[KATARIBE 29636] [HA06N]小説『お父さんと呼ばれる』

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Date: Fri, 30 Dec 2005 22:02:25 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29636] [HA06N]小説『お父さんと呼ばれる』
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ふきらです。
日常のほんの一コマ。

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小説『お父さんと呼ばれる』
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登場人物
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 一白(いっぱく):http://kataribe.com/HA/06/C/0583/
  津久見神羅の式神。

 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

本編
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 年末のスーパーはおせち料理の材料を買う客で普段より賑やかだった。
 神羅もその例に漏れず、一白を連れて買い物にやってきている。
「あんまり走り回るなよ」
 とりあえず一白にそう注意したものの、どうもちゃんと聞いていないようで
ある。正月飾りなど、いつもは店に並ばない物がたくさん並んでいて、あちこ
ちキョロキョロしていた。
「……一白」
 神羅に頭を軽く叩かれて、むーと言いながら一白は彼の方を見た。
「さっき言ったこと聞いてたか?」
「え、なに?」
 全く耳に入っていなかったらしい。
「あんまり走り回るなよ」
「はーい」
 元気な返事をしているが、どう見てもうずうずとしている。その様子を見て
神羅は溜め息をついた。

 幸いというか何というか、店の中は走り回れる余裕はなく、一白は大人しく
神羅の横を歩いていた。
 ソーセージやハムが売られているコーナーに差し掛かったとき、その前で試
食を勧めていたおばさんが一白に爪楊枝に刺さったハムを一切れ差し出した。
「はい、どうぞ。おいしいよ」
「わあ」
 それを受け取る一白。
「ほら、ありがとうって言わないと」
「おばちゃん、ありがとう」
「いーえ。……お父さんもどうです?」
 そう言って神羅の目の前に差し出されるハム。お父さん、という言葉に少々
口元が引きつっていたが、とりあえず受け取った。
「お父さんと買い物かあ。いいねえ」
 おばさんが一白に言った。
「うんっ」
 一白が元気よく頷く。
 その場を離れ、しばらくしてから神羅は溜め息をついて肩を落とした。
「お父さん、って……」
 その呟きに一白は不思議そうな表情を浮かべた。
「神羅は一白のお父さんじゃないの?」
「いや……、お父さんといえばお父さんなんやけどな……」
 生みの親、という意味では一白を作った神羅は彼の父親といえるだろう。し
かし、先ほどの「お父さん」とは微妙に認識が違う。
 世間一般では「お父さん」とは外見的にその子と年が離れている男性という
ことで、ということは、神羅が一白の父親だと間違えられたということは、彼
が子供がいるほど年を取っていると見られたわけで。
「……そんなに老けてみえるのか」
 どんよりとした表情を浮かべている神羅を一白はその理由を知る由もなく、
にこにこと見つめていた。


時系列と舞台
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2005年年の瀬。

解説
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まだまだ若いつもりでいた今日この頃。

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