[KATARIBE 29598] [HA06N] 小説『ポスター争奪戦……?!』

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Date: Thu, 15 Dec 2005 23:58:20 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29598] [HA06N] 小説『ポスター争奪戦……?!』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年12月15日:23時58分20秒
Sub:[HA06N]小説『ポスター争奪戦……?!』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
先日IRCでほざいた公約(??)どおり、二つ目の話です。
(そういうことだけ守らなくてもいいと思います)。

あちこちで動いている、マメシバンについて。
ログから話を起こしてみました。

***************************************
小説『ポスター争奪戦……?!』
=============================
登場人物
--------
  形埜千尋(かたの・ちひろ)
   :吹利県警総務課職員。県警内の情報の元締め
  本宮史久(もとみや・ふみひさ)
   :吹利県警刑事部巡査。屈強なのほほんお兄さん 

本文
----

「…………ちょっと困ってるんだよねえ」
 へこへこ、と、やってきた総務課元締め、こと、千尋の第一声である。

 県警の、一応昼休みの終わり頃。時間がある連中はもう少し早めに食事を取
るから、現在ここにはちらほらと人が座っているだけである。
 その、一人の横に、自販機で買った缶コーヒーごと千尋はえいやと座る。

「どうしました」
「あんたらの出てる、ほら、マメシバンのシリーズのポスター」
「ああ、あの広報の」

 穏やかそうな表情の相手が呑気に言うのに、千尋は溜息交じりに答える。

「あれさあ、うちの子供等の知り合いから、欲しい欲しいって頼まれててねえ」
「随分色々なパターンでポスターつくりましたからねえ」

 ごく呑気な史久の応えに、千尋が肩をすくめる。

「それがねえ、ピレネー司令とウルフ将軍のを是非、とか」
「僕と先輩の?」
「マメシバンとピレネー司令がいい、とか、ウルフ将軍とマメシバン、とか」
「…………」

 千尋の言葉を聞くうちに、史久の表情が段々……微妙なものに変わる。

「……理由、聞いてみたのね」
 言う千尋のほうも、流石にげんなりといった風情では、ある。
「『だってカップリング最高じゃないですかっ』だって」
「……」

 マメシバンとは、もともと子供達に交通安全や防犯を呼びかけるために、吹
利県警の有志らによって企画されたアトラクションである。『犬のお巡りさん』
にちなんで、犬の耳と尻尾を付けた『マメシバン』達が、ウルフ将軍率いる悪
の組織と戦う……という、まあ戦隊モノの王道といえば王道なのだが。

 が。

 マメシバンに本宮和久、ピレネー司令に史久、ウルフ将軍に相羽を揃えたあ
たりで広報課が暴走、結果、ビデオまで作成され、幼稚園や保育園に配布され
ているのが現状。ついでに防犯や交通安全ポスターにも彼等が使われており、
既にあちこちに貼られている。そしてどういうわけか……どうも初期の対象と
なった『子供達』以外からの反響が出てきているらしいのである。


「……そういうの、はやってるんでしょうか」
『カップリング』なる意味は、一応理解出来……故になんとも珍妙な顔になっ
た史久に、やはり溜息混じりに千尋が答える。
「はやってるとゆーか、何か強烈というか……」
「……いえ、知らないわけではないのですが」
「って、本宮君だとどこら辺読んでる?」
「……トーマの心臓くらいは」
「あー」
 あんな程度なら良いよね、と、千尋が不吉なことを言う。
 史久は無言で、弁当箱の蓋を閉める。
 
「いや、あんまりきゃあきゃあ言うから……まあ、一応さ、ピレネーとウルフ
は新婚だよ、って言ったら」
「はあ」
「『きゃー、ダブルで不倫だわっ』……だそうで」

 お茶を口に含んだところだった史久は、見事にむせた。

「うん、流石にね、この子らにポスターあげるについては、あたしもちょっと
良心が痛んでね」
「正直……勘弁してください」
 けほけほ、と、むせながら言った言葉に、まあそうだよね、と、千尋は頷く。
「……じゃ、代わりにマメシバンとピレネーあたり渡そうかな」
「…………」

 それもカップリングなんですか……とは、聞けないというか聞きたくないと
いうところか。

「……それ、和久には黙っておいてもらえますか」
 数瞬の間があった。
「黙ってるのはいいけど、どっかであんたから言ってあげたら?」
「……ええ、やんわりと言っておきます」
「まあ、やんわりとじゃないと、弟さん卒倒するか」
「可能性、ありますから」
 でもなあ、と、千尋は空になった缶コーヒーを手の中でもてあそぶ。
「結構、弟さん、マメシバンの格好で幼稚園とかに出てるよね」
「……ええ」
「その途中で女子高生あたりから『きゃー、マメシバンさん、どっちが本命で
すかっ』とか訊かれたら……」
 う、と、頭を抱えた史久に、念を押すように千尋が告げる。
「……怖いよね」

 さて一時だ、お昼終わりだ、と、千尋は缶ごと立ち上がる。
 立ち上がる気力をかき集めて、史久もお弁当箱ごと立ち上がる。

「そういえば、ウルフ将軍のほーはどうなってんのかね」
「え?」
「奥さん。嫌がってないかな」
「……案外、平気のようです」

 おや、という顔をした千尋は、しかし一瞬後にああそうか、と頷いた。

「そうだよねえ、今更あの程度」
「…………」

 さーておしごとおしごと、と、すたすた出てゆく千尋を見送って。
 史久はもう一つ、溜息をついた。


時系列
------
 2005年12月。

解説
----
 あっちこっちで、小さいお友達やら中ぐらいのお友達やらおっきなお友達に
大人気になりつつあるマメシバンの、ポスターなのですが……。

*****************************************************
 てなもんで。
 案外、千尋の子供の知り合いってあたりに……嘉穂あたりがいたりして(汗)
 ではでは。
 


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