[KATARIBE 29550] [HA06N]小説『軍手捜索願』

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Date: Wed, 30 Nov 2005 22:57:27 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29550] [HA06N]小説『軍手捜索願』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
お題は
01:43 <Role> rg[hukiloox]HA06event: ピンポン玉が泥まみれの軍手をくれた
 ですわ☆

でした。
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小説『軍手捜索願』
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登場人物
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 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

本編
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 説明は必要だろうが、とりあえず現状を簡単に述べるとすれば。
 ピンポン玉が泥まみれの軍手をくれたのである。
 ピンポン玉がどうして物をくれるのだ、とか、なぜよりによって泥まみれの
軍手なのだ、とかいう疑問はあるが、現にそうなってしまったのだからどうし
ようもない。
 というわけで、神羅は境内の石畳の上でコンコンと跳ねているピンポン玉と
その隣に置いてある軍手を目の前にして途方に暮れていた。
「そもそも、なんでピン球と軍手という組み合わせやねん……」
 そう言って、左手の人差し指と親指でその軍手をつまんで持ち上げる。その
軍手はピンポン玉と一緒に神社の周りの林に落ちていたのである。見つけたと
きに、ざっと周りを見てみたが対となる軍手はなかった。ところどころにほつ
れがあり、かなり使い込まれているようだった。
 神羅はとりあえず、軍手を洗おうと水道のところへと向かった。その後ろを
先ほどのピンポン玉が跳ねながらついてくる。石畳の上は軽快に跳んでいた
が、砂利に入り跳ねなくなると、今度は転がってついて行く。
 手洗い場に着くと、神羅は蛇口の真下に軍手をおいて栓をひねった。水が勢
いよく軍手に当たり、水しぶきを上げる。神羅は袖まくりをして、軍手をゴシ
ゴシとこすりあわせた。
 軍手についていた泥はすぐにとれ、真っ白とはいかないまでもそれなりにき
れいになった。
 水道の水を止めて、ぞうきん絞りの要領で軍手を思い切り絞って水を切る。
そして、その軍手を、洗濯物が干してある竿にぶら下げてある洗濯ばさみに挟
んだ。
「しかし、片手だけじゃあ捨てるしかないよなあ……」
 神羅が呟いたそのとき、コツンと右足に何かがぶつかって、彼は下を向い
た。
 そこには先ほどからついてきているピンポン玉。それはある方向に向かって
2メートルほど転がると、その場で何度も跳ね始めた。
 神羅はその行動に首をかしげていたが、やがてピンポン玉が言おうとしてい
ることが何となく分かった。
「ついてこい、って言ってんのかね」
 そして、神羅がそのピンポン玉に近づくとそれに併せてピンポン玉は前に進
んでいく。
 そうしてピンポン玉に連れてこられたところは、境内の林の前。このピンポ
ン玉と軍手を見つけたときに出てきた場所である。
 林の前でひときわ大きく跳ねると、ピンポン玉は神羅の着ているシャツの左
胸ポケットにダイブした。そして、その中でくるくると回る。
「……ひょっとして、軍手の片割れを探せとか言ってる?」
 神羅の言葉にピンポン玉は上下に揺れた。
 はいはい、とため息混じりで返事をすると神羅は林の中に入っていく。
 地面には落ち葉が敷き詰められていて土が見えない。神羅はそのまま中に進
んでいって、ピンポン玉を拾ったところまでやってきた。
「とりあえず、ここから奥ってことはないやろうから……」
 そう言って近くに落ちていた木の枝を拾うと落ち葉をかき分けながら周囲を
探し始めた。
「……そういや、あの軍手に探してもらった方が楽やったな」
 とはいえ、今は干されている身。簡単に探し出せるとは限らないだろう。す
ぐにその案を却下して、地道に探索を続ける。
 落ちていた地点から2メートルほど離れたところで、かき分けた落ち葉の下
から白い物が見えた。
「おっ」
 その白い物を木の枝の先に引っかけて持ち上げる。それは同じように汚れて
いるが、確かに先ほど見つけた物と同じ軍手だった。
「これでええやろ」
 ポケットの中のピンポン玉にそう言ったが、何の反応も示さない。取り出し
てみて、地面に落としてみたが跳ねて転がって自ら動こうとはしなかった。
「片割れが見つかったら、ハイさようならってか」
 神羅は溜め息をつくと、ピンポン球を拾ってポケットにしまった。
「とりあえず、洗って一緒に並べとくか……」
 そう言って、神羅は林を後にした。

時系列と舞台
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2005年11月。帆川神社にて。

解説
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なぜピンポン球かとかは聞かないでください(汗

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