[KATARIBE 29652] [HA06P] エピソード『冬稽古』

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Date: Sat, 7 Jan 2006 17:35:58 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29652] [HA06P] エピソード『冬稽古』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年01月07日:17時35分57秒
Sub:[HA06P]エピソード『冬稽古』:
From:久志


 久志です。
ちょろっとチャットで出た東西タラシ男の剣道対決です。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
エピソード『冬稽古』
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登場キャラクター 
---------------- 
 相羽尚吾(あいば・しょうご) 
     :吹利県警刑事課巡査。ヘンな先輩。
 桃実匠(ももざね・たくみ)
     :桃実一刀流小太刀術の伝承者。吹利県警生活安全課長の息子。
 相羽真帆(あいば・まほ) 
     :自称小市民。多少毒舌。10月に入籍。
 葛城比呂(かつらぎひろ)
     :吹利県警刑事課巡査。九州から来た人。

道場にて
--------

 冬の吹利県警剣道場。
 吐く息も白く煙る中、氷のように冷たい道場の中はだしで駆け回り、竹刀が
撃ちあう音が響く。

 匠      :「面!」
 若手警官   :「わっ」

 正面から奇麗に打ち込まれた竹刀が寸止めの位置で止まっている。
 思わず尻餅をついた若手警官に手を差し出して引張りあげる。

 若手警官   :「すみません」
 匠      :「いやぁ、ありがとうございます。おかげさまで、勉強に
        :なりました」

 向き合って一礼し、短刀の長さの竹刀を軽く刀一振りする。

 匠      :(しっかし、最近の警察もレベルが落ちたなぁ──ぜっん
        :ぜん修行にならんやんか。これじゃ)

 ほうほうの体で引き上げる若手警官を見送って。

 匠      :(これならセンパイにでも相手してもろうた方がなんぼか
        :マシや)

 にこやかに笑いながらあたりを見回す。先ほどから数人手合わせしたものの、
手ごたえのある相手はいない。

 相羽     :「ほぉーやるもんだねえ」

 ふと見た視線の先、胴着姿のまま道場の片隅で観戦を決め込んでいた相羽と
目が合う。

 匠      :(なんか面白そうなのがおる)

 直感で只者でない何かを感じて、口元に笑みが浮かぶ。

 匠      :「そういえばさっきから、ずっと見てらっしゃいましたね」
 相羽     :「ん?」
 匠      :「その風格、頭の人と見ましてんけど──お手合わせいた
        :だけませんか?」 
 相羽     :「俺?まあ、見ててもおもしろいもんだしね」

 にやりと笑って肩をすくめる。

 相羽     :「いやあ、オジサンにゃきついかねぇ」
 匠      :「(あー、このかわし方は相当、自信があるんやな)
        :いやいや、そうおっしゃらんと。ぜひ(にたにた)」

 真帆     :(なんか、似たような二人……)

 道場の片隅、コートを着こんで観戦している真帆。

 比呂     :「相羽さん、なんばしよっとね?」 
 相羽     :「ん、ああ。うちの連中じゃ物足りないらしいね、
        :この御仁」

 喉の奥で笑いながら、匠と目を合わせる。

 比呂     :「うわぁ、そりゃすごかね」 
 匠      :「いやいや。物足らんなんて、そんな滅相もないですわ。
        :ただ若さにまかせて数こなしてるだけですわ」 
 相羽     :「いやあ、さっきから見てたけど。若さにまかせてという
        :割には随分キレのある太刀筋だったけどねえ」

 舌なめずりするように笑う相羽とへらへらとはぐらかすように笑う匠。

 比呂     :「ふぅん、実戦的なんやろねぇ」 
 匠      :「それはほら、買いかぶりっちゅうもんですわ。どうです
        :やろ? ここは言葉を尽くしてみてもわかるもんでなし」 

 片手にもった短刀竹刀をすっと構えて相羽を見据える。一瞬間を置いて相羽
がゆらりと体を起こて傍らの竹刀を手に取った。

 相羽     :「手合わせねぇ……まあ、怪我しないように頼むわ」 
 比呂     :「がんばってんしゃ〜」 
 匠      :「ほな(ふむ──やっぱりただもんやないな)」
 相羽     :「葛城、審判たのむわ」
 比呂     :「了解でさぁ」 

 道場のに向かい合って立ち、互いに竹刀を構える。

 比呂     :「はじめっ!」

 審判の掛け声がかかるが早いか、たんッ、と床を蹴るようにして一気に間合
いをつめる匠。

 相羽     :「……ほう」

 受ける相羽は正眼に竹刀を構えたまま、全身から湧き上がるようなどす黒い
気合を全身にまとったまま構えている。

 匠      :「もらった」

 一気に距離を詰めて、タックルするように身体を沈めて下から竹刀を切り上
げる。

 匠      :(真っ向から、あんな殺気浴びたら動けんからな)
 相羽     :(ほおう、やるもんだねえ)

 狼が舌なめずりするような笑みを浮かべながら。とん、と後ろに跳び退りつ
つ切り上げてきた小手を狙う。

 匠      :「──おわっ、たっ」

 とっさに崩れた体を持ち直しさらに踏み込んで組み打ちの間合いに飛び込み、
組討の間合いから裏を狙う。

 匠      :「この間合いなら」 
 相羽     :「ほおう」
 匠      :「こっちの方が有利ですやんな」
 相羽     :「そうかい、じゃあこっちも」

 引いた足を踏み込んで、飛び込んできた匠の体を押さえにかかる。

 匠      :「ひゃっ」 
 相羽     :「楽しいねぇ」

 すっと腰を落としてやり過ごす匠。

 匠      :「なんや、こっちの間合いの方が得意ですやんか」
 相羽     :「なるほどね……そうそう取らせちゃくれないか」
 比呂     :(はー、ハイレベルやね〜)
 真帆     :(ごくんと唾を飲んで見守る)

 二人の試合を見守りながら、眉を少し動かしながら感心する比呂と固唾を飲
んで見守る真帆。

 匠      :「あかんなぁ(くつくつ)」
 相羽     :「やるもんだねえ(にやにや)」

 すかさず間合いをとる匠、再び少し低い位置で構えてにやりと笑う相羽。
 互いに笑っているが、その目の奥は鋭い。

 匠      :「さて。やっぱり拮抗したら格下から動くのが礼儀ですや
        :ろなぁ」 
 相羽     :「意外と礼儀正しいねぇ」 
 真帆     :「…………(猫っかぶりの二名(汗))」 
 比呂     :「(ん〜、楽しそうったいね)」 
 相羽     :「じゃあ、逆に打って出ようかな」 

 言うが早いか再び間合いをつめてくる匠を迎え撃つように相羽が跳んだ。

 匠      :「そら、申し訳ないですわッ」 

 笑いながら全身に殺気をみなぎらせて取りに行く相羽。

 比呂     :「相羽さん、こわかねぇ」
 真帆     :「(タイプとして似てるのかな、この二人)」

 とっさに斜め前に飛び込んで転がる匠。

 匠      :「ほな裏を取らせてもらいますわ」 
 相羽     :「うまく、いくかね?」

 かわされて、即座に踏みしめて向きを改める相羽に向かって、くるっと立ち
上がって、地を這うような低い姿勢で飛び込み脛払いを狙う匠。

 相羽     :「させるか」
 匠      :「っと、こうやっ」

 体勢を落として振りかぶる相羽に対し、咄嗟に上から降りかかる刀を短刀で
うけつつ、肘を跳ね上げる

 真帆     :「…………(拳の先を、ぐ、と噛んで見てる)」
 比呂     :「ん〜」

 双方睨みあったまま動きが止まる。
 跳ね上げた匠の肘をギリギリの位置で押さえる相羽の手。

 一瞬の間を置いて、同時に両者から力が抜ける。

 匠      :「あー、流石にイイオトコは顔のガードが固いわ」 
 相羽     :「いやあ、やるねえ少年」 
 真帆     :「…………(ほ)」
 比呂     :「いかんったい、時間忘れ取った。」 
 匠      :「まぁ、カノジョさんが居るところで顔腫れさすわけには
        :あかんですもんねぇ」 

 ちらりと視線を真帆にめぐらせて、くつくつと喉の奥で笑う。

 相羽     :「腫れたら薬でも塗ってもらうよ(にや)」
 匠      :「うわっ、イイオトコはなにしても得するようにできてま
        :すんかッ。理不尽やっ」 
 相羽     :「さてねえ、そっちこそおネエちゃんがほっとかないイイ
        :男でしょ」 
 真帆     :(なーにを話してるんだか(汗))
 比呂     :「まぁ、よかったいね。丁度終わったことやし」

 手をあげて時間切れを宣言し、双方元の位置に戻る。

 匠      :「(ここで油断したところを不意打ちっちゅうのも面白い
        :んやけど──まぁ、油断しとらんやろうなぁ。冗談言いな
        :がら目が笑っとらんってのも不気味やぞ)」 
 相羽     :「(いやあ、なかなか、やる奴がいるもんだねえ)」
 比呂     :「ちょいと長引いたけど、引き分け。双方礼!」 

 両者頭を下げてようやく張り詰めた緊張が解ける。

 比呂     :「あー、良い試合やったったいね。」 
 匠      :「いやぁ、あんまり強うてビックリしましたわ。お陰さま
        :で勉強になりました」 
 相羽     :「やれやれ、オジサンもう結構ガタきてるんだからさあ。
        :勘弁してよ」 

 その言葉の割には楽しそうに肩を鳴らしつつ笑っている。

 匠      :「(あとでオヤジに名前聞いとこ)」 
 真帆     :「(やっぱ似てる、あの二人)」>汗
 比呂     :「(なんか二人とも似てるったいね……)」
 匠      :「なに言うてますねん。若者に動かさせるだけ動かさせと
        :いて。自分、動いたの大技一発だけですやんか」
 相羽     :「俺、かなりギリギリだよ?余裕あるのは、まあフェイク
        :だね(にやにや」 
 匠      :「うわ。そういう台詞がまた余裕っぽい」 
 真帆     :「(つーか……この場合狸二名だなー)」
 比呂     :「(狸と狐……)」 

 にやにやと笑いあう両名を見て、思わず額を押さえる真帆。

 匠      :「あぁ──もうこんな時間や。お巡りさん、もしよかった
        :ら飯でもどうですやろか? 勉強させてもらったお礼にオ
        :ゴリますわ」 
 真帆     :「…………へ?」
 相羽     :「おやおや、今時の学生さんにしちゃ、随分お勉強してる
        :もんだねえ」 
 匠      :「言うても、オヤジからくすねた食堂の食券ですけど」
 相羽     :「……食堂?親父さん、ここの関係者?」 

 おや、と軽く眉を上げる。

 匠      :「あー、うちのオヤジ、生活安全課の桃実ですねん」 
 相羽     :「ああ……あの桃実課長んとこの息子さんか」
 比呂     :「あ〜、そうやったと〜。」

 思い当たってぺちりと頭を叩く比呂と、喉の奥で笑う相羽。

 匠      :「あの、ちょっと疲れた中年入った昼行灯の中間管理職。
        :似てへんですやろ?」
 相羽     :「いやあ、ああ見えて意外と指導は厳しいって評判だよ?」

 狸ぶりはよく似てるよ、と口には出さずに。

 真帆     :「(……ああ、高校生だわ(汗)>匠君のお父さん評)」
 匠      :「はぁ、最近はなんか交通課と共同で芝居してるとか」 
 相羽     :「……ああ、アレね」 
 比呂     :「……(ぷ)」
 真帆     :(頭痛) 

 思わず道場の壁に貼ってある宇宙刑事マメシバンのポスターを見てにやける
比呂と相羽。

 匠      :「道場の壁に着ぐるみ吊るして、あーでもない、こうでも
        :ないとか言うてますわ」 
 相羽     :「結構評判なんだよ?担当の子なんか小学生に追い回され
        :るほど(くっくっく)」 
 匠      :「あー、マメシバンの兄さんですね」 
 真帆     :(あーあーあ(頭いてー)) 
 相羽     :「惜しいねえ、来てたら紹介したのに(楽しそうに」 
 匠      :「ウチのガッコの漫研が騒いでましたわ。ウルフなんとか
        :いう悪の幹部と攻めだの受けだのと」
 真帆     :(ごほっ) 

 思わずむせる真帆と流石に一瞬微妙な表情になる相羽。

 相羽     :「…………やれやれ、油断ならない世の中だね」 
 匠      :「(あー、なるほど。この人やったら、そりゃうちの女子
        :どもにも人気やろな)」
 比呂     :「っっくくくく(笑いを耐えてる)」 
 匠      :「まったく迷惑な話ですやんなぁ。立派にカノジョさんも
        :おるですやろに。その人らにも」 
 相羽     :「面白いからいいんじゃない? まあ、人気あるのはあり
        :がたいことだよ。んじゃ、オゴリはありがたくお受けしよ
        :うかね」 
 真帆     :(面白いって言うかなあ……) 

 チラッと真帆を見て、ちょいと着替えてきますわと言い残してけらけら笑い
ながら更衣室に向かう匠。

 相羽     :「真帆」>ちょいちょい手招き
 真帆     :「はい?」>ぴょっと立って 
 相羽     :「ちょっと着替えてくるから待ってて」 
 真帆     :「……えーっと。ご飯食べてくるんでしょ?」
 相羽     :「あれ、お前さんはいかんの?」 
 真帆     :「あたしが行くと、剣道の話にならないじゃないか」
 相羽     :「来てなくても剣道の話にならなさそうだけどねえ」

 それはそうだろうけど、と口の中でつぶやきながら小さく俯く真帆。

 相羽     :「じゃあ、ちょっと行ってくる。見学しないなら先帰って
        :てもいいから」 
 真帆     :「行ってらっしゃい」 

 ひらひらと手を振って更衣室へと消えていく。

 比呂     :「ん、ついていくかなぁ、自腹なら問題なさそうやし。」 

 この後、県警食堂にて東西タラシ二人の腹の探り合いトークで盛り上がるの
はまた後の話。

時系列 
------ 
 2005年12月初旬。吹利県警剣道場にて。
解説 
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 県警剣道上にて、手合わせをする東西タラシ二人。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。



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