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Date: Tue, 29 Nov 2005 00:28:05 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29545] [HA06N]小説『半透明の虫』
To: kataribe-ml@trpg.net
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Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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ふきらです。
三十分一本勝負（http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min）。
お題は
01:43 <Role> rg[hukiloox]HA06event: 片隅から半透明の光る虫がこちらを
見ている ですわ☆
でした。
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小説『半透明の虫』
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登場人物
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一白（いっぱく）：http://kataribe.com/HA/06/C/0583/
津久見神羅の式神。
本編
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一白は一人で本宮の階段に座ってぼんやりと空を眺めていた。天気はあいに
くの曇りで、空に広がっている雲は冬の到来を告げているようにどんよりと重
い。
境内には彼一人しかおらず、閑散としていた。いつもは家にいるはずの猛芳
は買い物があると言ってつい先ほどから出かけている。
「つまんないの……」
一白は口をとがらせて呟いた。もっとも、呟いたところで何かが起きるわけ
もない。彼は立ち上がると、勢いをつけて階段から飛び降りた。
本宮に向かって右側には直径が２メートルくらいの小さな池がある。水面に
は赤や黄色の落ち葉が浮かんでおり、池の中央に顔を出している石の上には石
でできた亀が乗っている。その亀は石像ではなく、ちゃん生きている。７年ほ
ど前に神羅がどこかからもらってきたものである。
気温が低いせいか、亀はほとんど動かない。石とはいえやはり寒さには弱い
のだろう。しばらく亀を見ていたが気付いてくれそうな気配もない。
その場から離れようと体を反転させる。そのとき、視界の片隅に何かが光っ
たような気がして、再び体を池の方に向けた。
確か光ったのは池の中ではなくてその周辺。一白は下を見ながらゆっくりと
池の周辺を探った。
「あ」
先ほどまで一白がいたところから池を挟んでちょうど反対側の石の上に小さ
な虫が一匹止まっていた。その体を覆っている灰色の殻が日光に反射して光っ
ている。
こんな寒い日に虫がいるなんて珍しい、一白はそう思いながら、手をそっと
差し出した。
彼の指が虫に触れようとした瞬間、その虫の姿が一瞬霞む。一白は指を止め
ると、じっとその様子を見つめた。
虫はその輪郭をぼんやりさせたかと思うと、また元のようにはっきりとした
姿に戻る。それを緩やかな周期で繰り返している。
「な、何なんだろ」
一白はしばらく迷っていたが、やがて虫の目の前に手のひらを差し出した。
虫は非常にゆっくりとした足取りで、一白の手のひらに進んでいく。
その体が全部乗ったところで、一白は静かに手を持ち上げて、自分の顔の前
に持ってきた。その間も虫は相変わらず霞んでは戻りを繰り返していた。
「普通の虫じゃないよね……式神かな？」
更にじっと観察していると、虫が霞んでいるときにその内側に何か別の物が
あるのに気がついた。
それは薄くて、小さくて、丸くて。
「……百円玉だ」
一白の言葉に、虫は本来の姿である百円玉に戻ると、それっきり虫の姿には
変わらなくなった。
「あ、正体を当てちゃった」
正体を言い当てられて、その百円玉にかけられていた呪が解けてしまったの
だ。一白は申し訳なさそうな顔をして、百円玉を両手で包み込んで、ごめん
ね、と呟いた。
「でも一体誰が……って、こんなことをするのは神羅しかいないか」
彼にこのことを言おうかどうか考えながら、一白はそれをポケットにそっと
しまった。
時系列と舞台
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2005年11月。帆川神社にて。
解説
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まあ、黙っていてもせいぜい百円なので。
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