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Date: Wed, 25 Jan 2006 23:41:46 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29709] [KM01N]小説『古本屋、本屋に行く』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
再び影歩む街の話。
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小説『古本屋、本屋に行く』
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登場人物
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来間貴彦（くるま・たかひこ）：http://kataribe.com/KM/01/C/0011/
古本屋「孤隠堂」店主。正体は文車妖妃。
本編
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やはり、普通の本屋というのは古本屋を目の敵にするのだろうか。
貴彦は書店で本を物色しながら、そんなことを考えていた。立っている位置
は丁度レジの真正面で、そこには店長と思しき女性が立っている。
その女性が先ほどからじっと見ているような感じがするのだ。貴彦は自分の
身なりを確認してみた。別に古本屋っぽい格好ではない。まあ、ひょっとした
ら古本の匂いが染みついているかもしれないが、まさかそれが分かったという
わけでもあるまい。
「……ああ。店にいる時を見られたのかも」
思わず思考が口に出て、彼は左右を確認する。運良く近くには誰もいない。
というか、この店にいる客は彼一人しかいなかった。
それにしても、と貴彦は文庫の棚を右上から順に目で追いながら考える。
やはり書店は古本屋に比べると明るい感じがする。建物自体がそんな風に設
計されているのかもしれないが、何より本が煤けていない。どの本も天地や小
口がきれいである。古本だとそうはいかない。大抵は日に焼けていたり染みが
付いていたりしている。もっとも、それが古本の味といえば味なのだが。
どんなに大切に扱っていても時間の経過でどこかしらに劣化が生じる。そう
いった本に出会うと貴彦は非常に嬉しくなる。それがあるから古本屋はやめら
れない、と思う。
「ああ、あった」
棚の中から探していた本を見つけ、抜き出す。その表紙を撫でているうちに
顔が何となくにやけてくる。古い本も良いが、新しい本もやっぱり良いわけ
で。
「おっと」
慌ててにやけ顔を引っ込める。
一応買う予定の本は既にピックアップしている。後は何か面白げな本を探す
だけなのだが。
「やっぱり気になるな」
こちらを見る店長の視線がやけに気に掛かる。万引きしそうな客だと思われ
ているのだろうか。最近、万引きのせいで店が潰れたという話も耳にするか
ら、死活問題であるというのは分かるが、それにしては気にしすぎではない
か。
「一応見かけは普通の青年のはずだが」
レジを背にしたまま貴彦は苦笑を浮かべた。
そのうちに、店長の視線を感じなくなった。諦められたのか、どうでもよく
なったのか。
とりあえず文庫、新書、文芸書の棚を見終えて貴彦はレジに向かった。
「いらっしゃい」
お世辞にも愛想が良いとは言えない。だが、接客をおろそかにしているよう
な感じではなかった。
「5680円ね」
「あ、はいはい……」
財布からお金を取り出しているときに、店長がちらりとこちらの顔を見た。
一瞬だけ、背中がぞくっとして手を止める。しかし、何事もなかったかのよう
に再び手を動かして代金を支払った。
「はい。ありがとう」
本が詰まった紙袋が手渡される。お礼を言って店を出て、振り返り上を見上
げた。
「書店 雪風」という看板がひっそりと目立たないような感じで立てられて
いる。
時系列と舞台
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書店 雪風にて。
解説
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とりあえず、初めての接近（但し、貴彦は相手が妖怪だとは分かっていない）
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