[KATARIBE 29729] [HA06N]小説『迷子の記憶』

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Date: Thu, 02 Feb 2006 01:00:10 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29729] [HA06N]小説『迷子の記憶』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
お題は
00:09 <Role> rg[hukira]HA06event: 記憶を呼び覚ましたのは忙しそうな迷子
の園児だった ですわ☆

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小説『迷子の記憶』
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登場人物
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 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

本編
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「ん?」
 大型書店で本を探していた神羅は店内をパタパタと走り回っている幼稚園児
に気が付いた。近くにその子の親がいるような感じはしない。
(ああ、こりゃ迷子かな)
 そう思うが、特に声をかけようとはしない。今の世の中、変に間違えられる
と色々と面倒である。
 その子供はきょろきょろしながら慌ただしく走っている。レジにいた店員た
ちがその子の方を見て何やら話しているので、どうやら迷子らしいということ
は気付いているのだろう。
 やがて、その店員の一人がどこかへ行ったかと思うと、年配の女性を連れて
戻ってきた。少し話をすると、その女性は走り回っている子の元に行って、
しゃがんで何か話を聞いている。それから、立ち上がるとその子の手を引いて
レジへと戻っていった。
 店内放送で迷子のアナウンスが流れる。
 他人事ではあるが、とりあえず一安心、と神羅は溜め息をついた。
 そして、ふと昔のことを思い出した。あの子と同じように幼稚園児だった頃
のこと。

 父親に遊園地に連れて行ってもらった時のことである。
 多分、その時父親はアイスクリームか何かを買いに行っていたのだろう。神
羅は一人でその場に立っていた。近くにいたのはその遊園地のマスコットの着
ぐるみ。それは周りにいた子どもたち手を振って違う場所へと移動しようとし
ていた。
 何となく気になったのであろう、神羅はふらふらとその着ぐるみの後をつい
ていった。
 案の定、迷子になってしまったのである。
 自分が迷子になったと気付いた瞬間、周りの風景が全く違うものに見えた、
ということを神羅は鮮明に覚えている。
 泣いたらダメだ、と思っていても泣きそうになる。ぐっと我慢をして下を向
いて。そして、虚勢なのだがぐっと前を向いて、ポケットに手を入れた。
 手にカサリと何かの感触がした。何だろうと思って取り出してみると、一枚
の人の形に切られた紙。そう言えば、父親が御守り代わりに出かけるときに持
たせてくれた。
 で、そのことを思い出すとまた泣きそうになる。そこでまた我慢して、手に
していた紙を見る。
 紙には文字が書かれていた。幼稚園児でも読める簡単な漢字。
「……いっぱく?」
 その文字を読んだ瞬間、紙がふわりと浮き上がってそのときの神羅よりも背
が高い、小学生くらいの子供になって着地する。一白である。
「……誰?」
「あれ? 主じゃないや」
 一白が神羅を見て首をかしげる。
「何してんの? ……まあいいや。主のところに行こうよっ」
 呆然としている神羅の手を引いて一白が遊園地の中を駆けていく。

「……そういや、あれが一白を呼んだ初めての時だったか」
 恥ずかしい記憶に軽く口を歪める。一白とともに父親の前に現れたとき、父
親は少し驚いた顔をしていた。
 それから、数年後、一白という式神を神羅が父親から受け継いだとき、形代
となる紙の文字を書き直したので今の一白はその時のことを覚えていない、は
ずである。
 だが、ひょっとして覚えていたとしたら。
「かなり恥ずかしいな」
 そう呟いて、手にした本を持ってレジへと向かう。
 そこには先ほどの幼稚園児がその母親らしき女性と手を繋いでニコニコと
笑っていた。

時系列と舞台
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回想シーンは20年ほど前。

解説
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こんな過去もあったということで

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