[KATARIBE 29680] [HA06N] 小説『お子様達の愚痴』

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Date: Mon, 16 Jan 2006 00:16:46 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29680] [HA06N] 小説『お子様達の愚痴』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年01月16日:00時16分46秒
Sub:[HA06N]小説『お子様達の愚痴』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
気軽に書ける人どこー(えうえう)、というところで。
気軽なんだかわかりませんが、久しぶりに片帆です。
怒ってます(おい)。
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小説『お子様達の愚痴』
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登場人物
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  本宮史久(もとみや・ふみひさ)
   :吹利県警刑事部巡査。屈強なのほほんお兄さん。
   :とばっちりを食らうこと多し。
  軽部片帆(かるべ・かたほ)
   :毒舌大学生。相羽真帆の妹。相当のシスコン。

本文
----

「正直、相羽さんじゃなければ、姉さんさっさと離婚されてる気がする」
 ぶすっとして片帆が言う。
「…………ええと、なんと言ったらいいでしょうか」
 グラス片手に、史久が遠い目をする。

 すいません、相羽さんについて多少お聞きしたいことがあるんですが、と、
えらい丁寧語を羅列した言葉が留守電に入ったのは、先日のことである。
 周りが心配するほど落ち込んだ相羽が、昼頃帰っていったのが3日ほど前。
それから一日休んで、元気一杯出てきたのが昨日。

「なんか揉めてたらしいですよね」
「それは、真帆さんが?」
「何か……相羽さんの友達のことでちょっとね、とか言ってまして。そんで
普通ならあたし離婚されてるかもなーなんて笑ってたんですけど」
「…………」
 まあ、笑えるということは、危機は脱したということなのだろうが。
 が……片帆には他の意見があったらしい。
「……てか、それならそーで、どーして相羽さんも離婚しないのっ!」
 そっちかよ、と、複数から突っ込みが来そうな意見である。
「……どちらにとっても必要だからじゃないでしょうか」
 穏やかな史久の声に、片帆がぎろっと目を向ける。それにやはり穏やかな
声で。
「離婚したとして、真帆さんが……空に落ちずに留まってくれるでしょうか」
 流石にぐ、と、片帆が言葉に詰った。
「…………いや、必要は、いいとしときます」
 何だか百歩どころか千歩くらいは譲ったような口調である。
「しときますけど!」
「……何か、先輩が言いましたか」
「これ俺のって何っ」
 言葉と一緒に、どんっ、と拳でテーブルを叩く。
「あの人は……」


「一昨日、姉さんに用事があって、ちょっと行って来たんです」
 グラスを一気に空けて、改めて注文する。そして一つ溜息をついてから、片
帆は説明しだした。
 明日は成人式。姉に買った簪の話をしたら、後輩から『それを借りたい』と
言われたらしい。
「まあ、借りるくらいなら問題無いと思ったから、姉に電話して行ってきたん
ですけど」
 鼻の頭にきゅっと皺を寄せて、片帆は嫌そうな顔になる。
「……相羽さん居るし」
「丁度……怪我もあったんで、休んでいた筈ですから」
 冷酒のグラスを前に、史久は苦笑する。

「簪一緒に探して、結構色々あったんでちょっと姉で見ばえを確かめて、借り
てくのを決めたんですけど」
 ひんやりとしたグラスを手に、片帆の表情はまたもや険悪なものになる。
「相羽さんまで見に来るしっ」
「……まあ……先輩も数日忙しかったので」
「だからって姉の簪の具合を目の前で直すは、何かっちゃ頭を撫でるは……
あたしの目の前でやりますか普通っ!」

 はあ、と、大きな溜息をついて、史久が額に手を当てる。
 以外だから、ではない。
 異様なまでにはっきりと想像でけるあたりが……問題なのである。

「……それに……綺麗な櫛があったんですよ。だから、これ綺麗ねって言った
ら、あ、それ俺が買ったって……自慢するしっ」
「…………あの人は……」
 もはや、諦めの溜息交じりである。

「あたしも何か……それで喧嘩するのもつまんないから、真帆姉に一緒に外に
珈琲でも飲みに行こう、一時間くらいでいいからって言ったんですよね」
「……はあ」
「そしたらっ」
「…………何か言いましたか」
「俺が休みだから駄目、今から一緒にお茶だから駄目……だそうでっ」


 その前日。
 真帆が奈々に相談した内容を、当然ながら史久も知っている。聞いた時には
二人揃って、
『もう、あの二人はっ』
 ……と、頭を抱えたものである。
 で、その翌日なら……確かにそのくらい言いそうではあるのだが。

(それにしても……子供ですか先輩……)


「真帆姉も真帆姉でっ」
 またも一気にグラスの半分を空けた片帆が唸る。
「行こうって引っ張ったら、お茶の用意してないから……って断わるしっ」
「……引っ張った?」
「手を引っ張ったら、相羽さん、駄目って引っ張り返すもんだからっ」
 一応、義理の兄妹で、真帆の引っ張りあいっこ。
 どっちもどっち、五十歩百歩、どんぐりの背比べ、と、一連のことわざが目
前に浮かぶ気のする史久である。

「……ええ、そりゃー、お茶の時間でしたよ。お菓子とか食べたかったかもし
れませんけどっ」
 無論のこと、そのようなことは片帆の目には入っていない。相変わらずぐっ
と片手握り拳で。
「ダメ、って何っ!」
「……本当、駄々っ子ですから」
「お茶とお菓子くらい、一人で食べればいいじゃないですかっ!子供じゃある
まいしっ」
「……ある意味、子供ですから」
 はいはい、と、空になったグラスを横に避けて、次のグラスを注文する。

「……ほんっと困った人達だことっ」
 ぷんすか、と、片帆は怒っている。
 困った人にあなたも含まれると思います、とは、流石に言わずに史久は苦笑
する。
 グラスは次々空になる。
 片帆の愚痴は……しばらく続きそうである。


時系列
------
 2006年1月8日

解説
----
 義理の兄と妹の、ごたごた風景……と言いたいとこですが。
 岡目八目付近から見ますと、お子様達の喧嘩にしか見えないあたりが(苦笑)。
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 なんかこー、当初の予定に反して、えらいおこちゃま化が激しいです>片帆
 なんだかなー
 ……ではでは(笑)
 


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