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Date: Wed, 21 Dec 2005 01:34:32 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29609] [HA06N] 小説『同期の桜』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200512201634.BAA21549@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 29609
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29600/29609.html
2005年12月21日:01時34分32秒
Sub:[HA06N]小説『同期の桜』:
From:久志
久志です。
公安話にちょっとだけオマケのお話です。
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小説『同期の桜』
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登場キャラクター
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本宮史久（もとみや・ふみひさ）
：吹利県警刑事部巡査。屈強なのほほんお兄さん。
：http://kataribe.com/HA/06/C/0263/
東治安（あずま・はるやす）
：吹利県警警備部巡査。史久の同期。公安の人。
再び屋上
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再び、吹利県警屋上。
日も落ちて人気もなく、空はもう夕暮れ時も過ぎて空は薄紫から濃紺へと変
わりつつある。
答えは出した。
奈々さんに、先輩に……きちんと自分の立場を伝えた。
そしてあと一人、いっておきたい相手がいる。
「東、いるんだろう」
「……ああ」
背後に感じる気配。
まるでその場に突然湧いたかのように、ふらりと現れる。
「もう、知っているかもしれないが」
「ああ、話は聞いた」
「申し訳ないが、この話は断らせてもらう」
「そうか」
感情を押し殺した抑揚の無い声の中、ほんの微かに声のトーンが下がったの
を聞き逃さなかった。
「……東」
「何だ」
「お前に一言いっておく」
「俺に？」
「自分の事を大いに棚にあ上げて言わせてもらう」
ひとつ、息を吸い込む。
「お前は同期の桜をなんだと思ってる」
「…………迷惑だったか？」
「違う」
奈々さんの言葉、先輩の言葉がよぎる。
「やり方も所属も立場も変われど、同じく学んだ仲間じゃないのか？」
「…………」
「僕だけじゃない、石垣だって他の連中だってそうだ」
「…………」
「言えない事情もわかる、お前の真剣な姿勢もわかる。でも、同期の桜の僕に
くらいは愚痴のひとつもぶつけたっていいじゃないか」
よくもまあここまで自分を棚にあげたもんだとおもう。東に向かって言って
いるつもりで、自分に向けて言っているようで。
「僕にとっては、先輩もお前も大切な仲間で友人なんだよ」
「…………」
「苦しんでるのも、追い詰められているのも僕は見たくない、僕で力になれる
ことがあるならなんだってやってやるよ」
自分一人だけで、全てを守れるつもりなのか。
それこそ、昨日までの自分にぶつけたい言葉で。
「それだけだ」
ふと、止まる空気。
静まり返った中、過ぎる時間。
「本宮」
「なんだ」
「…………すまん、ありがとう」
「礼なんかいらない、僕が勝手に思ってるだけだ」
「ああ」
顔をそらしたまま、踵を返す。
「では失礼します、東さん」
「……ああ」
そのまま振り返らずに屋上を後にした。
時系列
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2005年９月下旬。小説『僕の決断』の後。
解説
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決断を下した史兄、同期の東に対して一言。
どうやら特定の相手にのみツンになる模様。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。
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