[KATARIBE 29613] [HA06N] 小説『クリスマス・プレゼント』

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Date: Fri, 23 Dec 2005 23:27:23 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29613] [HA06N] 小説『クリスマス・プレゼント』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年12月23日:23時27分23秒
Sub:[HA06N]小説『クリスマス・プレゼント』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
色々切羽詰ってます、ええ。
というわけで……クリスマスネタ。

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小説『クリスマス・プレゼント』
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登場人物
--------
 相羽尚吾(あいば・しょうご) 
     :吹利県警刑事課巡査。ヘンな先輩。
 相羽真帆(あいば・まほ) 
     :自称小市民。多少毒舌。10月に入籍。

本文
----

 クリスマスに新年。
 皆まとめて、駆け足でやってくる。


 絶対一年って、以前はもっと長かったと思う。
 もっと長くて、色んなことが出来てたように思う。
 ……つまり。何でこう日が経つのは早いんだろうってことなんだけど。
 カレンダーを見て、もう一度日数を数えなおして。
 今のうち聞いておかないと、もうあんまり時間がない。
「……相羽さん、クリスマスって何か欲しいものある?」
 お茶を片手に新聞を読んでいた相羽さんが顔を上げる。
「……欲しいもの、ねえ」
 ふむ、と、真面目な顔で考え込む、その前に。
「和菓子のケーキ、とかは無しね」
 先手必勝。
 和菓子はでも、誕生日に貰ったからねえ、と、相羽さんはぶつぶつ口の中で
呟いていたが。

 はた、と、その声が途絶えた。途端ににやにや、と、笑い出して。
「…………?」
 いあその。
 一応、夫な人が……たとえにやにやであろうと笑ってる時に、思わず引くっ
てのは何だろうなあと思うんだが。
 でも引くのも事実なんだよなあ。
「何でもいいの?」
「……う、うん」
 いや、今更何は駄目かには駄目って言っても……何か絶対その間をすり抜け
てきそうだし。
「ほう」
 同時に、にーっと笑う。
「…………何ですかっ」
「いや、変なもんじゃないよ」
 伸びた手が、つん、と、額をつついてくる。
「…………?」
 いや、その、変なものじゃないかもしれないけど……何か絶対企んでるし。
 とか思ってたら、相羽さんはぐっと身を乗り出した。
「じゃあ、こうしよう」
「……はい?」
 何か……あたしは間違えたかもしれない、とは思った。やっぱり何かこう、
これは駄目とか線引きすべきかなとか。
 ただ……悪戯っ子がそのまんま大きくなったような顔して笑ってる相羽さん
見てると、その線引きが何だかわからないんである。
 絶対、こちらの意表をついたところに来る。
 ……と、思ってたら。
「プレゼントのかわりに」
「…………はあ」
「お前さんからキスしてくれる?」

 見事に意表を突かれた。
 …………そんなこと当ててもちっとも有難くないんだけど。

 思考停止状態の目の前で、相羽さんはくくく、と、笑っている。
 ……えーい、真っ白になっててもどもならんっ。

「…………えっと……」
 今更、駄目、とも言えない。この場合どうしたら。
 ……と、考えていた、時に。
「あ」
「何?」
「……いい、けど」
 ほう、と、相羽さんが少し目を開く。それがしてやったりになる前に。
「でも条件っ」
「なに?」
「24日の日に、相羽さんが有給取れて……ちゃんと翌日の朝まで休みだった
ら」
 ぐ、と、相羽さんが言葉に詰ったのが判る。
「……それができたら……いいよ」
「……努力する」
 いや、努力するって……その。

 というか、咄嗟に言ってしまったんだけど、実際相羽さんは本当に忙しいか
ら。
 忙しくて忙しくて……心配になるばかりだから。
 別にクリスマスじゃなくてもいい。でも今日は休むって決めた日に、最後ま
で休めない忙しさって……やっぱり見てて心配になるのだ。

「……だって相羽さん、誕生日の時も途中で居なくなったし」
 仕事だから仕方ない。それは事実。でも。
「ずっと……忙しそうだし」
「…………それは、うん、まあ」
 困ったように言葉を濁して。
「まあ、最初に言い出したのは俺だし」
 やっぱり言葉を選ぶように何度も止めながら。
「努力するから」
 いや……そうじゃなくて。

「…………あのね」
「ん?」
「あの、そうじゃなくて」
 休んで欲しいってのまでお節介なのかもしれない。心配無用って言われるの
かもしれない。
 でも。
「……ゆっくりして、欲しい、から」

 そら、プレゼントの代わりに……って言われると確かに困るんだけど、実際
の価値なんかなんぼのものって思う。だけどそれで相羽さんが休む気になって、
そして本当に休めるなら。

「条件つけないと、休み取らないし」
 でもそれもお節介かなあ、こちらの勝手な言い分かな、それに余計に忙しく
なったりしないかな……と考えていたら、何だか段々自分でも訳がわからなく
なってきて。
「…………一日寝てていいから……休んでて欲しいな…って」
「……わかった」
 ぽん、と、相羽さんの手が、頭を撫でるように叩いた。
「のんびりしよか」
「……うん」

 うん。
 クリスマスだからって、別に休む必要はないと思う。休むダシに使うとした
ら、何だかそれも変だなとも思う。
 でも、それでも。
 やっぱりこの人には、一日のんびりして欲しい。
 ……何を口実にしたとしても。

時系列
------
 2005年12月初め。
解説
----
 クリスマスプレゼントにも色々あるわけですが。
 ……あえてそういうモノを欲しがるかよってな先輩と、おたおたしつつ結構
しっかりやり返している真帆の会話です。
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 てなもんで。
 ではでは。
 


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