[KATARIBE 29658] [HA06N] 小説『黒幕達の会話』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Mon, 9 Jan 2006 00:45:43 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29658] [HA06N] 小説『黒幕達の会話』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200601081545.AAA32636@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 29658

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29600/29658.html

2006年01月09日:00時45分43秒
Sub:[HA06N]小説『黒幕達の会話』:
From:久志


 久志です。
 本宮家お家騒動、黒の系譜親子の会話です。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『黒幕達の会話』
====================

登場キャラクター 
---------------- 
 本宮尚久(もとみや・なおひさ)
     :本宮家三兄弟の父。黒の系譜の一人。
 本宮史久(もとみや・ふみひさ)
     :県警刑事部巡査。本宮家長男、黒の系譜を継ぐ一人。

父息子の会話
------------

 吹利市内。近鉄吹利駅から商店街を抜けた先、一戸建ての立ち並ぶ住宅街に
ある本宮家にて。

「青梅家のご子息さん、ですか」 
 本宮家一階にある書斎のソファに腰掛け、ティーカップを片手に持った史久
が微かに眉を上げた。
「ああ、跡継ぎとして本家いりするようだよ」
 向かいの席に座り普段と変わらぬ穏やかな笑顔を浮かべたままで尚久が頷く。

「なるほど、僕としては万々歳ですが」 
「まあ、一応後見人として私がつくことになるのだがね」 
 本家跡継ぎに史久やその息子を、という親族の思惑や策謀で何度となく親族
に振り回されてきた史久にとっては、正式な後継が決まるのは願ってもない。
 だが、父・尚久の言葉の奥にどこか底知れない深い思惑があるのを直感的に
史久は感じ取っていた。

「…………父さん、何をもくろんでいらっしゃいます?」 
「はて、なんのことかな」 
「戸萌の加津子刀自がそうそうに他家の者を跡継ぎにすることに了承したとは
思えませんが?」
 じっと真っ直ぐに見つめる史久の視線を受けて、目を細めて微笑する。
「いやなに、昔からのしがらみに縛られすぎているからね、そろそろ旧体制の
あの家を壊してやらないといけないかと、ね」
 こともなげに言い放ち、いたずら小僧のように笑う尚久。
「そして、父さんは密かに本宮、戸萌、青梅いずれの影の実権を握る、と?」
「やれやれ、人聞きの悪いことを」 
「……父さんのことは僕が一番良く知っていますから」
「いずれにせよ、名だけに頼った家は衰退するのみ。中身の問わない形骸だけ
の家などは必要ないんだよ」 
「なるほど」
 かちゃり、とティーカップを置いて小さくつぶやく。

「史久、私はね。母さんとお前たちといずれ生まれる孫達と、穏やかで静かに
暮らして生きたいんだよ。それを家などという形もないものに捕らわれて乱そ
うとする輩に邪魔されたくないし、口を挟まれたくないんだよ」 
「捕らわれずに生きる為に、全てを掌握すると?」
「そのつもりだ」
 平静に決まりきったことのように断言する尚久の答えに、口元に小さく笑み
を浮かべる。
「お手伝いしますよ、父さん。その願いは僕も望むところです」

 親子二人、全く同じような――心の奥に秘めた野心を垣間見せる――凄絶な
笑みを浮かべて頷きあう。

「父さん、どう動くおつもりで?」 
「まずは元久くんを本家に迎えることで、言葉は悪いがオトリになってもらう」
「それだけですか?」
「ははは、多少目端が利く者の目にはそう映らないだろうがね」
「僕が父さんの名を借りて、元久くんを擁して本家を操ろうとしている、と」
「目端の利くものがお前をけん制している間に、元久くんの後見という立場で
私が青梅家に乗り込み足場をつくる」
「ええ、あちらにはまだこちらの影響力は小さいですからね」 
「ああ、逆を言うとこちらのことを知られていない分、警戒されずに内部に踏
み込むこともたやすい」
「そして、僕の役目は父さんの隠れ蓑として本家や分家の視線を逸らし、かつ
父さんが青梅を掌握する間に本宮、戸萌双方の有力者を引き込み外堀を埋める
準備を整える」
「やれるか?」
「無論」
「いい返事だ」
「……やはり、策士ですね。父さん
 満足げに頷いて、ふと顔をあげる。
「ああ、加津子刀自と本家の良雄くんには注意しなさい」 
「ええ、大叔母様はわかりますが……良雄おじさんも?」 
「彼を甘く見ないほうがいい、対人では少々頼りないが金についてはめっぽう
強い。それに以外と策謀家だ、目端も利く。どちらか有利なほうをかぎつける
能力は高い」 
「確実にこちらについたほうが有利であると状況になるまでは、警戒したほう
が良さそうですね」
「ああ、だが他の親族連中も伏魔殿の何恥じぬ猛者揃いだ、覚悟しなさい」
「承知」
 
「さて、行くか。伏魔殿に」
「ええ、お供します。父さん」


時系列 
------ 
 2005年12月初旬。
解説 
----
 陰謀渦巻く本宮家、黒の系譜父息子の会話。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。


 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29600/29658.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage