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Date: Mon, 30 Jan 2006 23:29:32 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29720] [HA06N]小説『空を見上げる』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負（http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min）。
お題は
22:52 <Role> rg[hukira]HA06event: 倒れてしまったので困っているおじいさ
んが転んでいる ですわ☆
お茶目な爺さんシリーズ第三弾（え、シリーズだったの？
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小説『空を見上げる』
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登場人物
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火川猛芳（ひかわ・たけよし）：http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
帆川神社の宮司。
本編
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「うーむ」
目の前に広がるのは白く濁った青空。視界の隅には竹藪が見えている。
背中からひんやりとした石の温度が伝わってくる。
猛芳は境内の石畳の上で仰向けになっていた。
幸いというか何というか、周りには誰もいない。寝ころんだままの状態で彼
は何故こんな状況になっているのかを考えた。
顔を横に向ければ、首をかしげてこちらをじっと見ているアヒルのぬいぐる
みが一匹。そのプラスチックの目と猛芳の目があう。
「ガァ」
と、アヒルが鳴いた。
原因はこいつである。こいつが、境内を歩いていた猛芳が足を踏み下ろす地
点に丁度現れたために、避けざるを得なくなりバランスを崩して倒れてしまっ
たのだ。
確かに考え事をしながら歩いていた自分も悪いがな、と思いながら猛芳は再
び視線を空に向けた。
冬にしてはそんなに寒くない日。風さえ吹かなければ、そこそこ日も照って
いて悪くない陽気である。
こんな風に仰向けになって寝ころぶのは何年ぶりであろう。いや、おそらく
何十年ぶりという勢いである。
いつも見ている空が何だか違って見える。ほんの百何十センチくらいしか差
がないのに、やけに空が広く見えた。
「……まあ、こんなのも悪くはないのじゃが」
そう言って、猛芳は今度は反対側に顔を向けた。
そこには彼と同じように倒れている灯籠が一つ。
倒れる拍子にちょうど裏拳をかましたような気がする。そして、確かに殴ら
れた灯籠は倒れていて、よく見ると殴った部分が少し欠けている。
「……」
今頃になって右手がじんじんと痛み出す。しかし、猛芳にはその痛みよりも
灯籠を倒してしまった方が痛かった。手の痛みは放っておいたらやがては治ま
るが、この灯籠のへこみはどうしようもない。
仰向けになったまま溜め息を一つ。ガァ、と再びアヒルが鳴いた。
「よっしゃ」
かけ声をかけて勢いよく体を起こす。こんな時でも「よっこらしょ」とは言
わない。それがささやかな抵抗。
服に付いている砂を払って、倒れている灯籠に再び目をやる。そして、両手
を灯籠に回して抱えるようにして持ち上げる。
「そりゃ」
とりあえず、本体部分を土台の上に置く。本来あった位置とは少しずれてい
るが。
「ふんっ」
その本体の下の方を右の拳で何度か殴って位置を修正する。
「……まあ、こんなもんかの」
最後に、屋根の部分を本体の上に戻して修復完了。
「やれやれじゃわい」
額に浮かんだ汗を袖でぬぐって猛芳は呟いた。遠くから見れば、殴った後も
そんなに目立つものではない。
「まあ、よいか」
ばれたらその時じゃ、と猛芳は思う。そして、
「……ところでワシはなにをするつもりじゃったのかのう？」
そんなこと知るか、と言うかのようにアヒルがガァと鳴いた。
時系列と舞台
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2006年１月。帆川神社にて。
解説
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○爺さん vs. 灯籠（K.O.）
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