[KATARIBE 29556] [HA06N] 小説『すべきこと』

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Date: Sat, 3 Dec 2005 02:30:33 +0900 (JST)
From: Tihiro <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29556] [HA06N] 小説『すべきこと』
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2005年12月03日:02時30分33秒
Sub:[HA06N]小説『すべきこと』:
From:Tihiro


知洋です。
久々に書くと、変なものに(汗
うーん、未熟だ。
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小説『すべきこと』
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登場人物 
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 御剣 劉斗(みつるぎ・りゅうと) 
 少し前まで暴れ者だった少年




本文
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 ――時は夜。午前2時を回った、静かなる世界。
 ――場所は室内。とある家の一室。
 部屋には円や三角などの図形、怪しげな記号や文字が並んでいる。
 暗く蝋燭の灯りしかない部屋に佇むは、一人の少年。
 今日の学校で、ある人に相談し、覚悟を決めた彼は準備を淡々と進めている。
「己が内にあるものよ……古き術に従いて、我が前に姿を現し……我と対峙せよ」
 記号や文字、図形が重なって出来た陣の中心にて彼は言葉をつむぎ出す。
「して……我の中からその存在を消せ……現れよ!我が心の闇!」
彼の紡ぐ言葉が終わるとと同時に、陣が光った、次の瞬間。辺りは闇に包まれた。
部屋にあった蝋燭は消え、別の場所に彼は居た。そして、彼に向かい合うようにし
て一つの影が現れる。輪郭で影のみだが、存在は確かである。
「俺を呼びだすたぁ、何のようだ?」
影が語り始める。それに彼は返答する。
「何のようか分かってるだろう。昔の自分は心の中にしまっておくものじゃない。だか
ら消すために、決着を付けるために呼んだんだよ。そして――」
 彼は冷静な声を出す。昔の彼にしては珍しい事だが、今の彼は抑えることがで
きるようになっている。彼の考えはまだ、昔の嫌な思い出であり、もう解決した親
の事を引きずっている昔の自分がいる限り、完全にふっきることは出来ない。それ
を思い相談したが、関口君は善悪観というものは他人との関わりで出来ていると
言っていた。その言葉を自分なりに考えると、昔の自分はある意味他人であり、
今の自分から見れば悪なだけである。そして、嫌な思いとなっていた原因は親の
記憶を消し去れない今の自分を昔の自分に押し付け、無理やり一緒に葬り去
ろうとしていたからなのかもしれない。こう考えを改めた。
 しかし――彼の心にはもう一つ、何かしこりのようなものが有る気がした。今の己
より見ての悪なのではなく、自分の本質にとって本能的に悪と告げている悪が、闇
の中に存在している気がした。
 だから、今回の危険な行動に彼は出たのだ。
「そして、過去の自分を消すだけじゃなく、自分の内に感じる、闇の正体を見つけ
だして、消すために。」
その言葉に昔の彼は微笑んだ。
「上出来だよ。じゃあ、俺の用は済んだ。そこまで気づけば俺のやろうとしていたこと
も終わりだからな。闇には負けるなよ。なんせ俺だからな。勝てるさ、つーか勝てよ」
 ここまで、覚悟が決まり、彼自身として悟っていたため、自然と呼び出した自分の
過去の影は消すことが出来た。いや、消したのではなく、今の自分の心と言葉を
感じて、やろうとしていたことを終えて消えた様だった。
 しかし、闇のことを過去の自分も言っていた。やはりいるのだ。自らの中にある、自
分以外の闇と呼べるものが。

決めた覚悟
-----------

 覚悟を一瞬で決め、彼は声を出す。
「いるんだろ。俺の中にいる俺じゃない闇。でて来いよ。そしてとっとと俺の中から出て
行け、決着を付けるぞ。」
 声に応じるように、再び自分の形をした影が現れる。しかし、先ほどの影とは違い、
明らかに敵意に満ちている。
「我に命令するとは良い度胸だ。決着を付けたいのか。丁度良い、貴様のような力
量で挑んだ者は誰一人としていなかったからな。今までの貴様ら一族にかけた呪い
によってうけた数々の苦しみ、晴らしてくれようぞ!」
 彼とは全然違う声で声をだす影の正体こそ、彼の中、正確にいえば、彼ら一族の
全員の中にこの闇は居た。
「一族ってことは、ばっちゃや、親父もこいつと会って己の中の闇を消してたのか……」
 彼は目をつぶり、二人はどうしたのだろうと考えた。どういうことを悩み、どうやって消
したのだろうそう思いをはせた。そして彼はゆっくり目を開ける。
「駄目だったな。過去を振り返ったらおしまいだ。大事なのは今。そして未来。闇なん
かに囚われていたら、未来に進めないな。」
 彼はそうつぶやき、もう一度同じ言葉を復唱する。
「何をぶつぶつといっている。」
 無視されている影は怒りをあらわにし、彼に殺気を向ける。
 ――と、ほぼ同時に彼が叫ぶ。
「未来に進むために、今の俺に必要なものは覚悟ッ!お前を消すのに必要なのは覚
悟のみ!」
 彼は叫ぶと同時に手にしたナイフで己の胸を刺す。刹那、影から鋭いうめき声。
「ここは俺の心の世界……今のお前はまだ俺から出ているものであって、分離している
訳じゃない。じゃあ俺の心を貫けば良い。現実世界で考えて、覚悟を決めるよりも…
…楽な方法じゃ無いか。」
 冷たく、そして鋭く彼が言い放つと影は少しずつ薄れていく。いや、周りが明るくなって
いる。少しずつ明るくなる光の中で闇は端へと追いやられ、影は消えつつある。
「わ、我が!こんな小僧などに敗れるだと!ばかなッ!」
 影は叫ぶが光に消えていく。その姿が、いや、形を持っていたの呪い自体が消えてい
た。影と呪いが消えると同時に、劉斗は意識を失った。


呪いを解いた成果と代償
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 気がついたのは朝。
 陣の中心で目が覚めた。冬場であるにもかかわらず、布団もなしで寝たので体が冷
え切っていた。しかし、目が覚めた彼はそれよりも重大な問題に突き当たった。
「(物が……見えない?いや、これは……)」
 そう、彼の世界からは光が消えていた。しかも、ただ光を失っただけではなかった。代
わりに線だけで物体が見える状態になっていたのである。
「これは困ったもんだ。……まぁ、何とかなるな。学校に行く準備をしないとな。」
 苦笑いしつつ彼は立ち上がり、少し危なっかしいながらも支度をする。

―――さぁ、今日も彼の変わらない一日が始まる

時系列
------
 2005年11月終わり。聡君との会話後の夜。

解説
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 一族の呪いを終わらせた劉斗でした。
 覚悟で乗り切れるのろいって……
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 分かりにくいですが、知洋の力不足です。
 できるかぎり精進したいです。ではこの辺で。



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