[KATARIBE 29651] [HA06N] 小説『一月一日(上)』

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Date: Sat, 7 Jan 2006 01:04:45 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29651] [HA06N] 小説『一月一日(上)』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年01月07日:01時04分45秒
Sub:[HA06N]小説『一月一日(上)』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
ようやく……今年になりました。
てか、話のことですが(そして今年になった途端大荒れですが)。

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小説『一月一日(上)』
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登場人物
--------
 六華(りっか)
  :冬女。元軽部真帆宅から桜木家へ、そして現在本宮家の一室に住む。
 相羽真帆(あいば・まほ)
  :少々毒舌。去年の冬に六華を拾った、当時の大家。
 桜木達大(さくらぎ・たつひろ)
  :猫回し。システム運用管理者、かつ対怪異専門の交渉人。
  :今のところ自分の恋愛については失敗続き……?
 豊川八尋(とよかわ・やひろ)
  :桜木達大の姉。豊川火狐の母。仕事の関係上、海外にて生活。

本文
----

『もしかして相羽さんって、相当おいしい相手だったかもね真帆サン』
「…………は?」

 一月二日、相羽さんが出かけてからすぐの電話。
 電話の声の主は、六華である。
 入籍したと知らせた時には、『何でまたそんな莫迦やったの真帆サン!』と
一撃でやっつけてくれたお方である。
 つまり、まかり間違っても、六華の口から相羽さんを誉めるだの肯定するだ
のという言葉が出てくるわけもなく……しかして実際それに類する言葉が出て
きているということは。

「……桜木さんとなんかあったの?」

            

 大晦日から元日にかけて、六華はうちに泊まっていった。
 丁度相羽さんが居なかったから、一緒に呑もう、みたいなことになって……
まあ、一緒に年を越したのだけど。
「で……どうすんの、六華、今から」
「帰って、初詣行ってくる」
「……元気だなあ」
「ってか、相羽さん帰ってくるの待ってるのいやだものっ!」
 ……それを大威張りで言いますかね。
「でも、初詣って……一人で?」
「ううん。ゆっきーさんと美絵子さんと……達大さんと」
「…………へえ」
 
 最後の一人の名前を言う前の、一瞬の逡巡。
 六華が桜木さんところを飛び出して、もう半年近くなる。
 ……やっぱり微妙なのかな、この二人。にしては、クリスマスを一緒に過ご
してたって情報は、美絵子さんから聞いたんだけど。

「時間大丈夫?」
「うん、お昼くらいって言ってるから」
 まだ9時前だ。
「まだ相羽さん帰ってこないと思うし……もう少しゆっくりしてったら?」
「あ、ううん」
 少し慌てたように、六華はぶんぶんと手を振った。
「本宮さんのお二人に御挨拶したいし、着替えるし」
「へ?」
「……本宮さんのお母さんが、着物貸して下さるって」
「ああ、あんた着るの得意だしね」

 なーんだ。ちゃんと桜木さんに会う積りで、なのか。
 それならそれで良かった。

「そんじゃ行ってらっしゃい」
「行ってきます」

 ばいばい、と手を振って……出てゆくところまでは、知っているのだけど。

            **

 ゆっきーさんと美絵子さんと、六華と。
 待ち合わせまではごく普通だったという。そしてそこに火狐ちゃんと桜木さ
んがやってくるのも、まあ普通。
 なんだけど。

「ふーん。あなたが達大の──」
 一緒に来た女性に、ずいっと近寄られて。
 そしてしげしげと見られたという。
「姉さん、ちょっと──」
 わたわた、と、止める達大さんの手を完全に無視して。
「可愛いーっ」

         ………

『信じられる?初めて会った人に、普通抱きつく?』
「……まあ、普通はしないよね」
 ってか、六華だと、その前に『あなたが達大の』って言われた時点で、相当
かっちーんときてそうなんだけどな。
「で……抱きつかれたの?」
『あたしそこまで間抜けじゃないの』
 ……だろーなあ。

         ………

 ぱん、と、伸びた手を払って、六華が逃げたのが……どうも美絵子さんの後
ろらしく。
 
「やーん、ガード固いっ」
 どう言われようとも、美絵子さんは六華に手を出させることはなく。
 でも……それでもきゃらきゃら笑うその人に、相当六華は腹を立てたような
のだけど。

「えっとねー。達大のこと、好き? 愛してる?」

 ……そりゃあ、そう聞かれれば六華も怒るだろう。

「八尋さん、いきなりつっこみすぎです」
 ぴしり、と、止めた美絵子さんをすり抜けるように。
「はて、何故それをお聞きになりますか?」
 それでもほんのりと美絵子さんに笑って、六華は問い掛ける相手に向き直っ
たそうである。

「だって気になるでしょー? 可愛い弟が好きなひとのことだもーん」
 
         ………

『つまりそれって、弟さんを自分の所有物と思うから言えるせりふよねっ』
 流石にまあ、それは多少割り引いたんだけど。
「そういう返し方、あんたしたのね?」
『したわよっ!』
 ……あたまいたい(づきづき)。
   
         ………

「それにどう応えるかは六華さん次第ですし」
 きっちり言い切った美絵子さんの後ろで、六華は笑って言ったのだと言う。

「弟さんは、お姉様の持ち物でしょうか」
「ねっ、姉さん。そういうことは、ボクと六華さんの問題なんで、あのっ」
 何とか間を取り持とうとしたらしい桜木さんの努力を双方思いっきり蹴飛ば
して。
「もしそうであれば、私も答える義務がございますが、そうでなければ何のこ
とやら」
「そんなの関係ないよ? わたしが気になるから聞いてるんだもん」
「ああそれでは、答える義務も意思も、私にはございません」

「そこは達大さんの頑張りに期待しましょう」
 やはり後ろに六華を庇ったまま……美絵子さんが笑って言った言葉に、相手
は肩をすくめて。
「ふーん。じゃー、しょうがないねー」
「いずれはっきりすれば達大さんから正式に紹介していただけるでしょうし」
 ……それ、つまりがとこ、美絵子さん的には『桜木さんしゃんとしなさいね』
って意味じゃないか、とか思うのだが。
「そういうことです。きちんと時期が来たら、ちゃんと姉さんにも報告します
から」
 桜木さんも、何とかそう言って宥めて。まあとりあえずは収まったかなーと
思った途端。
 相手はにっこり笑ったらしい。
「惜しいなー。可愛い子だから、義妹になったらいいなーって思ったのに」

         ………

『絶対、いやっ』
「……何かそういう問題かなあ」
 桜木さんの家を飛び出して、早半年。義妹になるのどーのと言う前に、かな
りの難関があるように思うんだが(双方ともに)。
「そんであんた、どうしたの」
『そのまんま美絵子さんと火狐ちゃんとお参りして来た』
 ……えーと。
「ってことは、ゆっきーさんと桜木さんは?」
『怪獣捕まえる為に残ってたわよ』
「…………怪獣ってね、あんた」
『でなけりゃ普通やらないと思うわ』
 それはそれは、冷たい声で。
『あわせろーって、公道で大声でわめきちらすなんて真似』

 ……こー。
 桜木さんのお姉さんなんだから、まあ、桜木さんが止めるのはともかく。
 まーたゆっきーさんがとばっちり食らったな。

「って……あれ、桜木さんのお姉さんってことは、火狐ちゃんのお母さんじゃ
ないの?」
『うん。顔とか似てた』
「いやそうだろけど……火狐ちゃんはお母さんと別行動?」
 電話の向こうで、六華が一瞬沈黙した。
『……それは、火狐ちゃんに悪いことしたなって、思ってるの』
 実際、六華は火狐ちゃんを可愛がっているし、火狐ちゃんも六華になついて
いる。そう考えると確かに不本意な結果ではあったんだろうけど。
『でもねえ!我慢とかできる相手じゃなかったんだから!』
「……それはそれは」

 受話器を持ち返る。
 六華の話(愚痴?)は、まだ続きそうである。


時系列
------
 2006年1月1日〜2日

解説
----
 八尋さん事件(え?)、もしくは達大さん受難の始まり。
 見事に激突しております。

*****************************************
 てなもんです。
 さてまだ波紋は広がるのです。
 であであ。
 


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