[KATARIBE 29675] [HA06N] 小説『放たれる黒い羽 side. 知佳』

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Date: Sun, 15 Jan 2006 00:44:33 +0900
From: Motofumi Okoshi <motoi@mue.biglobe.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29675] [HA06N] 小説『放たれる黒い羽 side. 知佳』
To: KATARIBE ML <kataribe-ml@trpg.net>
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MOTOIです。
なにかと話題の黒千香の誕生話、まずは知佳視点からお送りします。
そのうち千香視点も書く予定。

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小説『放たれる黒い羽 side. 知佳』
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登場人物
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 白神知佳(しらかみ・ちか)
  :小学生離れした背の高さと胸の大きさを持つ小学5年生。
 黒影千香(くろかげ・ちか)
  :知佳にそっくり、でも知佳よりどこか妖しい小学5年生。
 煙山園子(けむやま・そのこ)
  :知佳のクラスの担任。
 豊川火狐(とよかわ・かのこ)
  :知佳のクラスメイト。


夢の中
------
 暗い。

 周りは真っ暗で、何も見えない。
 見えるのは、ただ、漆黒の闇。

「ここは、どこ?」
 知佳の声に応える者は、いない。

「まっくらだ……怖いよぅ」
 呟いても、助けてくれる者は、いない。

 白い羽を広げ、闇からの脱出を試みる。
 でも、闇の切れ目は、見えない。

 不安になった知佳の耳に、かすかな声が聞こえてきた。

『あなたが知佳ね』
「だ、だれ?」
『背が高くて、胸が大きい……知佳ちゃん』
「お、大きくなりたくて大きくなったんじゃないもんっ」

 自分のコンプレックスを指摘され、激昂する知佳。
 しかし、そんな知佳にかまわず、声は続く。

『どうしてそんなに嫌がるの? みんな羨ましがってるのに』
「だ、だって……みんなにからかわれるし」
『からかわれる? ふっ、あんなガキどもの言うこといちいち気にしてどうす
るのよ。みんな本当は羨ましくてしょうがないに決まってるわ』
「そ、そんなことないよぅ」
『どうしてもからかわれるのが嫌っていうなら……あなたのその力で黙らせれ
ばいいじゃない』
「あ、あう?」
『殴るなり投げ飛ばすなり……その怪力があれば思いのままでしょ?』
「だ、だめーーーーっ!! おともだちにそんなことしちゃだめなのっ」
『あなたができないって言うなら、私が代わりにやってあげましょうか?』
「え? え?」

 その直後。
 周りの漆黒の闇が急速に消えていく。
 ……いや、消えているのではない。一箇所に集まり、人の形を形成していく。

 やがて闇がすべて集まり、一人の少女に変わる。
 その少女の姿を見て、知佳は絶句する。

「ええっ!? ……わ、わたしとおんなじ顔になった!?」
 知佳の言うとおり、知佳の目の前にいるのは、知佳と瓜二つの少女。
 だが、その目は冷たい。知佳と同じ身長のはずなのに、知佳は彼女に見下ろ
されている感覚を感じていた。

「私はチカ。あなたと同じ、ね」
「あ、あううぅ!?」
「理解できないって感じね。まぁ、そんなことはどうでもいいわ。とにかく、
私は自分の体を手に入れたのよ」
「あう……」

 まったく理解できず立ち尽くす知佳に対し、チカと名乗った少女はさらに続
ける。
「これから、あなたをからかうような連中を懲らしめにいくわ。一度懲らしめ
れば、あなたの力に逆らうような人は存在しないわよ」
「こ、こらしめる?」
「そう。まずは挨拶代わりに軽く一発。それでも懲りないようなら、腕や足の
一本くらい折ってあげようかしら」
「だ、だ、だ、だめだめだめーっ、そんなことしちゃだめなのーっ」

 この子を止めなければ。
 そう思った知佳は、チカと名乗った少女の足を思いっきりつかんだ。

 がしっ!!

 たしかに、つかんだ感触が残った。


夢から覚めて
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「……あう?」

 知佳が目を覚ましたとき、そこは自室のベッドの上。
 時計を見ると、午前7時。いつも起きてる時間だ。
 ただ、いつもと何か違う。……部屋の中が、やたら寒い。

「さ、さむい……変だなぁ、いつもより寒いよぉ」

 そう思った知佳は、部屋の中を見回してみる。
 寒い理由は、すぐに特定できた。部屋の窓が開いたままになっているのだ。
 もしも雨が降っていたとしたら、部屋の床は水浸しになっていたことだろう。
「ど、どーして窓なんか開いてるんだろう。いつも鍵かけてねてるのにー」

 しかし、愚痴っても仕方がない。とりあえずは、ベッドから跳ね起き、窓を
閉める。

「うーん、何か変な夢見た気がするんだけど……」
どうしても思い出せない知佳。
「……まあいいや、早く学校行く準備しなきゃー」

 それほど深く考えるタイプではない知佳である。
 その後は、いつもどおりの着替え、いつもどおりの朝食、いつもどおりの学
校へと出かけるのであった。

「それじゃ、学校にいってきまーす」


おかしな転校生
--------------
 それから数日後のこと。

「今日は転校生を紹介しま〜す、みんな、仲良くしてあげてね〜」
 5年3組担任、煙山園子の号令で、ほとんどのみんなが一斉に前方を注視する。

「黒影千香ちゃん。……あら、白神知佳ちゃんとおんなじ名前なのね〜。みん
な、仲良くしてあげてね〜」
「むにー、ちかちゃんにそっくりだー」
 クラスの児童の一人、豊川火狐がおおげさに驚く。

 確かに、その転校生の外見は、髪型といい、背の高さといい、胸の大きさと
いい、知佳にそっくりであった。
 だが、知佳よりも肌の色は黒く、また、目つきも鋭く見える。
 もちろん、当の知佳本人も、それは感じていたが……知佳は他のことが気に
なるようだ。

「なんか、どこかであったような気がする……」

 そんなはずはない。黒影さんなんて初対面だし、見かけたこともない。
 でも、なぜか、知佳にはそう感じられたのである。
 そんなことを考えていると、千香のほうから知佳に話しかけてきた。

「よろしくね、白神知佳さん」
「よ、よろしく……」
 初対面のはずなのに名前を呼ばれている知佳だが、そのことに気づかない。
「あうー、なんか怖そうだなぁ……」

 なんとなく怖いクラスメイトに、戦々恐々とする知佳であった。


時系列と舞台
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2006年1月上旬、冬休み終了から数日後の吹利学校初等部教室と知佳の家。


解説
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 おかしな夢を見た知佳。その後、おかしな転校生がやってくる。

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