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Date: Thu, 9 Feb 2006 01:42:57 +0900 (JST)
From: いー・あーる <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29747] [HA06N] 小説『姓名判断』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200602081642.BAA41634@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 29747
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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2006年02月09日:01時42分57秒
Sub:[HA06N]小説『姓名判断』:
From:いー・あーる
ども、いー・あーるです。
IRCネタ、話にしてみました。
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小説『姓名判断』
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登場人物
--------
軽部片帆（かるべ・かたほ）
：毒舌大学生。相羽真帆の妹。相当のシスコン。
相羽真帆（あいば・まほ）
：自称小市民。多少毒舌。
本宮幸久（もとみや・ゆきひさ）
：葬儀屋さん。生まれつき霊感が強く視えすぎる人。
六華（りっか）
：冬女。元軽部真帆宅から桜木家へ、そして現在本宮家の一室に住む。
本文
----
姓名判断の出来るサイトがある、と、教えてくれたのは、本宮幸久さん、姉
曰くところのゆっきーさんだった。
「姓名判断、ですか？」
「そう、あれほんっと当ってたんだよな」
お兄さんの史久さんと、この人は、顔立ちは似てるけど雰囲気はかなり違う。
黒尽くめのスーツを着込んだその人は、片手ののグラスを軽く揺らしながらぼ
やくように言った。
「俺んとこ、兄弟全員一字違いなんだよ」
「……あー」
「あらほんとだ」
あたしの右隣に座った六華さんが、少し目を丸くする。確かにあだ名がそれ
ぞれ違うからあまり気にならないけど、そういえば、史「久」さんに幸「久」
さんに和「久」さんか。
「なのに、史兄の運勢はやたらいいんだよ。確か『運気旺盛富栄の発達運』だ
の、『福寿円満上位の引き立てあり』だの」
「…………はあ」
てっかよく覚えてるなあ。
「ところが俺も和の奴も、『波乱変動の変怪数、吉凶の差が甚だしい』だし、
何より全体の得点が史兄の半分くらいしかない」
「……はあ」
何でも、相羽さんと同時期に、あとの二人（つまり史久さんと和久さん）も
出張だったらしく、この人も呑みに誘える相手が居なかったらしい。それで適
当に声を掛けたら、いたのがあたしと六華さんだった、と。
とりあえず昨日バイト代が入ったんで、乗った自分も自分かもしれないが。
……しかし。
「やっぱそうだと思ったんだよなあ」
いつの間にかかなり空になったグラスを振りつつ、幸久さんは何だかやたら
しみじみと言う。
「史兄、ぜってー俺達の運吸い取ってるって」
とか何とか言ってるけど、この人も奥さんを結婚式場からかっぱらって、結
局恋愛貫徹させたという豪の者で……そう考えると相当運は良いと思うんだけ
どな。
と思いながらグラスの中の酒を見る。その視線を上げると、六華さんのそれ
とぶつかる。
……どうやら彼女も同意見らしい。
「……まあ、それはどうか知りませんが」
揚げ出し豆腐をつまみながら、そこらは多少姑息に誤魔化すとして。
「面白そうですね、そのサイト」
「ああ、これこれ、ここ」
「へ？」
携帯の小さい画面を不意に突きつけられて、思わずのけぞりかける。
「ゆっきーさん、携帯持ってない人に、そんなに突きつけても」
肩のあたりから、おっとりとしたフォロー。六華さんはすいと手を伸ばして
幸久さんの携帯を受け取った。
「見づらいんですよね……ああ、これ？」
小さな鞄からボールペンとメモを取り出して、六華さんはさらさらとサイト
のアドレスを書き取る。
「って、六華さんも携帯持ってない？」
「持ってません。真帆サンと同じ」
くふ、と、小さく笑う顔がどこかどきりとするほどあどけない。
「でも、ゆっきーさん、それ、家族、知り合い全員やってみたでしょ」
「まーな」
はいこれ、と、あたしにはアドレスの写しを、幸久さんには携帯を返しなが
ら、六華さんはころころと笑った。
「あ、ありがとうございます」
「やってみると結構はまるもんだぜ」
「確かに、面白そうですね」
「面白いってか」
ぐう、と、また幸久さんが渋面になる。
「姓名判断でも史兄が全部運かっさらってるってのが」
また繰り返しそうになった愚痴を、せき止めたのは六華さんだった。
「で、美絵子さんは？」
「へ？」
「美絵子さんの運勢は、結婚して少しは良くなった？」
「…………」
う、と、幸久さんは言葉に詰まってグラスを口に運ぶ。
「悪くなった？」
「悪くは……とりたててなってねえよ」
「大して変わりない？」
「いや、少しは良くなった……」
「……ほんとに？」
「…………」
完全に無言になった幸久さんを見て、六華さんはころころと笑った。
あでやかな……笑みだった。
**
「ねーさん、パソコン借りるねー」
「どーぞ」
台所でことことと何やらやってる姉に声をかけて、パソコンを起動させる。
何でも一週間相羽さんが居ないとかで……こう、これだけのんびりと姉のとこ
に来たのも久しぶりじゃないだろうか。
「ねー片帆。あんた今日どうするの」
「あ、夜はバイト入ってるから……」
「じゃ、その前にご飯作るわ。食べてから行ったら？」
「そーする」
言いながら、立ち上げたブラウザに貰ったサイトのアドレスを打ち込む。
そして出てきた画面に……まずは自分の名前を入れて。
「…………」
何だこの結果は。
「……なにやってんのあんた」
「わ」
いつの間にか両手にコーヒーのマグを持った姉が、後ろに立っていた。
「わ、じゃないでしょ……何それ」
「この前、幸久さんに教えてもらったサイト。姓名占いやってみたんだけど」
コーヒーを受け取りながら、説明する。
「はあ」
「あたし、えらい病弱にならんと間違えてるよこれ」
占いの結果たるや惨憺たるもので。
『病難悲運の凶数』『病弱不和障害の暗示あり』ときて、最後には『厄難凶渦、
病弱短命障害多く大凶数』ときたものだ。
「……ってか、どうしてあんた、ちょっといいとこになると全部「女性は凶数」
になるの（汗）」
「あ、ほんとだ」
運勢の大体の目安なのか、×だの○だのが書いてある。その過半数が×なの
だが、残り少ない○のところ、二つとも「女性は凶数」と書いてある。
「それはもう……あたしが女に生まれたのが間違えてるってとこね」
胸を張って言うと、姉は小さく溜息をついた。
「ねえ、じゃ、あたしやってみていい？」
「あーうん、やったげる」
コーヒーをテーブルの隅に置いて、ぺこぺこ打ち込む。
当然ながら『軽部真帆』。
「…………あのね、片帆」
何となく後ろで姉が抗議しているようだが、無視。出てきた結果を見る。と。
「……うーん、あんまし良くないね」
姉の場合、◎なんてのまで出てくるから、あたしよりは実は相当良い。でも
やっぱり「女性は凶数」なんてあるし、『病弱短命障害多く大凶数』もしっか
り転がっている。
「……でもあたしよりは相当いいか」
「そーじゃなくてね……」
ひょい、と姉がマウスを取り上げる。さっさと名前を消して名前を打ち込み
なおす。
……『相羽真帆』。
このやろー……と、言えない間に姉はさっさと判定のボタンを押す。
さらさら、と、出てきた文字は。
「あ」
……姉の嬉しそうな声が……なんかこう、すごく腹が立つ。
「…………あのね、姉さん」
「何？」
「占いなんてのは、大体がいい加減なものなのっ！」
マウスをかっぱらってクリックしてサイトを閉じる。
……ほんともう……このやろうっ。
「ねーさんっ」
「何」
「おさけっ」
「…………あんたね……まだ昼の２時だよ？」
「いーのっ」
「バイトもあるって言ってたのに……」
「いーったらいいのっ！」
軒並み揃った、◎と○。
恐らく、かなり上位の運勢判断結果。
……あーもう腹立つっ！
「ウィスキー。コーヒーに入れてくるっ」
「こらっ」
どかどか歩いて、台所をてけとに開けて。
ほんっとに、もう。
姓名判断が当たるなんて……全く誰が言ったかって気がする。
それ、絶対に、嘘だから。
時系列
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2006年1月末。一週間の出張の、その間の話です。
解説
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IRCで出た、姓名判断サイトでの結果を元に。
いや、真帆の運勢が見事に最高になったのには、己も笑いました。
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てなわけで。
ちなみに姓名判断を行ったサイトとゆーのは、
http://uarani.fc2web.com/frame.html
です。
ネタにどーぞ（笑）
ではでは。
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