[KATARIBE 29612] [HA06N]小説『神社でクリスマス、に向けて』

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Date: Fri, 23 Dec 2005 17:17:03 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29612] [HA06N]小説『神社でクリスマス、に向けて』
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ふきらです。
くりすます話、第二弾。
……ちょっと長めですかね?

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小説『神社でクリスマス、にむけて』
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登場人物
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 一白(いっぱく):http://kataribe.com/HA/06/C/0583/
  津久見神羅の式神。

 はね:らいとふぇざー級のチャンプを目指しているらしい

 フィルオナ:http://kataribe.com/HA/06/C/0504/
  神羅をマスターとする意思を持つ人形。

 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。


神社の境内にて
--------------
「……クリスマスの準備って何すれば良いんだろう?」
 一白は本宮の階段に座って頬杖をついていた。猛芳からもクリスマスに何か
しても良いという許可はあっさりともらうことができた。しかし、いざ準備を
する段階になって、何をすればいいのか途方に暮れていた。
「ヘイ、ボーイ! クリスマスは聖戦だぜ」
 いきなり目の前に、いつぞやの羽が現れて目を丸くする一白。
「せいせん?」
「白いマット、吼える観客、スポットライトをあびながらリングへあがるちゃ
んぷ!」
 はねがいっきにまくし立てる。
「そこの変な奴! うそを教えないのです!」
 横から声がして、そちらの方を見るとフィルオナが怒ったような顔をして、
はねを指さしていた。
「うぉう」
 横やりが入って、たじろぐ。
「聖なる夜に捧げる戦いのどこが嘘だというんだいガール!」
「お黙りなさいなのです!」
 フィルは指さしていた手をグーに握ると、はねに向けてロケットパンチを
放った。
 飛び出した右手は狙い違わずはねに当たり、はねは体勢を崩してよろめく。
その様子を一白はポカンと口を開けて見ていた。
「ごふぅ……嬢ちゃんいいパンチだぜ」
 再び、一白の目の高さまで浮かび上がるはね。
「まったく。とりあえずツリーの用意ですかねぇ」
 フィルはロケットパンチで放った右手のワイヤを巻き取りながら、一白に微
笑んだ。
「スポットライトはどこだい、べいべー」
 しかし、はねは先ほどのパンチにも懲りずにくるくると回りながら叫ぶ。
「れっつライトアッ……」
「やかましいのですー!」
 巻き取りを完了したフィルははねに向かって一気に間合いを詰めると、どこ
からともなく取り出したピコピコハンマーを一閃する。
「ほあっ」
 ペコン、という情けない音が響き、はねはなぎ払われてへれへれと羽ばた
く。
「……ちゃんぷって弱いの?」
 その様子を見ていた一白が呟いた。
「ごふっ」
 その一言にダメージを受けたはねは、しおしおとへなったが、すぐに勢いよ
く一白の周りを羽ばたいた。
「俺はライトフェザーなんだ! 軽さとフットワークが売りなんだぜ!!」
「えいっ」
 そう言っているはねに狙いを定めて、一白は勢いよく右手を伸ばした。
 ぱしっ、とはねはいともたやすく一白の右手に捕らえられる。
「んー…… まあいいや」
 捕まえたものの、どうしようか迷った一白ははねを自分の背中にくっつけ
た。
「ところで、クリスマスツリーって何?」
 クリスマスツリーという言葉は知っていたが、どうやらそれが何なのかは分
かっていなかったらしい。一白はフィルに尋ねた。
「クリスマスの時にもみの木に飾り付けをしたものの事なのです」
「つまりっ」
 はねが一白の背中で思い切り羽ばたく。
「ツリーとはっ」
 しかし、せいぜいいっぱくのかかとがすこし浮き上がるくらいで、相変わら
ず体を浮かせることはできていない。
「聖なる夜を彩るかがり火なのさっ!」
「……ここにマッチがあります」
 フィルがやけににっこりと微笑む。
「聖なるいぇすきりすとの誕生を祝う聖なる祭りなのさっ」
 何をされるのか察したはねが慌てて言った。
「よくできました」
 その言葉にフィルはマッチを仕舞う。
「いぇすきりすとは死んでもふっかつするヒゲのナイスガイだ」
 相変わらずどこか間違っていることを言うはね。
「でも、もみの木って…… ないね」
 一白が辺りを見回しながら言った。
「ヘイ!もみの木ならこっから飛んだ先の森にたくさん生えてるぜ」
 一白の背中ではねは一つ羽ばたいた。
「ちょっとひとっとんでみるぜ!」
 そして、勢いよく羽ばたきだす。やがてゆっくりとではあるが、一白の体が
宙に浮かぶ。
「わわわ」
 一白が体勢を崩して慌てる。
「行くぜボーイ!もみの木をむしりに!」
「おー」
「それは、かなり難しいと思うのです」
 フィルの言葉が聞こえていないのか、はねはその身を大きく広げると更に勢
いよく羽ばたいていく。
「えいどりあーーーん!!」
 威勢の良いかけ声とは裏腹に、その進みは亀のように遅く、5メートルも進
んだところで、一白の足が地面についた。
「ぜーぜーぜー」
 はねが息を荒げる。
「……もう終わり?」
 一白が首をかしげる。
「……遠く険しい道のりだぜ」
「うわ、情け無いのです」
 一白の側にやってきたフィルが言った。
「ちゃんぷの道は遠く長い道のりだぜ、ボーイ……」
 その背中で真っ白に燃え尽きたようにしおれている。
「とりあえず、マスターに相談しましょう。まずはそれからなのです」
 フィルの提案に一白は頷いた。

神羅の部屋
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「……というわけなのです、マスター」
 神羅の部屋でフィルは神羅に向かってそれまでのいきさつを話した。
「ろーすとチキン、ツリー、聖ニコラス。用意するものはたくさんあるぜ」
 一白の背中で喋るはねを見て、神羅は怪訝そうな表情を浮かべる。
「……はね?」
「お気になさらずマスター、とりあえず害は無いようなのです」
「ふ、俺はさすらいのはね、ちゃんぷを目指す漢だ」
 フィルの言葉に特にその存在を疑うこともせず、元の表情に戻る。
「うーん、クリスマスツリーねぇ……」
 そう言って腕組みをする。
「もみの木ってどこに行けばもらえるの?」
 一白が尋ねた。
「こっから飛んだ先の森にたくさん生えてたぜ」
 はねが一白の背中でぱたぱたと羽ばたきながら答える。
「がーっといってばっと刈ってくれば万事オーケーだ」
「簡単に言うねえ」
 はねの言葉に神羅は苦笑した。
「夜中にこっそりフォーメーションをくんでやればいい」
 そう言って、羽根先をぐっと上に向ける。
「どんなフォーメーションなんだか」
「でかい木もちっさい木も山ほど生え放題だ、こっそり伐って帰ってもばれな
いぜ」
「でもなあ、クリスマスにしか使わへんのやろ? そのためだけに伐ってく
るってのはちょっとなあ……」
「この一瞬のために生きる。かー燃えるねぇ」
 神羅の言葉など無視して、勝手に盛り上がるはね。
「……まあ、小さいやつを根ごと持ってくるんだったらできなくはないかな
あ」
 頭の上で手を組んで神羅は言った。
「おう! それにツリーなら商店街のあちこちにあったぜ。夜のうちにフォー
メーションをくんでひとつくらい」
 ああ、それなら、とフィルが言う。
「たしか、偽物のもみの木が有ったような気がするのです」
「偽物?」
 一白が首をかしげる。
「本物の木じゃないやつなのです」
「ぷらすちっくの温かみの無い奴な」
 はねの言葉にフィルはう、と眉をひそめる。
「いっそあれだ。つくっちまおうぜ」
「まあ、もみの木じゃなくてもええんやったら、そこらへんに生えてるけどな
あ」
「モミノキモドキ、とか」
 はねに向かって、そんなのはない、と神羅は手を振った。
「うーん」
 フィルは腕を組んで首をかしげる。
「というかだ。商店街の花屋でもみの木売ってたぜ」
 はねがぼそりと呟いた。
「……それやな。なんて名前やったっけ、あの花屋」
「場所なら知ってるが、名前は知らん」
「駅前にあるお花屋さんですか?」
 フィルに向かって、そう、と頷く。
「ひとっとびだぜ」
 はねが誇らしげに言う。
「でも、飛べないんじゃなかったの?」
 一白の質問に、はねはちっちっ、とその羽根先を振った。
「この身ひとつならどこへだって飛べるぜ!」
 どうやら、もみの木を持って帰るということがすっかり抜けているらしい。
「というか、羽根に売ってくれんの?」
「基本的はね権を無視する奴がいるのか」
 はねがショックを受けている。
「こいつに行かせるくらいなら私が行くのです、マスター」
 ずい、と一歩前に出てフィルが言った。
「じゃあ、僕も行くー」
 一白が元気よく手を挙げる。
「ああ、基本的はね権が蹂躙される……」
「一緒に行こうよ」
 落ち込んでいるはねに一白が言った。
「おう」と返事をした羽根を見て、フィルは小さい声で不満を漏らした。それ
が聞こえた神羅が苦笑する。
「まあ、そう言わんと。こいつらだけやったら心配やし、頼むわ」
「分かりました……」
 フィルはしぶしぶとした表情で頷く。
「いざゆかん! もみの木狩りへ!」
 はねが威勢良く声を上げ、羽ばたく。
「え、狩りなの?……って、あわわ」
 バランスを崩して慌てる一白。
「狩らない、狩らない……」
 フィルが小さく手を横に振った。
「それではマスター、行ってまいりますです」
 一礼をして、後ろに向いたフィルに神羅が声をかけた。
「……お金持ってんの?」
 あう、と動きを止め、再び神羅の方を向く。
「……持ってないです」
 神羅は鞄から財布を取り出して、中身を確認する。
「でも、もみの木ってなんぼくらいすんねやろ?……まあ、一万あったら大丈
夫か」
 そう言って、一万円札をフィルオナに手渡す。
「リッチなナイスガイだぜ!」
 はねが感心したように大げさに叫んだ。それに対して、神羅は苦笑する。
「財布に万札が一枚しかなかったんやって」
「で、では、行って参ります」
 緊張した面持ちでお金を受け取るフィル。
「うい。気ぃつけてな」
「ゆくぜ! ボーイ! 街が俺たちを待っている!!」
「うん。しゅっぱーつ」
「あんまりはしゃがないようにね……」
 勢いよく部屋を出て行く一白を見て、フィルは溜め息をついて、その後を
追っていった。

時系列と舞台
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小説『神社でクリスマスの是非』の続き。

解説
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というわけで、買い物に向かう一同でありました。

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