聞く」

 という可能性が高いです。ここまでで納得しないならこの後も平行線でしょ
うし、ゲームを長くとめるとプレイヤーの興味が薄れるるからです。特に、異
議をとなえるプレイヤーに、他のプレイヤーが賛同していないようなら確実に
そうします。
 もちろんこれは横暴なやり方です。しかしゲーム論やマスター論をシナリオ
中に延々やっても仕方ないでしょう。ゲーム後に話し合い、このスタイルが所
属するサークルに受け入れられないなら、再考するなりやめるなりすればいい
話です。



 あとはちょこちょこと。


>> ただ、少なくとも首ナイフ状況において、「ナイフのダメージは1d4だ
>>から死にゃしないよ」と行動するプレイヤーに対しては、「はあ。想像力が
>>豊かなんですね」としか言いようがないです。
>
>みぶろさんの↑の発言は受け入れの態度だったのですか。
>
 吉GUYさんにとっては「『死にゃしないよ』と行動する」のと「『死なな
いかも知れないからダイスを振ってくれ』という抗議」とは等価値ですか。


>
> たかがいち審判の“常識”とやらでゲームのルールを好き勝手に無視したり
>変えたりすることはゲームでは普通ありえません。

http://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/2001/hitorigoto.4.html
 ストライクゾーン高めについてはルールを無視しているそうですよ。
 私も剣道をしていて、肩(無効な部位)をうたれたのに「打ち込みのタイミ
ングがよかった」というルールに無い理由で一本をとられたことがありますが。
 こういった審判達は、なぜこういうことをするのでしょうか。ゲーム本来の
面白さを支援するためではないですか。ナイフをつきつけられた人質を前に
「ダメージは1d4だから死なない」と突撃するのがRPGの楽しさなのです
か? まあある意味楽しいのですが
 あるいは、菊池たけしさんのGMによるリプレイ集などで、ルール上必要な
チェックを無視したり、独自の基準で目標値を算定する場面を見たことがあり
ます。吉GUYさんの考えでは彼も「根本的にGMをやる資格や素養を欠いて
いるとしか言えません」か?


> また、最初のGMの発言を事前通告だったとしてみましょう。
> ◇2でも触れましたが、事前通告の場合でも「GMの裁量」でどこに
>「武器による殺傷行為であるが判定をスルーできる」「即死になる」線引きを
>行ったのかプレイヤーに分かるように示さなければ、結局こういうやりとりが
>起き得ます。
>
 今回行った処理は、「一般人女性を拘束し、ナイフを突きつけた状態からな
らば、判定不要で殺害できる」というものです。この要件を読み取るのはそん
なに難しいでしょうか。まあどう処理されるかわからなければ、事前にGMに
確認すればいいと思うんですが。


以上です。



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