[KATARIBE 29718] [HA06N] 小説『雪と電車とトラブルと』

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Date: Sun, 29 Jan 2006 22:48:12 +0900
From: Motofumi Okoshi <motoi@mue.biglobe.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29718] [HA06N] 小説『雪と電車とトラブルと』
To: KATARIBE ML <kataribe-ml@trpg.net>
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MOTOIです。
「ラヴラヴのちドタバタ」シリーズ3作目。

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小説『雪と電車とトラブルと』
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登場人物
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 岡啓介(おか・けいすけ)
  :人狼。人のときはそんなに寒さに強くない。
 氷川美琴(ひかわ・みこと)
  :霊感少女。やっぱりそんなに寒さに強くない。
 橋本朱敏(はしもと・あけとし)
  :人狼。地雷踏みの確率は寒さに関係ない。


銀世界
------
 日曜日。
 昨日は低気圧の影響で、日本各地で大雪になった。
 オレの住む吹利も、例に漏れず大雪。メチャクチャ寒かったんで、変身して
の森の散歩も中止にして、一日部屋に閉じこもってたっけ。

 で。
 今日は、美琴ちゃんとの約束の日。
 ……何の約束かって? ……んなこと聞かないでくれよ(照)。

 ……オホン。で、まぁ、支度して外に出たわけよ。
 そしたらさ、もうあたり一面銀世界なわけ。
 吹利って盆地だからさ、都市部でこれだけの雪になるのは珍しいわけね。
 オレも、これだけの雪に遭遇したのは、吹利に来てからは初めてだったよ。

 さっきも言ったとおり、吹利の都市部で積雪なんて滅多にないわけ。だから、
雪道歩くの、慣れてないんだよね。
 車道はある程度車が通ってるおかげでそれほどでもないんだけど、歩道の雪
は相当深くてさ。足取られる取られる。
 かと思えば、中途半端に雪が少ないところは、アイスバーン化して滑ること
滑ること。
 こりゃ、相当歩くのしんどいわ……


合流
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「おはよ、美琴ちゃん」
「啓介さん、おはようございます」

 美琴ちゃんの家に着いたオレは、インタホンで彼女を呼んだ。
 彼女も支度を終えて、あとは出るだけって状態だったらしく、呼んだらすぐ
に出てきてくれた。

「それにしても、凄い雪だよね」
「そうですね、これだけの雪はひさしぶりです」
「じゃ、出ようか。歩くとき足元気をつけてね」
「はいっ」

 返事をすると、美琴ちゃんは、オレの手を握ってくる。
 ……もう付き合って2年以上経つけど、最初はいまだに緊張する。
 
 多分、オレの顔も彼女の顔も、いつものように赤くなってんだろうな……


想定外
------
「運休……?」
「……マジかよ」

 近鉄吹利駅。
 電光掲示板に映し出されているのは「ポイント故障により運転見合わせ」の
文字。

 聞くと、10分ほど前に線路のポイントが故障し、復旧の見通しは立っていな
いという。
 家を出たのは30分前。雪での交通乱れがないことを確認して出かけたはずが、
ポイント故障は想定していなかった。

 オレたちの目的地は近鉄沿線。JRや京阪でも行けなくはないが、歩く距離が
相当長くなってしまう。
 この積雪の中を歩き回るのは、相当の重労働だ。オレひとりならともかく、
美琴ちゃんをそこまで歩き回らせるのは……

「……どうする?」
「……どうしましょう」
「動くまで待つか、日を改めるか……」
「……啓介さんに、おかませします」

 任せられちゃった。
 どうするかなぁ……うーん。


雪道注意
--------
 結局。
 駅の近くで時間潰して、電車が早く動くようなら出発しよう、ってことに。

 とはいえ、さっきも言ったように、積雪の中歩くのは結構重労働。
 駅前の歩道は人が通ってる分それほどでもないけど、ちょっと路地に入ると
すげー積雪で、当然、歩くスピードも遅くなるわけ。
 あと、ちょっとしたことでバランス崩したりとかね。
 ……今思うと、少しでも距離短くしようと思って、路地に入ったのが失敗。

「美琴ちゃん、大丈夫?」
「だ、だいじょうぶです……」
 ……美琴ちゃん、どう見ても大丈夫そうには見えないよ。

 オレは、できるだけ美琴ちゃんに歩くペースを合わせた。
 手もしっかりと握って。

「あっ!」
 美琴ちゃんの声。いわんこっちゃない!
 オレは、とっさに、美琴ちゃんを抱きかかえようとする。

 ……位置が悪かった。
 美琴ちゃんが足を滑られたのは、おもいっきりアイスバーン。
 当然、慌てて美琴ちゃんを庇おうとした俺の足もよく滑るわけで……。

 どてーん。

 痛ぇ……。
 ものの見事に、美琴ちゃんの下敷きになるオレ。
 ちらっと上を見る。よかった、美琴ちゃんに怪我はないみたいだ。

「よー、もしかして、啓介の彼女? この前はゴメンな」
 …………。
 この声、まさか……。

「え……」
 ……あちゃー、美琴ちゃん、固まっちゃってるよ。

「この前勝手に啓介連れてっちゃってさー、悪い悪い。啓介にも謝っといてよ」
「あ、あの……」
「今日は啓介と一緒じゃないのか?」
「け、啓介さんは……」

「朱敏、オレはここだ」
 ……なんでいつもこういいタイミングで出てくるんだ、こいつは。
「え、啓介?」
「啓介さんっ、大丈夫ですかっ」
「うん、なんとか……」

 なんとか立ち上がった美琴ちゃんに続いて、オレも立ち上がる。
 見ると、美琴ちゃんは、俯いたまま顔を真っ赤にしている。
 今のシーンを見られたことを気にしているんだろう。

「あ、ありゃ、二人で出かけるとこだったのかい?」
 さすがにバツが悪そうな朱敏。
「で、電車乗るなら急げよ、もうすぐ運転再開だって駅で言ってたぜ?」
 もう奴自身も何しゃべっていいかわかんなくなって……って、運転再開?
「朱敏、本当か?」
「あ、ああ」
「よく知らせてくれたな。美琴ちゃん、出かけられそうだよ」
「は、はい」
「すぐ駅に戻ろう、美琴ちゃん」
「はいっ、わかりましたっ」
「じゃあな、朱敏」

 オレたちは雪に気をつけながら、駅へと急いだ。
 取り残された朱敏が何か言ってたようだが、この際気にしない(ひでぇ)。


そして再び
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「……踏み切りトラブル?」
「運転再開は延期だとー!?」

 どうして朱敏が絡んでくるとこうなるのか……。


時系列と舞台
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 2006年1月下旬。吹利市内。


解説
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 雪の中の啓介と美琴のデート。しかしまたもやトラブルが。

 なお、この話はフィクションです。
 実際の鉄道はそうちょくちょく止まらないはずです(爆)。

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