[KATARIBE 29610] [HA06N]小説『神社でクリスマスの是非』

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Date: Thu, 22 Dec 2005 02:19:49 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29610] [HA06N]小説『神社でクリスマスの是非』
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ふきらです。
クリスマス関係第一弾。……クリスマスまでに完結するかどうかは分かりま
せんが(汗

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小説『神社でクリスマスの是非』
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登場人物
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 一白(いっぱく):http://kataribe.com/HA/06/C/0583/
  津久見神羅の式神。

 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

本編
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「クリスマスツリーが欲しい?」
 眉をひそめた神羅に向かって一白は大きく頷いた。
 神羅の部屋のストーブの上にあるヤカンがシュンシュンと音を立てている。
その前に一白が立ち、神羅はパソコンデスクの椅子を半回転させて一白と向か
い合っている。
 外は強い風が吹いているようで、窓がガタガタと揺れていた。
「まあ、ワシはどっちでもええと思うけどねえ」
「ほんと?」
「でも、うちは神社やからねぇ」
 苦笑とともに言った神羅の言葉に、一白は首をかしげる。
「……どうしてクリスマスと神社が関係あるの?」
 その質問に神羅は動きを止め一白の顔を覗き込んだ。そのまましばらく考え
ていたが、やがて答えにたどり着くと再び苦笑いを浮かべた。
「そういや、今までクリスマスに何かしたことって無かったか。で、クリスマ
スのことは誰に聞いた?」
「フィルお姉ちゃん」
「だろうな」
 神羅は頷く。去年まではフィルオナはおらず、クリスマスに特別に何かした
ということはなかった。そして、今年は新しい家族としてフィルオナがいる。
となると、クリスマスのことを教えるのは彼女くらいしかいない。
「ところで、クリスマスって何か分かってる?」
 一白に尋ねると、彼は腕組みをして難しい顔を浮かべた。
「じゃあ、クリスマスって何をする日?」
 質問を変えると、一白は勢いよく手を挙げた。
「はいっ。プレゼント交換をする日ー」
 その勢いの良さに三度、苦笑。
「まあ、間違ってないような間違っているような……」
 お茶を濁すような返事に一白は首をかしげる。
 神羅は立ち上がると、机に置いてあるマグカップにインスタントコーヒーをひ
とさじ入れ、ストーブの上のヤカンのお湯を注いだ。
 部屋の中にコーヒーの香りが広がっていく。神羅は一口飲もうとして、マグ
カップを口に近づけたが、あまりの熱さに飲むのを断念して、そのまま机のコー
スターの上に置いた。
「一応、本当のクリスマスってのはなキリスト教の行事なんよ」
「へ?」
 ああ、やっぱり分かってなかった、と神羅は心の中で呟く。
「まあ、プレゼントをしたりパーティーをしたりってのはあってると思うんだけ
どね。一応キリスト教の行事なわけで、うちは神社やから神道なわけよ」
「うん」
 一白はまだ理解できていないままとりあえず頷く。
「つまり、神社やお寺でキリスト教の行事をするってどうなんってこと」
「……う」
 何となく神羅の言おうとしていることが分かって、一白の目がうるみはじめる。
「いやいやいや、ちょい待て」
 慌てて神羅は一白の頭をポンポンと叩く。
「これは本当のクリスマスであって、今現在、巷ではびこっているクリスマスとは
違うっての」
「……」
 頭に手を置かれたまま一白は神羅を見上げた。
「そこら辺でクリスマスだーって喜んでる連中が全員キリスト教徒かっちゅうと、
そうやないやろ? そもそも、仏教と神道の行事すら一緒にするような民族なんや
から、クリスマスなんてのもただのお祭りに過ぎないわけよ」
 神羅は一白から手を放すと、コーヒーに手を付けた。何度か息を吹きかけて、一
口飲む。今度はそこそこ飲める温度になっていた。
「そんなわけやから、別に神社やからクリスマスを祝ってはいけないとは思ってな
いわけ」
「……じゃあ、クリスマスツリーも良いの?」
「ワシは別にええと思うけどね。一応、爺さんに聞いてみんとあかんやろうけど。
それに、やれたとしても、もさすがに電飾やら外にツリーを飾るとかは無理やで」
「うん。じゃあ、おじいに聞いてくるっ」
 トタトタと駆け足で一白は神羅の部屋から出て行く。
 戸が閉まってから神羅はふう、と溜め息をついた。
「多分、爺さんも別に駄目だとは言わんやろうし…… それにしても、まさかクリ
スマスを祝うことになるとはな」
 まあ、たまにはこんなのもありだろう、と神羅は思った。

時系列と舞台
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2005年12月。帆川神社にて。

解説
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とりあえずクリスマスを祝うことは可決された模様。

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