[KATARIBE 29661] [HA06P] 『一周年、二周年』

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Date: Mon, 9 Jan 2006 03:17:35 +0900 (JST)
From: ごんべ  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29661] [HA06P] 『一周年、二周年』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年01月09日:03時17分35秒
Sub:[HA06P] 『一周年、二周年』:
From:ごんべ


 ごんべです。

 半年ほどろくに書き物ができなかったので、リハビリのEPをば。
 主に珊瑚と陽の関係を書いていくつもりですが、やろうとしていたネタを
復活させてつらつらと出していくつもりなので、時系列が結構ぐちゃぐちゃ
です。ご容赦を。

 まずは、前野氏をお借りしています。ハリさん、チェックよろしう。


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エピソード『一周年、二周年』
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登場人物
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霞原 珊瑚 (かすみはら・さんご)
   :出自不詳の少女型アンドロイド。
   :前野との腐れ縁が昂じて、しばしば彼のクライアントともなる。
   :その一環で、空間操作トラップ型の術「影術」を習っている。
前野 浩 (まえの・ひろし)
   :事象をロジック化することによって操作する能力に長けた、
   :無道邸の執事見習い。様々な超常のもめ事の解決も請け負う。
   :その能力によって、怪しげな術を創造・行使することも多い。


時系列
------
 2005年9月初頭。


本編
----

 まだ強い初秋の日差しもそこには届かないかのような、ひいやりとした空気
が心地よい無道邸の一室にて。

 前野     :「……ふむ」
 珊瑚     :「?」
 前野     :「だいぶ様になってきたな」
 珊瑚     :「……そう言ってもらえるとやってきた価値があるわね」

 先生役の口から出た思いがけぬ誉め言葉に、生徒の珊瑚は複雑な笑みを浮か
べて次の詠唱を休止した。

 珊瑚     :「何しろ今日で、教えてもらって50回目、日付で言えば
        :1年は既に超えているのだから」
 前野     :「……ああ、もうそんなになるか」

 今度は前野の方が意外そうな顔をして、ふむ、そうか、などと言いながら
記憶を辿っている。

 珊瑚     :「この系統の術しか使えない、相変わらず対処もできない、
        :という点は課題だけれど」
 前野     :「そんなことは特に問題じゃない」

 珊瑚の自己分析に、応じ慣れた風情で即座に言葉を返す前野。

 前野     :「バスケットボールのプロ選手が水泳でもエキスパートで
        :なければならないという法は無かろう?
        :人間にしかできない術があるとは言え、それを極めていな
        :かったとしても別段困ることはあるまい」
 珊瑚     :「でもこれは競技じゃないわ、この術を使う様なケースは」
 前野     :「かと言って、無法の戦場でもバトルロイヤルでもない。
        :あえて考慮すべき戦術があるとすれば、戦況を少しでも
        :自分の得意分野に持ち込むことか、あるいは相手の立場を
        :思いやること、だな」
 珊瑚     :「?」
 前野     :「前にも言っただろう? こういう術を使う者がいても、
        :そうそう一般の目がある場で使える訳じゃない。そう言う
        :立場を突いて、双方動けない状況を作って戦いをお流れに
        :する方法、だな。駆け引きだ。不倶戴天の敵でもなければ、
        :だいたいこの方法が効く。その方向の戦術なら、お前でも
        :今までの経験を活かせばむしろ得意な方だろう」
 珊瑚     :「……なるほど」

 歯に衣着せない物言いをしているかと思えば誉めてみたり、また搦め手の
攻め方を教示したりする点も、相変わらずの前野である。今では珊瑚自身も、
自分の固定観念に風穴を開ける間柄だと自覚している節がある。

 珊瑚     :「……そういえば、あなたと会ってからも、もうすぐ2年
        :になるのね」
 前野     :「……ああ、そうだったか」
 珊瑚     :「最初あなたと会った時は、一刻も早く排除すべき無礼な
        :存在だとしか思っていなかったけれど」
 前野     :「失礼なやつだ(苦笑)」
 珊瑚     :「お互い様だわ。忘れたの?」

 そこで、ふ、と言葉を切って。

 珊瑚     :「……これからも、お付き合いいただけるかしら」
 前野     :「そちらにそのつもりがあるなら、特に異論は無い」
 珊瑚     :「迷惑は、おそらく一方的にかけてしまうでしょうけどね」
 前野     :「クライアントとしては付き合い切れんがな。不肖の弟子
        :と思ってあきらめるさ。骨は拾って有効利用してやると
        :言ったろう?」
 珊瑚     :「そうだったわね。……そうなるつもりもないのだけれど
        :(苦笑)」
 前野     :「まあやれる範囲でやればいいさ。何でも自分でできると
        :は思わない方がいい」
 珊瑚     :「ありがとう」

 前野を見つめる、珊瑚。

 珊瑚     :「今後も、よろしくお願いします」(大仰に深々と礼)
 前野     :「こちらこそ」(紳士然と受け答え)

 顔を上げた珊瑚は、少しだけ照れたように笑って……そのまま、黙って再び
術の練習へと戻った。前野もまた然り。

 そしてまた、日常が始まる。


(終)


解説
----

 いつしか前野と長い付き合いになっていることに気付く、珊瑚。
 その間に流れる想いは、変わったのか。


$$

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 ブランクだなあ。(滅)

 2年の経緯を持った間柄を、つみきちゃんに誤解させるとかいう話も
考えたり考えなかったりしたのですが、それは追々。(ぉぃ)


 ではでは。

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ごんべ
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