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Date: Wed, 1 Feb 2006 01:17:18 +0900 (JST)
From: ごんべ <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29726] [HA06P] 『世界に残す痕跡』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200601311617.BAA71987@www.mahoroba.ne.jp>
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Web: http://kataribe.com/HA/06/P/
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2006年02月01日:01時17分18秒
Sub:[HA06P] 『世界に残す痕跡』:
From:ごんべ
ごんべです。
リハビリ宣言しておいてなかなか出てこない珊瑚関連、とりあえず一本。
日常ものです。
MOTOIさん、台詞チェックよろしくですー。
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エピソード『世界に残す痕跡』
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発見
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珊瑚は戦慄を覚えていた。
失敗だった。何を見落としていたのだ、自分は。
図書館に来ることは半ば日課になっていた。
手持ちの資金の限られる彼女が世界や社会のことを知るためには、図書館は
格好の学習の場だった。
もちろん、表向き中学生である彼女はそうそう昼日中から図書館に出入りす
るわけにも行かない。そう言った点も含めて、なるべく耳目を集めないよう、
不自然に見えぬよう、注意を払ってきたつもりだった。
しかしだめだった。いや、間違っていた。
ここに来る限り、避けられない運命だった。
人波の中に埋没して人目を忍びつつも、その実、決定的な痕跡を毎日自分は
残していたのだ。
このことが人目を引くことは、絶対に避けなければならない。
できれば存在も知られてはならない。が、これまで残してきてしまった痕跡
が問題となる。それらを隠すことも無かったことにもできないなら、せめて、
気付かれても注意を集めないものにしなくてはならない。
そのためには……残さざるを得ない痕跡なら、なるべく周囲に同化するもの
にするべきだ。
自然に。密やかに。
すべき対策をあれこれと思いめぐらし、居ても立ってもいられなくなって、
珊瑚は図書館を後にした。
帰宅
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そしてどさりと机の上に積まれる冊子。
愛菜美 :「……それで、ペン習字?」
珊瑚 :「筆圧の細かい制御は、やはりケーススタディを積むこと
:が重要だからね」
愛菜美 :「そんなに……汚い字じゃないと思うんだけどなあ……」
珊瑚 :「読めるし書けるけれど、不自然であることには違いない
:から。他の人の字に比べて目立ってしまうわ」
かりかりかり。
珊瑚 :「……右へのハネが甘かったわね」(一人納得)
愛菜美 :「あうー……普通に書ければいいと思うよー」
その後、霞原珊瑚なる勉強家の少女の、貸出カードへの署名の文字がすこぶ
る綺麗だと図書館の司書達が語り合うようになるまで、さほど月日はかからな
かった。
……あれ?
(終)
登場人物
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霞原珊瑚(かすみはら・さんご)
:放浪中の少女型アンドロイド。追っ手の影に怯えている…はず、だが。
榎愛菜美(えのき・まなみ)
:珊瑚の居候先の娘。実は彼女もアンドロイド。
時系列
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2005年夏とか。
解説
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思い詰めたらどこまでも、些細なことにも身の危険を感じる珊瑚の、
日常のひとこま。
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ごんべ
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