[KATARIBE 29628] [HA06N] 小説『昔も似たような』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Thu, 29 Dec 2005 00:43:49 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29628] [HA06N] 小説『昔も似たような』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200512281543.AAA17741@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 29628

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29600/29628.html

2005年12月29日:00時43分48秒
Sub:[HA06N]小説『昔も似たような』:
From:久志


 久志です。
 ちょっぴりマメシバンネタで一つ。
こう、古株の人にはとーーーーっても懐かしいネタが出てきます。
主にいーさんとか葵さんとかに。

ちなみに参考エピソードはこの二つです。

エピソード437『遭遇、スカロマニア!』
http://kataribe.com/HA/06/P/4/HAP06437.HTM
エピソード『究極戦士サイキョーダー』 
http://kataribe.com/HA/06/P/4/HAP06471.HTM

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『昔も似たような』
======================

登場キャラクター 
---------------- 
 本宮和久(もとみや・かずひさ)
     :吹利県生活安全課巡査。生真面目さん。あだ名は豆柴。
 富良名裕也(ふらな・ゆうや)
     :お気楽のーてんきな大学職員。見た目は中学生。
 佐古田真一(さこた・しんいち)
     :ギターとサボテンを愛する金髪美形無口無愛想青年。

本文
----

「あとらくしょん?」
 コタツの前、みかんの皮をむきながらフラナがちいさく首を傾げた。
「うん、県警の広報活動の一環でね」
 コタツの上に置かれた湯呑みを手にとり、ひと口飲んで頷く和久。
 現在、フラナと佐古田が二人暮しをしている、サトミマンション302号室。
相場にしては安い家賃にもかかわらず、かなり広く作りのいい部屋で。居間の
中央に置かれたコタツ、当然カゴ入りミカンとおせんべい付き。
 和久の向かいに座ったフラナの右隣、猫?のような毛玉を膝にのせた佐古田
がお菓子をつまんでいる。時折、膝の上の猫?のような毛玉から細い触手?の
ようなものが伸びてこたつの上のせんべいを巻き取ってさらっていく。正直、
正体がすごく気になるが、和久はあまり深く考えないことにした。細かい怪異
をいちいち気にしていたら神経が持たないことは、フラナと佐古田が以前住ん
でいた風見アパートで既に経験済みだった。

「でも、面白そうだね。見に行ってもいい?」
 能天気に笑うフラナとこくこくと無表情にうなずく佐古田。
「まあ、いいけど……」
 指先で頬をかきながら歯切れ悪そうに和久がつぶやく。正直なところ一昔前
の戦隊モノちっくな扮装を見られるのは正直恥ずかしい。とはいえ長年の付き
合いである二人に対していまさら恥ずかしいもないのだが。
「えへへ、楽しみ」
 にぱっと笑うフラナと微かに口元を緩めて笑う佐古田。思わず頬を掻く和久。

 宇宙刑事マメシバン。
 もとはというと、吹利県警の広報課が交通安全・防犯指導・市民交流を目的
として企画されたイベントである。ひと昔前の戦隊モノ風なノリに、交通指導
や防犯の呼びかけを織り交ぜて幼稚園や小学校などでショーをするというかな
り趣味丸出しの企画だったのだが。どういうわけかプロジェクト仕掛け人が大
いにやる気と行動力を発揮し、いつの間にか集まった有志で手製の衣装や小物
を作成、キャストに県警で人間戦車の異名を持つ和久の兄・本宮史久や、敵の
ボス役にヤク避け相羽の異名をとる相羽尚吾という豪華な役者を揃え、本命の
主役マメシバン役として、どういうわけか和久が抜擢されたのだった。

「なんかみんなノリノリというか、すごいだよね」
「へぇ」
 火付け役の広報担当をはじめとして、衣装担当の有志や、シナリオ案の会議
や設定資料作成などの打ち合わせではある種異様な程の熱気とやる気に満ち溢
れていて、時に唾の飛び交う熱い語り合いになることもしばしばだった。
「でもさ、ちょっと趣味っぽくても、そーやってみんなで頑張ってるのってい
いなあって思うよ」
「うん、それはそう思う。でもなんかマニアックというか、たまに暴走すると
いうか」
 腕組みして首をひねる和久を見て、ふいにくすくすとフラナが忍び笑いする。
「ん?」
「でもさあ、もとみーだってなんだかんだ言ってノリノリなんでしょ?」
「……う」
 和久が言葉に詰まる、にーっと笑うフラナの問いに言い返せない。
「まあ、うん……そうかも」
「ふふっ」
 確かに和久自身、恥ずかしい恥ずかしいと言いながらもいざ撮影が始まると
なると、思い出すと赤面もののノリでマメシバンを演じていたりする。

「でもさ、もとみーって昔もその手のイベントやってたよね?」
「え?」
「ほら、昔。高校生の頃」
「……高校?」
 ふと考え込む和久。高校の頃……といっても軽く8年程前のこと、そんなイ
ベントをやっていただろうか、と思わず首をひねった。
「ほら、昔、ベーカリー楠の常連さんだった炎野さんのヒーローショーの応援
に行って」
「ベーカリー楠、ああ……ってまた古い話を」
「そこでさあ、怪人役の人が急病で倒れて出られなくなっちゃって、もとみー
が代理で怪人役やったじゃん」
「あーあーあー、あれかあ」
 まだ和久、フラナ、佐古田ら三人組が高校生だった頃。
 商店街にあったパン屋ベーカリー楠で下校時や休日にしょっちゅう立ち寄っ
てはとりとめもなくしゃべったり、他の常連らと顔をあわせたりしていた。
 その常連の中の一人、遊園地でヒーローショーをやっていると言っていた人
がいた。おおらかで豪快で何より子供たちのことを考えていて。誘われてヒー
ローショーを見に行った時、怪人役が急病で倒れた時も子供たちの為にどうし
てもと頼まれて代理の怪人役を引き受けたのだった。あの頃も恥ずかしいと思
いながらもいざショーが始まるとその気になっていたのを和久は懐かしく思い
出した。もっとも慣れない怪人の気ぐるみで最後に転倒して失神したりもした
のだが。

 昔を思い出していた和久がふと我に帰ると、くすくすと笑うフラナと無言の
ままの佐古田が微かに口元をほころばせて和久の顔を見ている。
「何がおかしいんだよ」
「だあってさ、もとみー昔から変わってないなあって」
 隣でこくこくと佐古田が首を縦に振る。
「あの時も最初は嫌がってたけど、ショーを楽しみにしてる子供達の為にって
やる気になったんだよね?」
「……うん」
 高校生の頃、いつもフラナと佐古田と三人でいて。
 あの時の自分と今の自分は変わっているようでそんなに変わっていないのか
もしれないのかな、と。和久はふと思った。
「でも、もとみーのそーいう真剣なとこがやっぱり子供に好かれる所なんじゃ
ないかな?」
「そう、かなあ」
「うん、今度ショーやるときは絶対呼んでよねっ」
「ああ、うん……やっぱりちょっと恥ずかしいけど」
 和久は手の中に持ったままの湯呑みを飲み干して、どことなくくすぐったい
ような笑顔を浮かべた。

時系列 
------ 
 2005年12月初旬。
解説 
---- 
 マメシバンをやることになって、過去の思い出を振り返る。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
以上。 

 わーい三人組が高校生の頃、ログみると1997年4月でしたことよ。古っ……



 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29600/29628.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage